「突然の消失」
「突然の消失」
「ジム! あそこ!」
アンカーが指差す方向を2人は見た時、また別のトゥランスプラントが暴れ、アルデバラン兵士を薙ぎ倒していた。
「行こう! ジム! この三人なら絶対に大丈夫だ!」
キリオのその言葉にジムも頷いて言う。
「僕もそう思う! 行こう!」
三人は走り出し、キリオが1人先行し突き進む。
「武装錬金術!! 戒級強化!!」
凄まじい速度でトゥランスプラントの意識外から鋏剣で斬撃を繰り出し、肩の付け根から右腕を吹き飛ばす。
「なんだと!? 俺の剛皮を一太刀で!?」
トゥランスプラントが驚いている間にアンカーも既に懐で拳を力一杯に構えていた。
「なに!?」
危機迫るアンカーから滲み出る殺気にトゥランスプラントは死を覚悟する。
治癒師に掛けられた寿命を減らす呪いを反転術式で得た凄まじい力の拳で殴ろうとしたその時だった。
「そろそろそろかな……」
それを遠くの木の天辺から観察する黒い者がこの時を待ち侘びた様に指を鳴らす。
「……え?」
アンカーの拳は確かにトゥランスプラントの鳩尾を捉えた。
しかし、その力は普通の何処にでもいる女の子の力だった。
「……え? な、なんで?」
『まさか!? ここに来て今このタイミングで呪いが解けたと言うの!?』
トゥランスプラントも何が起きたのか分からなかった。
しかし、アンカーが放った殺気から危険を感じ、残る左腕でアンカーを力一杯に払い吹き飛ばす。
「きゃぁ!!」
その状況にジムもキリオもアンカーの異変に気付き直ぐに動き出す。
「ジム!」
「わかってる!」
キリオはトゥランスプラントへ向かい鋏剣を振り下ろす。
しかし、トゥランスプラントは簡単に避ける。
「来るってわかってればその速さでも避けられるんだよ!!」
「だろうなぁ! はなから俺だけ仕留められると思ってねぇよ!」
しかし、キリオの目的は時間稼ぎだった。
『くそ……アンに何があった……まさか!? このタイミングで呪いが無くなったとか言わねぇよな!?』
キリオは1人トゥランスプラントと対峙し引きつける。
そして、ジムは吹き飛ばされたアンカーの元へと駆け寄り直ぐにジムが使える治癒魔法をかけながらアンカーに訪ねる。
「アン! 大丈夫!? いったい何があったの!?」
「ごめんジム……ちょっとしくじっちゃった……多分……たった今……呪いが無くなった……」
「……え? い、今?」
「そうみたい……」
「じゃ……もう戦闘には……」
「ごめん……参加出来ないかも……」
「そうか……」
『 どうする……呪いが直ぐに解けないことは確かに可能性としては考えてた……でもそれが今このタイミングで来るなんて……混合獣だけなら僕とキリオだけでもなんとかなる……でも混合人獣にはアンがいないと危険すぎる……どうする……僕も人体強化をして近接戦闘に加わる……しか……そうか!』
緊迫したこの状況で頭を回転させる為にジムは自分で言葉を並べた事で気が付いた。
「アン! 君はまだ戦える!!」
「……え?」
「いや! アンしかできない戦う方法がある!」
「それはいったい……」
その時、トゥランスプラントとの攻防に負けキリオが2人の近くまで吹き飛ばされた。
「いてててて……」
「キリオ!? 大丈夫!?」
「全然平気! それよりアンは大丈夫なのか!?」
「このタイミングで呪いが消えたみたいなんだ!」
「やっぱりそうだったのか! で!? もう作はあるだろ!?」
「もちろん! アン! いけるかい?」
その言葉と共にジムの治癒魔法は終わった。
「うん! ありがとうジム!」
「よし! キリオ! また時間を稼いで! そのあと僕と交代!」
「オッケー!」
またキリオはトゥランスプラントへ凄まじい速さで突き進み、鋏剣を振り上げる。
「オラァ!!」
「何度やったって同じなんだよ! ばかがぁ! 不意を突かれ片腕は無くなったが、お前1人ならどうとでも出来る!!」
キリオとトゥランスプラントは凄まじい攻防をまた繰り広げる。
「なにがあったかはしらねぇがぁ! 今がお前らを殺すチャンスだってことだろぉ?!」
振り下ろされたトゥランスプラントの刀のように尖った爪をキリオは鋏剣で受け止めて答える。
「果たしてそうなのかな?」
怪しい笑みを浮かべるキリオにトゥランスプラントは警戒を強めたその時、トゥランスプラントは殺気を感じ後方へと飛んだ瞬間、自分が今の今まで立っていた場所に雷の鞭が雷撃を轟かせ空を切る。
「危ねぇな!!」
振り向けばそこにはジムが居た。
「なんだよ! 今度は2人がかりかぁ?」
「いや……選手交代だよ」
