暖炉の前で
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淹れてもらったラベンダーティを片手に、暖炉の前のソファに身を預ける。こんな贅沢な火の温もりは感じたことがない心地よさだ。影は立ったまま、こちらを見てくる。
「気に入ってきただけましたか? 実は、とっておきのものだったんです。」
生憎、俺は、アロマや、お茶、そう言う匂いに価値を見出せないから、なんとも答えづらい。
「それで本題は?」俺は待ちきれず影に急かすように言った。
「――優さん、人生は楽しいですか?」
「楽しいに決まっています。妻と力を合わせて毎日の生活を送って、仕事も……。」
「仕事は順調ですか?」
食い気味に聞いてくる。それが一番聞きたいことなんだろう。
「まぁボチボチですよ。」
悟られないように、もう聞いて欲しくない話題だとメッセージを込めて無愛想に答えた。
「――そうですか」
影はティーカップをテーブルに置き、大きな窓に近づき、空を見る。
「あなたの悪い癖は触れられたくない本当のことを隠す。隠すのが上手ければそれでいいのですが、如何せん隠し方が下手だ。下手な隠し方をされるとこちらとしても不愉快です。」
図星だ。触れられたくないものの隠し方は尋常じゃなく苦手だ。上手く隠せないからろくな嘘もつけない。だからこそ正々堂々とやってきたつもりだ。だが平気で隠す、嘘をつく処世術を持ってるやつにどう戦えばいい?大体正直者が馬鹿を見ることになる。
「――ノルマに追われる日々、新規の顧客の見つけることに時間がかかるし、事故が起きたら現場に行かなきゃならない。息が続くと思うか?それに、ノルマ会議に戦々恐々しながら出るはずもない新規顧客のリストを作成しなければいけない。しかも自社、他社の先輩の縄張りではないところを地道に活動していかなければならない。数字は完全におんぶ抱っこだ。そう思ってから出社が辛くなった。しかもヘッドハンティングで入社したっていうプライドが邪魔をいつもするんだ」
「――そうですよね、わかります。よくお話くださいました。いいですか、優さん、私は私に起こったことを全てお話します。そしてどうか、生きてください。」
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