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第149話 任せられる仲間 ★カミル SIDE

 リオが浄化を初めて2日目の早朝。『人を魔物にする魔道具』は残り48個だ。最後の1個は魔導士団の研究室にあるから、ここで浄化すべきは47個だね。さすがに疲れが顔に残っているが、あとひと踏ん張りだ。


「あら。おはよう、カミル。早いわね?」


「ふふっ、そう言うリオも早いよ?」


 僕もそれなりに朝は早い方だけど、リオも早いよね。普段も早朝から王太子妃教育や、魔法の研究を自ら進んでやっているらしい。向上心がある事は、とても好ましく思うよね。リオの場合はこの世界最強である可能性が高いのに、魔法の研究……これ以上強くなってどうするつもりなんだろう?って思う事はあるけど。まぁ、そこも可愛いんだけどね。


「昨晩は、爺やとデュークで魔道具を浮かせてくれてたのでしょう?大丈夫だったのかしら?」


「あぁ、20個は『黒いモヤ』を閉じ込める箱に入れたらしいよ。残りは恐らく1000年前の魔道具で、そこまで『黒いモヤ』を撒き散らして無い個体だから、師匠の防御壁で囲って浮かせてたらしい」


 師匠とデュークは2人とも有事(ゆうじ)の時の為に鍛えているから体力もあるし、一晩ぐらい寝なくても問題は無いんだけどね。リオの近くにいる時は体力を温存して、何かあった時にすぐ動けるようにしておきたいと試行錯誤した結果がこうなったらしい。


「じゃあ、デュークも爺やも、それなりに休めたかしらね?」


「デュークは休めたと言ってたよ。さっき僕が出て来るタイミングで、着替えてたから、もうすぐ来るんじゃ無いかなぁ?」


 リオの方が大変なはずなのに、いつも周りに気を遣っているよね。恐らくこれは、リオの性分(しょうぶん)なんだろうね。


「皆が起きて来る前に始めちゃって大丈夫かしらね?」


「うーん、さすがに師匠が来てからが良いのでは?」


 何かあってからでは遅いからね。サクサクと浄化してるから気にならないんだろうけど、本来はこの魔道具も『黒いモヤ』もかなり危険な物だからね。


「あ、爺やなら…………」


「おるぞー」


 いるかなぁーとは思っていたけど、本当にいるとはね……リオは気が付いてたのに師匠を(おもんぱか)って、いつも黙ってあげてるんだよね。それって、隠密魔法で隠れる必要があるんだろうか?単純に僕やデュークを驚かせたいだけなのかもね。それとも、これも有事に備えてかな?


「おはよう、爺や」


「おはようございます、師匠」


「おはよう、リオ、カミル」


「師匠、何故隠密魔法を?」


「そりゃー、恋人同士が朝から挨拶すると言うたら、チューのひとつぐらいするかと思うて気を利かせたのじゃ」


 んなっ!そりゃ、出来るならしたいけども!いや、そうじゃなくて…………!


「そ、そんなの気を遣わないで大丈夫ですから!」


「そんな事より、爺やがいるなら早速で悪いんだけど、浄化を始めたいんだけど……?」


 わたわたしている僕をスルーしたリオが、ちゃっちゃと仕事に取り掛かろうとしている……違う意味で助かったけども。


「ホッホッホ。残念だったのぉ、カミル?リオ、ワシはいつでも始められるからのぉー」


 わぁ――――!折角リオがスルーしてくれたのだから、師匠も僕の事は放置しておいてくださいよ……


「助かるわ、爺や。今日の午前中には終わらせてしまいたいからよろしくね。カミルはソラやシルビーと一緒に、王国の皆と作戦会議をしておいてくれるかしら?予定では今日の夕方までには全て終わらせて王国へ帰る予定でいるからね」


