旧カガク・新カガク
翌朝。ボクはアークに積んであったスクーターを引っ張り出すと、必要最低限の荷物をバックパックに詰め、アークから出た。
「ヘェ。スゴイデスネ。シナロワサンの星ではこんな乗り物が存在するのデスカ?」
「これは安物だけどね。スピードが最速で百五十キロまでしか出ない。外側カーボンだからさ。高いのだと、タングステンとかで…。スピードも何百キロ!スリムボディがカッコよくて…」
「アノォ…。他の惑星のコトはワタシには分からないデス…」
「あぁ、ごめんごめん。まぁとにかく、こいつよりも早いってこと。じゃ、行くよ。一気に加速してくから、しっかり捕まっててね」
「ハイ…!」
ボクはアクセルを踏み込むと、スクーターはフワリと宙に浮き、瞬く間もなく全速で発進した。
「ヒィィィ!!ハヤイ!ハヤイデスゥゥゥ!!」
「大丈夫大丈夫。そのうち慣れるから」
「イヤァァァァァ!!!!」
それから数十分。昨日ボクたちが何時間もかけて歩いた場所をボクたちは今の僅かな時間で走破した。ボクにとってはザラにある光景に、次の用事に向かおうとするボクと生まれて初めての乗り物にヘロヘロになっているルドロフィ。
「コンナノ…乗り物じゃナイデスヨッ!!」
「まぁまぁ、そんなキレんなって。昨日みたいに死ぬほど飛ぶよか、百倍マシだろ?」
「……同等デスヨ…」
「そうかぁ。ごめんな?付き合わせちゃって」
「…今回だけは許しマス。次はナイデスカラネ」
羽でパタパタと身体を叩いたルドロフィはスッと立ち上がると基地へと向かって飛んでいった。
ルドロフィの基地に入ると、そこにはボクたちの星では見たこともないような様々な動物たちがいた。角を生やした、大きな動物。何故か泥の中で転げ回ってる動物、鳥もいる。
「すごいな!これ、全部食べれるのか!?」
「エエ。デスガ、ソノクチバシを持った動物と角を持った動物が主食です。ソノ一匹しか居ないのは死ぬまで食べマセン」
「どうしてだ?不味いのか?」
「愛着が湧いてシマッテ…。他の動物たちは副産物がアルノデ、ソチラを食べるのデス」
ルドロフィは大切そうにそれぞれの動物たちから副産物を回収していくと、ボクにそれぞれの動物を紹介してくれた。角が生えてるのはジャギュウと言い、濃厚な乳が採れると言う。次に泥の中のはブウダ。なんでも、とことん肥えさせたブウダのその肉は絶品なんだとか。最後に、鳥。コイツはウマシカ。肉をこんがりと焼いても旨く、副産物のタマゴも様々な料理に化けると言う。
「___トマァ、そう言った訳ナノデ本当に食糧は牧畜だけでも豊富ナンデス」
「なるほどなぁ。そんな贅沢なもん、ボクも食べちゃっていいの?」
「ウーン…。今日はヒドイ目に遭わされましたカラネェ…。一週間はダメデスカネ」
「えっ」
「ウソデス。イイデスヨ。ワタシ一人じゃ食べきれないほどアリマスシ、好きなだけ食べてクダサイ」
「マジか!サンキュー!!」
そしてボクたちはルドロフィの作ったご馳走を食べ、油田を探すため新たな調査へと出ることとなった。
「にしても、なんでお前はボクに付き合ってくれたんだ?ボクはアークが壊れたからここから出られない…だからお前に付き添ってもらう必要があるけど、お前がボクに付き合う理由はなんだ?」
「……油田に着いたら、オオシエシマス」