星のカタスミで
あれからどのくらいの時が経ったのか。ボクは知らないうちにルドロフィの看病をしながら眠ってしまったようで、目が覚めた頃には日が登っていた。
「…朝か」
「オハヨウゴザイマス。シナロワサン」
唐突に頭の後ろから聞こえて来た声に、バッと振り返る。するとそこにはいつものように笑顔で微笑むルドロフィの姿があった。
「ルドロフィ…。良かった……。目、覚めたんだな…。体調、大丈夫か?」
「エエ。オカゲサマで。トコロで、ココはアークサンの中デスカ?」
「え?うん。そうだけど…」
「ヤハリソウデシタカ…。迷惑ばかりかけてシマッテ、申し訳ないデス…」
「いやいや!ボクだってこの間助けられたし!持ちつ持たれつだよ!」
頭を深く下げるルドロフィの身体を無理矢理起こすと、ひとまずルドロフィに現況を説明した。
「___エ?基地をこの場所に?」
「うん。ボクの星では富裕層は気分転換でコロコロ家変えてたりって言うのはあっても、庶民のボクたちは引っ越しは家ごと!って言うのがもう当然でね。じゃないと払った分損しちゃうから」
「ハァ…大胆と言うか、ナントイウカ……」
「ま、だからアークの隣に基地は建て直したよ。ついでに、ルドロフィが寝てる間に砲台とランチャーも完成させておいた。ボクも戦えるようにね」
「マタ…徹夜を…?」
「ううん!ルドロフィに言われたからね。今回はしっかり休息も食事も取ったよ。確かに、ちゃんと休んだ方が仕事が捗るね」
内心照れながらそう話すと、彼は満足そうに笑った。
それから、すっかり良くなったルドロフィを連れてボクは砲台とランチャーのお披露目会を開いた。砲台の動力はメドロ。凝縮されたメドロを消費して電光となり、光の刃が一瞬にして魔物を貫く。
「んじゃ、テストな。ここに魔物の絵貼った丸太置くから、スイッチ押してくれ」
「了解デスッ!」
ボクはある程度の大きさの丸太に精密な魔物の絵を貼り付けると、咄嗟に放って逃げ出した。間も無くして、ルドロフィがボタンを押した刹那。一瞬、緑の光が見えたかと思えば、振り返った先の丸太には焦げたような後とその砲台が放った光線によってできたのであろう、貫通した跡ができていた。
「スゴイ威力デスネ…」
「あぁ…。でも、完璧だ…!実験成功だ…!」
ボクたちは二人で手を取り合って喜び合っていると、早速側の木の影から視線を感じた。
「魔物か…?」
「コノ感じは…中々に手強いデスヨ…。飛びかかってコズ、様子を伺っているというコトハ、カナリ知性も高いデショウシ…」
「そうか…。だったら、最悪砲台にも気が付かれてるかもな…」
「ソウデスネ…。ココハ、ランチャーを使いマショウ」
そしてボクたちは二手に分かれて魔物を倒すこととなった。ボクは正面から魔物と対峙する、いわば囮役。ルドロフィは背後からそっと忍び寄り、不意打ちで魔物を仕留める仕留め役。作戦を練り終わると、早速それぞれの配置に着いた。
「…行くぞ…」
ボクは息を飲むと、勢いよく茂みから飛び出し、魔物に向けてランチャーを構える。すると、相手は突然のことに戸惑ったのか、逃げ帰るようにくるりと百八十度向きを変えて走り出した。
「マズイ…!そっちにはルドロフィが…!!」
突然走り出した魔物を追いかけるようにしてボクも慌てて走り出すと、間も無くして魔物は歩みを止め、力なく倒れ込む。何が起きたのか分からず、唖然としていると木の影からランチャーを掲げたルドロフィが得意げに顔を覗かせた。
「ワタシも中々ヤルデショウ?」
「お前…!こんにゃろう、生意気なんだよーッ!」
「ナニスルンデス、病み上がりナンデスカラもっと丁重ニ…!」
「お前なら大丈夫だよっ!ほらっ、早く戻るぞ!」
それからボクたちは基地に戻り、各々の仕事を始めた。ルドロフィが眠っている間にも少しずつ進めていたのだが、今日確信した新たな事実。それは、「メドロはアークの燃料にも使える」ということ。元々、メドロはエネルギー源だということだったので気にはなっていたのだが、まさかアークの動力にもなり得るとは驚きだ。そうとなれば、早速魔物を狩りまくってアークの動力に___
「ナニ言ってるんデスカ、ダメに決まってマス」
「え…どうして…」
「どうしてもこうしてもアリマセン!元々、メドロはコノ星の住民の命デス。ソレをムヤミヤタラに浪費するのは、ソノ命の持ち主に失礼に値シマス!」
「…そうだな。じゃあまたしばらく、よろしくな」
「エエ。ワタシに迷惑がカカル分には問題ゴザイマセンカラネ!どんなことでも、何なりとオッシャッテクダサイ」
「あぁ。ありがとう。まぁ今日は寝るよ。あと、色々ありがとな。今日の魔物の件も、飯…食わせてくれてることも」
「イエイエ!ワタシはタダ、出来るコトをしているマデデスカラ…。お気にナサラナイデクダサイ」
「うん。ありがとう、おやすみ」
「ハイ。オヤスミナサイ」
そしてボクは、アークの二階部分に位置するボクの部屋の寝床に入った。けれど、どうもこの日は寝付けなくて、端末でアークに連絡を入れた。
「アーク。お願いがあるんだ。ルドロフィのことが気になる。調べておいてくれ」
「了解しました」