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銀河の果てで  作者: 天河 礼昴
ナカマと魔物と
3/18

ジクウを超えて

 ボクは呆然としながら街を彷徨った。あれから更に二時間。元々体力の少ないボクの足は棒のようになり、身体は疲れ果てて遂には動けなくなってしまった。


「ダメだ…。アーク…ごめんよ…。こんなボクのせいで…キミまで巻き込んでしまった…」


 空を見上げてそう呟くと、どこからともなくバタバタと何かが羽ばたくような音がした。


「な、なんだ…!?鳥…?とうの昔に絶滅したはずじゃ…」


 音のする方を振り返ると、そこには球体に翼をつけたような、摩訶不思議な生命体が宙を羽ばたいていた。


「アナタは何者デスカ?なぜこの星に来たのデス?」


「……」


「答えてクダサイ。アナタは誰デス?なぜワタシの故郷に___」


「知的生命体だぁぁぁ!!!」


 ボクはやっと「言葉を交わせる相手」に出会えた興奮で、思わずその相手に抱きついてしまった。


「ナ、何ヲっ!離してクダサイッ!!」


「いやぁ…嬉しくてつい!なんにしろ、ボクもだいぶ先で待ってるアークも、もうすっごくお腹ペッコペコでさぁ…?」


「…他にもダレかいるのデスカ?」


「あ…うん。ボクが造った船のアークってやつだけど…。人工知能が搭載されてるからボクの旅のパートナーとして連れてきたんだ」


「ソウカ…エンジニアナンデスネ…」


「ん?なんか言った?」


「イエ!ナニモ。ソコマデ案内してもらえマスカ?食糧はまたソノ後デス」


 ボクは重い腰を上げ、彼をアークの元まで案内することとなった。まぁ、食糧とアークのためだ。仕方がない。


 それから、ボクたちはお互いの状況を話し合った。彼の話によると、彼は元々この星で研究をしていて、名をルドロフィと言うらしい。かつてのこの星では、数百年前のCN-1131と同じように動植物や水に溢れ、人々は幸せに暮らしていたという。しかし、国の極秘機関、もとい、ルドロフィの行っていた実験で使用していたウイルスが実験対象から研究員へと感染し、それに気が付かずに過ごしてしまった研究員たちから一般人に広まり、遂には星は壊滅してしまった。ルドロフィが生き残れた理由としては、国の極秘機関なのにも関わらず、この件で一般人にも知れ渡ってしまったことで責任者として国外追放…。しかし、ワクチンを安全な所で作るために宇宙へと飛び出し見事作り上げて戻ってきたものの、戻ってきた頃には皆…ということだったようだ。


「___ふーん。お前も中々の苦労人なんだな…」


「マァ…一応自分には打ってありますカラ。仮にコノ星がウイルスで汚染されててもワタシが魔物になるコトはゴザイマセンヨ」


「そっか。それなら安心だな___は?魔物!?」


「エ?エエ。アラ、言いませんデシタ?ワタシたちが研究していたウイルスは、生物を魔物化させるウイルスなんデスヨ。モチロン、ワタシやシナロワサンも例外ではアリマセン。理性を失い、凶暴化した生物は敵味方関係なく殺し合うのデス」


「なんだよ…それ……」


「…仕方がないのデス。ソウしないと、生き残れなかったカラ……」


「え?」


「ア!あの船デスカ?早く行きまショウ、ココは危険デス!」


「お、おう」


 ルドロフィに半ば強引に背中を押されると、ボクはアークの中へと入っていった。



 アークの中に入ると、アークは長旅で疲れたのか、モニターはOFFになっていた。


「シナロワサン?」


「あぁ…。なんでもないよ。アークのやつ、疲れてるみたいだからしばらくそっとしておこう。それで?食糧とかオイルとか…。どこにあるんだ?ルドロフィもここに住んでるってことは、アークの他にも安全地帯はどこかあるんだろ?」


「エエ。先程ワタシとシナロワサンが会った場所のスグソバにワタシの基地と宇宙船がゴザイマス。デスガ、流石にワタシはエンジニアではなく研究者なモノでアークサンのような立派な船ではナク、一人乗りの小さなモノで…。装甲も砲台もナイ、脱出ポッドみたいな船デス…」


「まぁ、ルドロフィの状況ならその船で妥当だよ。因みにその距離じゃ、もう夜だしさすがに明日…だな。食糧も消費するだけじゃ減る一方だろ?生産はどうしてるんだ?」


「食糧なら問題ゴザイマセン。ワタシが基地内で畑と牧畜をしているので食うに困りマセン。シカシ…。オイルの生産はハッキリ言ってないデス…。デスガ、北の山の裏に油田がゴザイマス。長らく封じられていた油田ナノデ今も湧いているのかは分かりマセンガ…」


「それだけ分かれば問題ない!最悪、ボクのご飯をオイルにすればいい」


「食用油デスカ…?ソノヨウナモノでアークサンは…」


「大丈夫。こいつ、燃費最高なんだ」

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