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錬金術使いの異世界美容師  作者: 伽藍 瑠為
1章「異世界美容室開店」
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「魔法師の秘密」

「魔法師の秘密」





 同日ーー

ミィナは師匠のプロンに呼び出された為に王都「アルデバラン」に来ていた。



「…。」

『ここはいつも人が多すぎる』



街を見渡しながらプロンが居る研究室へと向う途中、右往左往する人混みの中を歩き、ミィナはそう思っていた。

その時、道に並ぶ近くの屋台で言い争いを耳にする。



「いいじゃねぇかぁ! 金は払うっていってんだろぉ!?」


「錬金術師にくれてやる物なんてここには無いっ! 早く帰れっ!! 営業妨害だ!」


「またそれかよ! もっと新しい言葉はねぇのかよ!!」


「早く帰ってくれ!」



ミィナはそれを発見し、知人なのを見て声をかける。



「シリス様? どうしました?」


「お!? ミィナじゃねぇか! ここのジジィが金払うって言ってんのに錬金術師だから売ってくんねぇんだ!」


「そうですか……なら私が買います。おいくらですか?」




そのやり取りを目の前に屋台の商人は不本意な表情を浮かべつつ言う。



「500ルイだ」


「はい」



シリスは屋台で買ったトカゲの丸焼きを口に頬張ほうばりながら言う。



「いやぁ! 助かったぁ! お腹空いてたんだよ!」


「シリス様? 錬金術師には売ってくれないってわかっててなぜ購入を求めたのですか?」


「いいんだよ。あたしは自分の思うがままにやってきた。やってダメならまた考えるさ」


「錬金術師は本当に嫌われてますね」


「ところでミィナは王都ここに何しにきたんだ?」


「あ! 昨日は不在ですいませんでした。プロン様の所へ伺う途中です」


「あ! それか!」


「はい。シリス様はこれから何処へ行かれるのですか?」


「研究室に戻ってまた開発と報告書だ。嫌われてるけど一応、錬金術師の国師こくしだからな。」


「大変ですね」



2人は十字路へ差しかかり、ミィナが言う。



「では……シリス様。私はこちらになりますので、また何処かで」


「おう! このトカゲ代はキリオに払わせておけ!」


「もちろんです!」



2人は別れ、ミィナはプロンの家にたどり着く。

ドアをノックし開けたその時、目の前に水色の髪に魔女の様な白の帽子を被り、テーブルに敷き詰められたフラスコを手に取って何かを調合するプロンがミィナに気づき口を開く。


















挿絵(By みてみん)