ジムはキリオへ指示を出す。
「キリオ! アンの所へ!」
「わかった!」
キリオが向かうと同時にトゥランスプラントも動く。
「行かせると思ってんのかぁ?!」
背中を向けたキリオに目掛けてトゥランスプラントは爪を長く伸ばし攻撃を放つ。
「魔法障壁?」
しかし、ジムが張った魔法障壁に阻まれ、トゥランスプラントの攻撃はキリオには届かなかった。
「ちっ……もう間に合わねぇか」
『 このぐらいなら次は脚で壊せそうだな』
トゥランスプラントはジムへ向き直り構えて言う。
「何を考えてるかはしらねぇがお前を殺してすぐに向かってやらぁ!!」
「重力魔法?」
トゥランスプラントが気づいた時には足元に紫色に発光する魔法陣とそこから出る鎖に捕まっていた。
「なんだと!? いつの間に!? そうか! 無詠唱か! こいつはぁ厄介だなぁ」
「もう動くことも出来ないはずだよ」
「グハハハ!! 混合人獣舐めんじゃねぇぞ!」
そう言ってトゥランスプラントは糸も容易くジムの重力魔法を破壊してみせジムに攻撃を切り出す。
「死ねやぁ!!」
「魔法障壁?」
トゥランスプラントはまた魔法障壁に阻まれ、ジムに攻撃は届かない。
「同じ手が通用すると思ってんのかよ!!」
トゥランスプラントはジオウルフの脚力を使って魔法障壁を蹴り破る。
「重力魔法」
再びトゥランスプラントの脚に紫に淡く光る鎖が巻きつく。
「何度やったって同じなんだよぉ!!」
トゥランスプラントは力技で重力魔法を破壊し、ジムに爪を向け突き進む。
「……フフ」
一瞬見せたジムの怪しい笑みをトゥランスプラントは見逃さなかった。
その時、他方から押し寄せる凄まじい殺気を感じ、トゥランスプラントが緊急回避をした瞬間だった。
爆発音に似た重低音を轟かせ、辺りは土煙で見えなくなった。
「今度はなんだ……」
トゥランスプラントはまだ放たれる殺気を土煙の中から感じ警戒を強める。
「もうあなたに遅れは取らない」
聞こえた女の子の声と共に土煙は晴れ、大きく抉られたクレーターの中心にはアンカーが立っていた。
「な、なんだと……」
『 この破壊力……こいつがやったって言うのかよ? さっきは何かが原因で力を出せなかった……そう考えるのが自然だ……だが、今は力が戻っただと? なぜ急に!?』
「どう? アン?」
ジムがアンに調子を聞き、アンカーは手を何度も開閉しながら確かめ言う。
「うん……少し足りない気はするけど……いけると思う!」
「それは良かった!」
そして、キリオも合流する。
「しかし、良く思いついたな!? ジムの人体強化に俺の戒級強化を他人に重ね掛けするって! あれを俺もやったら今よりもっと強くなるかな?」
その質問にジムが答える。
「多分無理だと思う」
「どうして?」
「練習すればできるだろうけど、僕達じゃ体も意識も追いつかない。今のこの時点であの力を物に出来るのはアンだけだと思う。今までの力があったからこそアンはあの力を扱えられているんだ」
「なるほどな」
そして、ジムが改めてトゥランスプラントに言う。
「待たせたね! 三人で行かせてもらうよ」
トゥランスプラントは頭の中で計算した。
「チッ……」
『 これはぁ……分が悪すぎるなぁ……まだ2人ならいけたがしかし、あの女のが力を取り戻した今、俺は負ける……』
トゥランスプラントは急に4速歩行の態勢になり背中を赤く染め膨れ上がった。
「ブレスが来る! アン! 止めて!」
ジムが指示を出したと同時にアンは跳躍し、空中で拳を構える。
その瞬間だった。
トゥランスプラントはブレスを三人へ向けてではなく、地面へと向けて打ち込んだ。
「なに!?」
理解できないトゥランスプラントの行動にアンカーは驚く。
トゥランスプラントはそのブレスの反動で後方に自分を吹き飛ばし、逃走を選択した。
『ここは逃げて数を集める』
トゥランスプラントは戦況を判断し、ミラク国兵士が固まる所へと逃げる。
「2人とも追いかけるよ!」
三人はトゥランスプラントを追った。
ここまで読んで頂き、本当に嬉しく思います!
ささいな感想やレビューでもとてもはげみになります!!
それと、もし良かったら厳しい評価でもかまいません!
今後成長していく為にも必要なので是非よろしくお願いします!
是非またのお越しをお待ちしております!!
そして、私事ではありますが、仕事が忙しくなり更新が追いつかなくなってしまいました。
楽しみに読んでいただいていた方々に申し訳ございませんが一度おやすみさせていただきます!
ストックが溜まり次第再開させていただきますのでその際はまたよろしくお願いします!




