新たなスミカ
ボクは宇宙を彷徨いながら、新たな安住の地を探していた。
「しかしゼロから衣食住を探すって中々にハードだな。ついこの間首都を壊滅させて、最新鋭の船が死んで…。色々あったのに、ボクも中々のやり手だと思わない?」
「そうですね」
「ちょっと冷たくない?ボクだって悲しいんだよ?ヴィランが消滅しちゃったの…。それに家族の安否だってわからないしさ」
「……」
ボクの手がけた船の中でも超・最新鋭で最高傑作の船、アークはボクの言葉をさらりと聞き流す。確かに、アークからしたらヴィランは兄弟のような存在で、大臣のご要望でアークにはない派手な装飾やご立派な砲台やSF映画のようなレーザービームが出るような発射台がいくつもヴィランには着いていた。それは、ボクがこっそり造っていたアークには憧れの的だったのだろう。アークは、最低限の装甲しか施されておらず、砲台も少ない。その代わり、人工知能が発達しており、ボクたちのように知性や感情が長けている。
「なあ、アーク。俺たちさ、せっかく晴れて自由の身になれたんだから、どっか自然豊かでのどかな所で暮らそうぜ。街の発展、とかそういうのはもうなしにして、とにかく最低限、暮らしてけるだけの生活…。俺たちだけのユートピア!」
「ユートピア…?」
「そう!だから、探すなら水が多い所だな。まずは水がないと植物は育たないし。あと、空気!それで検索かけて」
「了解___水と空気が存在する星。近くに七件ヒット。一番手前で、三百光年先にあります。ワープ航路を起動しますか?」
「おうっ!」
「ワープ航路、起動。これより、ワープを開始します。ベルトを締め、頭のネジが緩んでいる方はネジが飛ばないようお気をつけください___」
「誰が馬鹿じゃ!!」
「三__二__一。発進」
ボクたちは三百光年という短くも長い旅を終えると、青く美しい星にたどり着いた。眼前に広がるその星はキラキラと美しく、まるで一つの大きな宝石のようだった。
「綺麗だな…。これからはここが…ボクたちの故郷になるんだ…」
ボクは噛み締めるように言葉を吐くと、アークを星に向かわせる。その刹那。目の前に大きな亀裂が現れ、強い力で引き寄せられる。
「な…なんなんだ、アレ…!」
「わかりません。推測するに、ブラックホールです」
「なんでお前そんな冷静なんだよ!てか、なんでこんな突然出てくるんだよ!…クソッ。ギア全開!緊急ワープ航路、起動!三百光年先、CN-1131付近にセット!」
「了解___緊急ワープ航路起動。只今より、CN-1131へとワープします。ベルトを締めてください。三、二、一、発進」
ボクは急いで元の場所に戻ろうとワープを指示したものの、中々ギアが入らない。ワープ航路も、開かない。
「緊急事態発生。ワープボイラーが破損しました。ギアレバーが機能していません。間も無く、ブラックホールに突入します。緊急体制を取ってください。ブラックホール突入まで、三__二__一__」
「うぉぉぉぉぉッ!!____」
それからどれくらいの時が経ったのだろうか。ボクとアークは、見覚えのある場所に不時着していた。しかし、その世界は全くと言っていいほど色がなく、白と黒。そしてその濃淡だけで世界が成り立っていた。
「どうなってるんだ…。それにここ…」
「間違いありません。シナロワが追われた星、CN-1131です」
「そんな刺さる言い方すんなよ…。でも…そうだよな。なんでこんなことに…?みんなはどこに?…アーク。ちょっとここで待っててくれ。ボクは外に出て辺りを探索してくるよ。もしかしたら、食糧とかオイルとかあるかもしれないしな!」
「了解」
そうしてボクはモノクロのCN-1131の調査に出ることとなった。
それからしばらく経った。マジで誰もいない。何もない。意気揚々とアークから出発した時はもしかしたらどこかに集落がとか、もしかしたら、どこかに食料倉庫がとか思ってたけど…かれこれ四時間。何にもなさすぎてもうそろそろ泣けてくる。
「ボクの命運もここまでかぁーーッ!」