第116話 吾輩の世界 ★吾輩 SIDE
教会の地下には魔道具を持って、最後の力を振り絞ったニンゲン達が集まって来ていた。このニンゲン達は、間も無く魔物に成り下がり、自分が何者だったかすら忘れてしまうのだ。
精霊達の生命力を吸い取る魔道具は、教会の噴水近くにあるから回収は簡単だ。敷地内のバルコニーにはより強い精霊を魔道具に繋いで力を吸い取っていたが、水色の天馬が逃げ出した様だな。
精霊は元が優しく良い子ばかりだから力を吸い取ってしまえば消滅する。ニンゲンは元は良い子でも、途中から自分勝手な考えに変わるから姿も魔物に変わってしまうのだろう。
今、この教会の地下には魔物が数百万匹はいる。正しくは、次元を弄っているから『狭間の中』にいるのだが。吾輩はハイブリッドのサラブレッドらしいからな。それくらいは『朝飯前』だと言えるだろう。
ニンゲンと精霊の『生命力』は全て愛しいお方に捧げて来たが、一向に復活なさらない。何が間違っているのだろうか……吾輩には仲間がおらぬ故、こんな時にどうしたら良いのか分からないな。
さて、そろそろ『狭間の中』の魔物達を解放してあげないとな。飢えた魔物が共喰いを始める寸前ギリギリにニンゲンを襲わせるのが激しく暴れてくれるから楽しいだろう?まぁ、前回はあっさりと100万匹倒されたから、今回は150万匹ぐらい放とうかと思っているが。
王国では3回解放したが、全く被害は無かった様なのだ。精霊も居ないのに、あの国はおかしい。だから王国に手を出すのは面倒だし辞める事にした。元々王国には恨みは無いしな。逆にこちらが攻められても面倒だ。
そう言えば最近、1000年前に吾輩を封印した、あの魔力を感じるんだよな。だが、何故か嫌な気はしない。あの者であれば、どうにかしてくれるだろうか……?吾輩はこれからどうやって生きて行けば良いのだろうか。愛しいお方が復活なされば、吾輩は幸せなのだろうか?
この魔道具は吾輩には効かない。吾輩は消滅する事すら許されないのだろうか?誰か、吾輩を……許し、愛してくれはしないだろうか……あぁ、また眠くなって来たな。魔物を解放するのは明日にして、今日はゆっくり休もう……
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