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錬金術使いの異世界美容師  作者: 伽藍 瑠為
1章「異世界美容室開店」
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「エルフの森」

「エルフの森」








ミィナをシャンプーモデルに使い、ナタはキリオにシャンプーの修行をつけてもらっていた。



「先生! こうですか!?」


「違う! もっとこうだぁ!」


「こうっ! ですか!?」


「全然違うって! こうだって!!」


「あ! これですね!?」


「こうをこれに変えるなぁ! こうだって!」



その時、ミィナは余りの苛立ちに言う。



「……いい加減にしてください」



気づけばミィナは全身濡れていた。



「おい! ナタ! もっと良い加減を御所望ごしょもうだぞ!」


「いや!? せ、先生!? そんなご冗談言ってる場合じゃないですって!? ミィナさんめっちゃ怒ってますよ!?」



「もう……いいです」



ミィナは不機嫌にその場を立ち去る。




「ナタ? お前の所為だぞ」


「え!? 私ですか!?」


「あんなに水も滴るいい女にした責任は重いぞ」


「あ……そ、そうですね……びちょびちょでしたもんね」


何故なぜ表現をわざわざそれにした?」


「え? いや……びちょびちょに濡れていたもので」


「そうか。びちょびちょか」


「気に入ったのですか?」


「ふん! 俺がそんな安い男だと思ってるのかぁ!?」


「しかし、ミィナ様はプロン様でしたか? 師匠の所へ行ってから元気が無いみたいですが?」


「ナタの分際でシカトすんなコラぁ!!」


「どうしちゃったんでしょうね?」


「きっとたっぷり師匠にしごかれたんだろ?」




その時、お店の扉が勢い良く開き、ナタとキリオが振り返えればそこに居たのは肩を上下に揺らしながら疲れ切ったナタの部下の下級ゴブリンだった。



「ハァハァ……ナタ様……」



その緊迫した状況にナタは真剣に戻る。



「どうした?」


「ハァ……至急、ハァ……来ていただけますか?」


「なにがあった?」


「ツルギ部隊……ハァ……エルフ族と少々……ハァ……揉め事になり、ツルギ様がナタ様とキリオ様に伝える様にとのことです」



それを聞いてキリオは。



『エルフ族!? やっぱり異世界感半端ないなぁ! エルフの髪切れるかな? 切らせてもらえるかな? え!? お友達に慣れないかな!? ……ん? と言うかなんか、下級ゴブリンも丁寧になってるな……ナタの魔力補正の影響か? いや……ナタの努力か』



そこで、ナタがキリオに助言を求める。



「先生? いかがいたしますか?」


「とりあえず行こうか」



キリオはゴブリン村へと向かった。






「なんか、随分と綺麗なってね?」



そこは荒れ果てていた村とは違い、整備されたゴブリン村を見てキリオは改めてそう感じる。

家はテントの様な家から、木材でできた家、土で固めた壁の家も幾つかあった。

役職、役割、管理、それぞれが課せられた仕事をこなしているのが伺える。



「ゴブリンってこんなに知能高かったか?」



その時、ナタから案内の声がかかった。



「先生? こちらへ。ツルギが待ってます」


「わかった」



ツルギが居る家に案内される。

そこは壁が土で固められ、ゴブリン村ではそこそこ豪華な家なのが伺えた。

そして、キリオは家に入り、長いテーブルを囲うゴブリン達の上座に座るツルギに話しかける。



「ツルギ? なにがあった?」


「キリオ様お待ちしておりました。実は、私達の狩り部隊が森近くで狩りをしていた所、エルフ族と遭遇してしまいまして……エルフの言い分は森の産物は我らの物。狩りを即刻中止せよとのことでした」