 出来るだけ早く終わらせたい案件ではあるからね。リオの急ぐ気持ちも分かる。僕も仕事モードに切り替えなきゃ。


「あぁ、分かったよ。ライトの事はどうするんだい?」


「ライトは念話が出来るから大丈夫よ。説明を求めたい時に出て来て欲しいと伝えてあるわ」


「さすがだね。それじゃあ、後は任せたよ。無理しないでね」


「ええ、大丈夫よ。そちらをよろしくね」


 浄化はリオと師匠に任せて、僕はソラの所へ急いで向かったのだった。


 ⭐︎⭐︎⭐︎


 ソラはシルビーの寝ていたソファーでゴロゴロしていた。シルビーが甲斐甲斐しく世話を焼いているね。


「ソラ、シルビー、作戦会議を始めるよ」


 空いてる椅子に座ると、シルビーが膝の上に乗って来た。精霊は緊張とかしないのかな?とてもリラックスしていて、これからが大事なんだよね?って確認したくなるよ。


「リオの言いたい事は理解したよ~。後は、王国に居るニンゲンに伝えてくれば良いのかな~?」


 さすが精霊。恐らく、リオとの会話も聞いていたのだろう。ほぼ把握していると考えて良さそうだ。


「そうだね。王国側は父上と婆や、公爵一家だね。帝国側は皇女に予定を伝えておいてくれる?時間になったら迎えに行くからって。ジャンにはドリーを通じて連絡を取れるだろうから、その時々で指示を出して欲しい」


 ソラ達が賢いから精霊は何でも出来ると思いがちだけど、普通の精霊はのんびりしてるから、言われた事をすっかり忘れてお昼寝してたりするらしいんだよね。ドリーにはその時々で指示に従って貰った方が間違い無いだろう。


「うん、任せておいて~。ドリーには報告済みで、皇女の所には話し合いが終わったら行って来るよ~」


 既に動いていたね。やっぱりソラは優秀だね。(あと)は……伝えるべき事は聞いていたのだろうから、特に問題無いかな?


「ありがとうね、ソラ。何か質問はあるかい?」


「特に無いかな~。カミルはリオの望む結果にしたいって考えれば良いんだよね~?」


 行動の基準を言ってるんだろうね。何に向かって進むかが分かっていれば、自ずと答えは同じになるからね。


「その通りだよ。ライトの事も、魔道具と帝国の事もね」


「そっか!じゃあ、簡単だね~!」


 シルビーの場合はちょっと不安が残るね……一緒に暮らしていて分かったのは、シルビーも確かに賢いけど、自由過ぎるんだよね。結果が良ければ過程(かてい)なんてどうでも良いじゃないってタイプなんだよね……


「シルビー、全部ニンゲンに任せるんだから表立って動いちゃ駄目だからね~?オイラ達は裏で画策するんだよ~」


 シルビーの性格を理解しているソラは、面白(おもしろ)おかしく説明してるね。真面目に言っても聞いてない事があるのだろうけど……


「ソラ、言い方…………」


「なるほど~、暗躍するんだね~!」


 しっかり食いついたね……さすがはソラ。シルビーを上手くコントロール出来るんだね。でも一応(いちおう)契約者として念を押しておこうか。


「シルビー、程々(ほどほど)にね?」


「大丈夫だよ~、カミル。ボクもソラ様も、リオとカミルの為に頑張るだけなんだから~」


 精霊の中でも王族で、しっかり勉強もしていて賢い2人……2匹?だから、きっと大丈夫だとは思うけどね。バランス感覚の良いソラに任せよう……


「まぁ、僕らの考えは大体同じだと信じているからね……?ソラ、細かな采配は任せるからリオの為にも頼んだよ?」


「おっけ~、任せといて~」


「それじゃあ、各々(おのおの)動いて貰って良いかな?皇女の所から帰って来たら、僕を父上の元へ連れてって欲しいな。宰相と話しを合わせておかないとね」


「りょ〜か〜い!直ぐ戻って来るね〜」


 ポンっ!とソラが皇女の所へ向かった様だね。王国に帰ったら、流れを簡単に父上に相談すれば準備は終わりかな。あとはリオ達が帰って来て、全員揃ってからだ。やっとこれで魔道具の謎と責任の所在を明らかにする事が出来そうだね。早くリオをゆっくり休ませてあげたいな……

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