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銀河の果てで  作者: 天河 礼昴
ナカマと魔物と
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魔物とソセイ

 ルドロフィはニマリと勝ち誇った笑みでボクを見ると、ボクの端末をフワリと持ち上げた。


「イヤネェ、キミ中々賢いからサァ…。ここまで来るのにダイブ手こずっちゃったヨォ…」


「お前…何言って……。今までだって…」


「ダ、カ、ラァ!キミもずいぶんアタマカタイネェ…。ボクはキミをリヨウしてたんダヨ。ボクの基地のキョウカに…メドロの研究に…ソレニボクの看病マデ!!何かと役に立ってクレテ、本当にアリガトウネッ!コンナオヒトヨシ、初めてミタヨォ」


「……ボクたちがこの星に引き寄せられたのも…お前の仕業か…?」


「ソレハ偶然ダヨォ。タダ、キッカケを作ったのはコノボクダヨ。言ったデショ?人手がホシカッタって。ダカラ星からハナレタトコロに時空の歪みを作って、ダレカが来てくれるのをマッテタンダ」


「全て…全てお前のせいだったのか……ッ!!」


 やっとのことで思考が追いついてきたボクは、激しい衝動に駆られてルドロフィに飛び付いた。だが、寸前の所で交わされ、ボクは顔面から地面に着地する。


「グゥッ!」


「ドウシタラ飛んでるボクを捕まえられるとオモウンダイ?ソレト…」


 ルドロフィは小馬鹿にしたようにクスクスと笑ったかと思えば、ボクの首筋に注射針のようなものを突き立てる。


「キミには実験台にナッテモラウヨ。シナロワクン(・・・・・・)


「グッ…テメェ……!」


「フフッ…。フフフフフ…!」


 「何か」を注入され、身体が痺れて動かないのをいいことにルドロフィはパタパタとどこかへと飛び去って行った。



 アークの中。ボクの部屋の地面。窓からの光は全て遮断され、今の時間も、日付も、何も分からない。あれからアークからの返答や端末の通信は無く、ボク自身も身体はほとんど動かせない。ルドロフィはあの時以降一回も部屋に来ず、今までの生活とは一変して嘘のように静まり返った日常を過ごしている。


「(生き地獄だ…)」


 思うように声も発せないボクは、潤んだ目で部屋の天井を見た。その無機質な天井を背景に、僕の脳裏ではルドロフィとの楽しかった日々が浮かんでは消え、浮かんでは消え…。最後には、彼の穏やかで優しい笑顔と、「大切な人」と言ってくれた夜のことを思い出した。


「(あれは全部、嘘だったって言うのかよ…)」


 堪えきれずに溢れ出した涙は、ボクの頬を伝ってはボロボロと地面に落ちていった。


 ____嘘じゃない。ボクの中のこの記憶は、嘘じゃない。楽しかった記憶も、美味しかった記憶も、信じたいこの気持ちも。ルドロフィは違うって言うだろうけど、ボクはボクの気持ちを貫いてやる…!


 ボクは気合いで全身に力を入れると、少しずつ、少しずつ身体は起き上がっていった。それでも、あのルドロフィが打った薬か何かのせいなのか、なぜか全身がズキズキビリビリと痛くて。


「ウアァァァァァァッ!!!!」


 ボクは最後の気合いを振り絞ると、なんとか立ち上がり、ルドロフィのいるであろう基地へと向かった。


 なんとか基地までたどり着くと、いつもとは違う、異様な雰囲気と匂いが漂っていた。


「本当に…ルドロフィは……あれ?声が…出てる!あれ、手も!足も…なんで…」


 アークから出るまで一苦労だったものの、外に出て基地に向かおうとした刹那、ボクの身体は以前よりもキレが良く、元気になっていた。それになんだか、背中に変な感じが___


「は、羽根が付いてるーーッ!?」


 ボクは驚きのあまり、「潜入」という目的を忘れて大声を出してしまった。やってしまった。これじゃあ気が付かれるのも時間の問題か…。


「…シナロワ?ナンデキミがココに?」


「なんでって…。お前に話しに来たんだよ」


「イヤ、ソウイウコトジャナイ。ドウシテ、理性を保ててイルンダ?」


「…?」


「羽根も…ハダの色も…ヒトミやカミの色でサエも変わりつつアルノニ…。ナゼ理性はソンナニ保ててイルンダ…」


「…ルドロフィは、ボクに魔物になる薬を注入をしたの?」


「……」


「ボクはボクだ。小っちゃい頃からボクの故郷では色んな感染症やらウイルスやらが流行ってたけど、ボクは一度も感染したことがない。だから、そんな数百年前のウイルスをボクに注入した所で、ボクは何も変わらないよ」


「……バケモノカヨ…」


「バケモノは魔物だろ。言っとくけど、ボクはお前を許した訳じゃないからな。ボクを魔物化させようとしたことは別にどうでもいい。けど、アークをこんな…。ボクのパートナーにまで手を出した…!それが一番許せない!!だから、その罪を償ってもらうからな!」


「…嫌だと言ったら?」


「力ずくでやらせるまでだ」


 ボクはどこからともなく湧き上がる力を掌に溜めると、その中に赤い光の玉が出来上がっていく。


「ヒィィィ…!ワカッタ…!ワカリマシタヨ!ヤリマスヨ…!!」


「おう。頼りにしてるからな!」


「エエ…。マサカこうもリヨウされ返されるトハ…」


 そうして笑うボクの髪と瞳、肌がその晩には完全に魔物化してしまい、絶叫したのは言うまでもない。



「ア、端末ならナオスノハ簡単デスヨ?ワタシ、元エンジニアデシタノデ仕組み的に高電圧を流せば壊れるカナとオモイマシテ…。タメシニやってみたら正解デシタノデ。ラッキー、ト!」


「ラッキー、じゃねぇーよ!お陰でボク酷い目に遭ったんですけど!?アークも起きねぇし!」


「スミマセン」


「で?」


「ア、エット、コノ端末はバックアップ機能が優れているようデスノデ、ナオスのならフタタビ同じ電圧を流せばナオリマス。イワユル、電気ショックで蘇生!デスネ!!フフフ」

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