「なるほど……」

『構い無しに戦わなかった事はいい事だ……エルフ族……早く会いたい!』


「キリオ様に意見をあおぎたく待っておりました」


「エルフの居る場所はわかるか?」


「はい」


「なら早速行こう」

『とりあえずは狩ってしまった謝罪が大事だよな……低級ゴブリンと思われても厄介だし。男だけでは見栄えが悪いな……』



キリオは言葉を続ける。



「ツルギ、ナタ、ナタリで向かう。それと…エルフは食物なにが好きなんだ?」



そして、キリオを含めた4人でエルフの森の入り口までおもむいた。



「ツルギ重くないか? 荷物をろしてもいいんだぞ」



エルフは木の実、果実などを好むと聞き、キリオはバッグ一杯に詰めたリュックをツルギに背負わせていた。



「大丈夫です」


「そうか」



ナタがキリオに話しかける。



「森の中に入らないのですか?」


「おそらく、こっから先はエルフのテリトリーになってるはずだ。勝手に入って侵入者扱いされても困るしな……少し待てば来るだろう」



そう言っている時、森の奥から弓を構えた金髪の長い髪のエルフ女性が現れ、言った。



「ここはエルフの森……あなた達は何ですか?」

『……は!? 人間!? 何故人間がゴブリンと!?……怪し過ぎる……不審な動きをすれば直ぐに殺そう』




向けられる殺気にツルギが反応し、一歩足を前に出したと同時にキリオは手を広げてツルギを止め、エルフの女性に話しかける。



「うちの部下ゴブリン粗相そそうを働いてしまった様なので謝罪を入れに来ました」

『すげぇ殺気……殺す気まんまんじゃん……お友達になりたかったのに……』




キリオはツルギに顎で指示し、リュックからはみ出る果実を見せる。

それを見てエルフは言った。




「信じられません。まず、人間がゴブリンと一緒にいる時点でおかしい話しです」

『あのバッグの中もきっと毒だわ』



「今、近くのゴブリンの村は私が村長であり、管理しています。下の者が粗相をしたなら管理者が謝りに来るのは当然かと」



「人間が? ゴブリン村を管理している? もっと信じられません」

『は? 人間がゴブリンの村の村長!? 不可能に決まってるでしょ!? なんなのこの人間……』



「現に低級のゴブリンが攻撃をしないで話し合いに来ているこの状況こそが証拠になってるはずですが?」

『めっちゃ警戒してるじゃん……』



「…。」

『た、確かにその通りだわ』



「俺たちに敵意は無い。縄張りをしっかり決めたいと思っている。その話し合いがしたい。」

『あわよくば、仲良くなれたらいいなぁ…エルフの髪……切ってみたい……』



「なるほど……しかし、私では決められない。しばしそこで待て」

『本当に人間が管理してるとなると厄介だ……何か情報を引き出したい』




エルフの女性は首に下げる小さな笛を森に向かって吹いた。

しばらく待つと数人の男性エルフ達が現れ、女性エルフが話をつける。

そして、女性エルフはキリオの方に歩み寄り言う。



「来い」



言われるがままキリオ達は案内される。

そして数刻歩き、女性のエルフ言った。



「ここだ」



しかし、案内されたが、キリオの目の前はただの森しかなかった。



「ん?」

『騙された?』



首を傾げているキリオにエルフの女性は言う。



「上だ」



キリオが上を見るとそこには村が確かにあった。

森の木を利用して木材で出来た家と橋が幾つにも張り巡らされている。



「なるほど……」


「村長の所へ案内する……ついて来い」


「……。」

『一々態度でけぇな』



大樹の根元にカモフラージュされた扉。

開けると螺旋階段になっており、上の村へと繋がっていた。

そして、しばらく橋を渡り、キリオは村を見渡す。

エルフの住民はキリオ達を見て嫌悪の表情を作っていた。




『ゴブリンとエルフって仲悪いのか? それとも人間と?』



そして、キリオ達は村長の家に辿たどり着いた。



「村長がお待ちだ」



キリオが中に入ると眉間にしわを寄せ、殺気を放つ村長が居た。

そして、キリオは言葉を口にする。