「少しそこで待って……もうすぐ終わるわ」


「はい」



ミィナは言われるがままプロンを待つ。



「これもダメだわ……はぁ……待たせたわね」



プロンの研究がひと段落し、待たせていたミィナに目をやる。



「いえ……大丈夫です。師匠? 今日はどの様な御用件ですか?」


「今日わね。大事な用があって呼んだの。こちらへいらっしゃい」



プロンは立ち上がり、別室の部屋を開ける。

ミィナが中に入るとそこは資料室になっていた。

プロンは1番奥の本棚へ足を運ぶ。



「いい? これから見せるのは魔法師の隠し続けてきた罪……私達は大罪これを背負っていきていかなければならないの」



プロンは一つの本を手に取り、手をかざし、ミィナに言葉を続ける。



「あなたは条件を満たした。これを知る責任があるわ」



プロンは無詠唱で本に魔法をかけ、また本棚へと戻す。

その時、本棚全体が輝きに包まれ、光の粒子になって蒸発し、地下へ続く階段が現れた。

それを見てミィナは驚く。



「こ、こんなところがあったのですね……」



ミィナは初めてこの入口を知った。



「ええ……私が所有する書庫への入口よ。そして、この先は魔法師だけが背負う真実の部屋」


「真実の部屋?」


「……きなさい」




2人は階段を降りていく。

一軒家の地下とは思えない長い階段に遺跡の様な壁。

プロンは歩きながらミィナに語る。



「遥か昔の世界戦争の記述は知ってるわね?」


「はい」


「これから見せるのはそれの一部よ」


「ど、どう言うことですか?」



案内され、着いた真っ暗な空間。

そこでプロンが指を鳴らした瞬間、部屋が明るくなる。

そして、目の前の壁にかる絵を見てミィナが驚いた。



「え!? こ、これはいったい? なんなのですか……?」



そこには十字架に吊るされた男の絵が描かれ、錬金術師の紋章が男の胸に刻まれていた。

更に、その下では、魔法師と治癒師と思われる人の絵も描かれている。

そして、問題なのはその絵の更に下。

錬金術師の紋章が刻まれている男が片腕と片足を千切られ、7匹の魔物と戦う絵が描かれ、更に数人の天使が男の背後に描かれていた。



「これは魔法師の大罪よ。今、その一部始終を見せるわ。体を楽にして目を閉じなさい」


「はい」



プロンはミィナのひたいに人差し指と中指を置いた。

そして、プロンの指先が発光したその瞬間。

気づけばミィナは霊体になっていた。

原型をとどめていない体でミィナは周りの景色を見て過去の王都アルデバランでの一部始終なのを理解する。

街は火の海になり、逃げゆく人々、攻め込む亜人や魔族、そして、対抗する人間の兵士。

まるでそれは地獄絵図だった。




『ここは過去の記憶!?』



そして、ミィナの目の前には2人の男女が会話をしていた。



「やめるんだ。スピカ……君では無理だ。気持ちはわかる。しかし……それをしてしまったら……」


「これは知ってしまった者の宿命です。誰かがやらなければこの73番目の世界が……」


「それでも……俺はスピカを止める」


「なら……どうすればいいの? 私はどうしたらいいの!? 知ってしまった世界の最果さいはてを変える方法はもうこれしか無いの!! やらなければ最後の審判が来てしまうわっ!!」


「俺が君の代わりに行く。俺なら可能だ」


「な!? それはダメっ! それだけは絶対にダメ!」


「知ってしまった者の宿命なら……俺も同じだ。その為に準備をしてきた」


「どういう……こと?」


「きっと、俺がときしんに行けば世界は錬金術師の敵になるだろう……しかし、ヴァルプルギスの夜は少しの間は阻止出来る。ここから何百年先に俺は光を託してきた。その光がきっと闇を切り開いてくれる……お前にはそれを導いて欲しい」


「ノプス……あなたが何を言っているのか…私にはわからない」


「お前の手で……この先で生まれてくる錬金術師を大事にしてくれ。俺は悪の象徴しょうちょうとなろう」


「ノプス! あなたが行ってはダメ!」


「ありがとうスピカ……」



ノプスはスピカの溝打ちを殴る。



「っ!? だめ……ノ、ノプス……」



スピカはノプスの腕の中で、重いまぶたを閉じ、気絶した。




「今まで本当にありがとう……スピカ……俺はお前が……いや……違うか……」




そして、後ろの暗がりからゴブリンとエルフの2人が現れ、ノプスに言った。



「ご命令を」


「お前達には迷惑をかけるな。私が望む未来がこんな形になってしまうとは……」



その言葉にゴブリンが言う。



「その先に我らの未来もあります」



続けてエルフも言葉を口にする。



「私にとってはほんの少しの時間です」



その言葉にノプスは救われる。



「そう言ってもらえて嬉しいよ。悪いがスピカを治癒師まで頼む」


「御意」



ノプスは眠るスピカを預け、アルデバランの城へと足を向け、首から下げる笛を吹く。

すると、遥か上空から赤色のドラゴンがノプスの目の前に舞い降りる。

ノプスはそのドラゴンに語りかけた。



「俺と一緒にこの罪を背負ってくれるか?」


「今更何言とるのじゃ。くせぇ言葉を言うんじゃない」


「ハハ……やっぱりお前は最高だよ。俺を連れてってくれ……未来の繋ぎ目へ」


「あぁ……任せろ。わしが届けてやる……必ずな……」


「頼む」



ノプスはドラゴンの背に乗り、城へと飛び去る。

それを見てミィナはノプスを直ぐに追う。



『いったい何が起きてるの? ノプスとは初代錬金術師だったはず……じゃぁスピカは? ……魔法師?』



しかし、急に黒い闇に包まれ、気づいた時にはプロンが目の前に居た。



「っ!?………プ、プロン様?! いったい今のは!?」


「デネブの名を継ぐ者が受け継いで来た過去の記憶の一部よ」


「この世界で錬金術師がしいたげられている原因は魔法師の罪を錬金術師が身代わりになったからですか!?」


「ええ。少なからず……そうね」


「魔法師が錬金術師に協力する理由はこれから来ているのですか?」


「そうよ。初代魔法師スピカ……彼女は未来が見えていたようなの」


「未来が?」


「ええ……しかし、それが魔法なのかは記述が無いわ」


「でもノプス様のおかげでこの国は平和になったと言う事ですよね?」


「いいえ……それは違うわ」


「ど、どういう事ですか?」


「まだながらえてるにしかすぎないの」


「終わってないと?」


「ええ……それに恐らく……今期来るかもしれないわ」


「な、何が来ると言うのですか?」


「……ヴァルプルギスの夜」


「それはいったいなんなのですか?」


「それに関しては誰も何もわからないのよ……調べ続けてはいるわ……ただわかる事といえば……初代2人は命を犠牲にしてまでそれを阻止そししようとしてた事よ」


「何で来ると……そう思うのですか?」


「……異例なのよ」


「異例?」


「ええ。ジムに、アンちゃん、そしてキリオ君……さらに同じ世代にアルデバラン国王の子、アルナ……ここまで強い世代は見たことがないし、聞いたこともないわ……時の流れがそうさせようとするそんな感じが伝わってくるーー」



プロンは蝋燭ろうそくを消し、帰る支度したくをしながら言葉を続ける。



「ーーそんな気がしてならないの。だから未来の為に…私達はその責任を背負わなければならないわ」


「…。」




ミィナは何か深い、とても深い闇を感じた。



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