「どうも……この度はうちのゴブリンが粗相をし、申し訳ございませんでした。手ぶらでは来れませんでしたのでどうぞこちらを……」

『意外と若く見えるけどエルフって100歳超えてんだよな……』



キリオはツルギに果実が入ったバッグをテーブルに置かせた。

そして、エルフの村長はキリオを見て口を開く。



「今日は他に御用件があるのでは?」


「その通りです。まず、私たちはエルフ族との争いを望んではいません。私、人間側でもゴブリンの被害が絶えなかった為に、ゴブリンの元村長と話し合った結果、私が管理者として管轄かんかつさせて頂くことになりました。数日ですが、今のところはゴブリン達は悪さを働いてはいません。」


「なるほど……通りで最近はゴブリンを見かけなくなったわけか」


「しかし、それも全てのゴブリンをおさめたわけではないので、こちらとしては私が管轄かんかつするゴブリン村をわかりやすくする為に、エルフ族との交友関係が気づければと思っております。」



「ふむ……そして?」



「ですが、ゴブリンが今まで働いた悪事が消える訳では無いので、無理にとは言いません。しかし、私が管轄するゴブリン村の対応を理解してもらえればと今日足を運びました」

『でも実際、ゴブリン達が歴史でどんな悪さしてるかは知らないけどな……故郷で見たアニメや漫画では結構酷いことやってたしな……その予定で話しちゃったけど、合ってるよな?』


「ふむ……ちなみにこの果実はうちの森から取った物では?」


「いえ、それはゴブリン村で栽培し、収穫したものになります」

『ほぼジムの魔法だけどな』


「なんだと!? これが!? ゴブリンが作ったと言うのか!?」

『なんと質が良いのだ……し、信じられない』


「はい。しかし、管理者としてゴブリン達を栽培した物だけでおさえておく事はできない為、肉類も必要になります。なので、狩りもさせて頂かないと少なからずゴブリン村の中から悪事を働く者が出る可能性もございます」


「なるほど……縄張り争いか、交友関係かと言いたいのだな?」


「はい……その通りです」

『そんな言い方してないけどな』


「人間が管理しているだけあって少なからずクズばかりでは無いのだな。しかし、ただの人間がゴブリン村を管理する事はできまい? お主はいったい何者だ?」


『……くそ……美容師って答えたい……』

「れ、錬金術師です……」


「なんだと!? 錬金術師だと!?」

『まさか!? こやつは!?』


『え!? 何この反応!? まさか亜人種にも錬金術師って嫌われてるの!? 美容師って答えた方が良かった?』

「何かお気に触れましたか?」


「貴様!! 姓はなんだ!?」


『は? ゴブリン村でもそれを聞かれたな……』

「アルタイルを頂いております」


「ア、アルタイルだと!?」

『やはり……ついに動き始めたと言う事か』


「……。」

『なになになに!? この反応!?』


「……そうか……全面的に協力をしよう」

『だとしたら……もしやあの遺跡ダンジョンは………』


「え?」

『は!? どうした? 急に!?』


「しかし、こちらとしても実は厄介な事になっててな」


「と言いますと?」


「この森の更に奥にマナの森があるのだが、最近そこに遺跡ダンジョンが現れてな。中の魔物が森を徘徊はいかいし、食料が目減めべりしているのだ」


「なるほど」

『やっぱり異世界だな。ダンジョンとかあるんだ』


「そちらと全面的に協力をしたい……だが今は遺跡がなんとかならなければどうしようもない」


「そのダンジョンの難易度は高いのですか?」


「あぁ……精鋭隊を派遣したが数人が死んでおる」


『あ……だからみんなピリピリしてるのか』

「一つ提案があります」


「なんだ? 言ってみろ」


「私の知人に冒険者がいますのでチームを編成して中に向かいます。攻略できるかはわかりませんが」

『こういうめんどくさいのは全部ジムに任せちゃおう』


「お主達では無理かもしれんが……もう手段もほぼ無い……しかし、エルフ族の問題でもある……ゆえにうちからも2人同行させよう」


「ありがとうございます」





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