「ミラク国アルフェラッツ遺跡」
「ミラク国アルフェラッツ遺跡」
ジムとキリオはシリスに言われた通り、道は避け、森の中を歩きアルフェラッツ遺跡へ向け旅路を進みながら会話をする。
「ジムは戦争とか怖くないの?」
「怖くないって言えば嘘になると思うけど、僕は戦争は必要だと思ってる」
「なんで?」
「戦争が世界を回しているからさ!」
「どう言う事?」
「僕達が居た世界でも戦争が経済を回し、人口を回し、生産される連鎖を調整しているからさ」
「どの世界でもそれは一緒ってこと?」
「一緒だね。この世界では鉱山だったり、食物、遺跡や出現するモンスターだって地域で違うし、王族や貴族はプライドの固まりから、蔑み、忌み嫌い、奴隷として扱い、殺し、虐殺してきた。その古き因縁がある以上戦争で決着をつけない限り平和を作れない……」
ジムは間を置いて続ける。
「戦争でしか平和に向かえないなら戦争して必ず平和にすれば良いと思う」
「なるほど……なんか考え方が違うから聞いてて面白いな」
「キリオは?」
「俺は出来れば戦争なんて無い方がいいと思ってる。話し合いで済むならその方がいい。でも……大切な物を奪われるなら容赦はしないって感じかな」
「キリオらしいね」
「そう?」
「守る為に戦ってるよね。僕は守る前に阻止する感じになるのかな」
「アンの事か? それも守ってるのと同じだよ」
「そうだと良いんだけど」
気付けば太陽は高く上り、お昼時を超えているのが伺えた。
「まだ距離があるな……」
地図を確認し、今のペースを考えてももう1日はかかりそうだった。
「とばすか?」
「そうなるね」
「だな」
2人は頷き合い、お互い魔力が送りやすい構えを取り、目を閉じ集中し、準備する。
「人体強化……」
「戒級強化!!」
その瞬間、二人の周りで圧縮された魔力が拡散した。
2人は身体能力を向上させ、そして走り出す。
進む余りの速さに横避けが困難の場所は跳躍し、飛び越えたり、木の枝を踏み台にしたり、2人は凄まじい速度で遺跡へと向かう。
「俺! こう言うのずっと昔から憧れてた!」
「わかる!」
「実は自分には特別な才能や力や異能力があってまだ目覚めてないだけって小さいながらに夢抱いたことあったな!」
「あ! それ僕も思ってた!」
「本当!? これ皆んな思ったことあるのかな!?」
「厨二病の子は思うんじゃない?」
「なら今この時! この瞬間! めっちゃ楽しくない?!」
「この世界に来た時から僕はずっと楽しいよ! もちろん今も!!」
「だよな!! ちなみにこの速さなら大丈夫かな?」
「この速さなら多分大丈夫だと思う! でも魔力温存を忘れちゃダメだよ!」
「俺とお前の魔力なら全然大丈夫でしょ!」
「確かに大丈夫だと思うけど、何か必要になるかも知れない! 貯蓄は大事でしょ? だから最小限の魔力で飛ばして!」
「オッケー!!」
ジムとキリオは休憩を挟みながら先を急いだ。
「キリオ!! 止まって!」
「どうした!?」
ジムはキリオを呼び止める。
「今……ミラク国の領土に入った……ここからは慎重に行こう」
「わかった」
ジムの真剣な表情に先程までの楽しい空気は一変し気を引き締め直す二人。
魔力の温存を考え、索敵に意識を集中し、遭遇したモンスターを回避し、動きを封じるなどして先を進む。
ジオウルフや、ミノタウルス、サラマンダーなど中級から上級モンスターとも遭遇した。
そして。
「キリオ……あれを見て」
ジムが指差す方向には協会のような古い作り、少し怖い印象のある遺跡があった。
キリオはそれ見て一層真剣になる。
「着いたんだな……」
「キリオ? 魔力は?」
「大丈夫。だいぶ回復した」
「よし……なら行こう……アンを助けに」
二人は遺跡へと足を踏み入れる。
キリオは警備が無い遺跡を見てシリスの言葉を思いだす。
「やっぱり戦争だから誰もいないんだな……これなら早く終わるんじゃないか?」
「うん……だといいよね」
そして、協会のような遺跡の中へ入り、ジムはあっさり地下へと進む階段を見つける。
「キリオこっち……」
「ジムよく見つけたな!?」
「うん。下調べしっかりしてきたしね」
「……そ、そうか……」
キリオは違和感を抱きながらもジムと進む。
その時、地下を降りた所で人の気配を感じた二人は急いで階段裏へと隠れた。
「一人も居ないってことは流石にないか……」
「そうだね……」
複数の足音と会話が徐々に聞こえ、キリオとジムは情報を得る為に耳を澄ませる。
「ナンバー178の状態はどうだ?」
「とても危険な状態です」
「もう、もたないか……廃棄のタイミングを間違えたようだ……」
「そうですね……かなり強い検体ですからね……戦争ではかなり活躍したことでしょう」
「ナンバー178のレシピを改良し、また錬成を試みてくれ」
「かしこまりました。獣魔術師と錬金術師の所へ向かい報告後に私は警備へと移ります」
その会話を聞いたジムとキリオは驚きの表情を隠せなかった。
「ジ、ジム……い、今の……き、聞いたか……?」
キリオは自分の耳を疑い、ジムに確認する。
「う、うん……獣魔術師……って言っていた……それに錬金術師……だって……?」
「……ここは遺跡じゃ無いのか?」
「……情報が少なすぎる……」
「ジム……こいつらが来た方向に行けば……何かわかるんじゃないの?」
「う、うん……行こう」
音を立てず二人は奥へ進む。
人の気配が無いのを確認し部屋へと入った時、目の前の光景に驚いた。
「こ、これ……なんだよ……」
そこにはフラスコが棚に敷居詰められ、この遺跡に来る途中で遭遇したモンスターなどの首や眼球、内蔵などが入っていた。
「実験のようだね。獣魔術師、錬金術師となれば……作っているのは混合獣か」
「混合獣って本当に作れるんだな……創作物の空想物だと思ってた」
「魔法も錬金術もある世界だし、あってもおかしくないよ」
「他国の錬金術師って……いったいどんな感じなんだろうな……」
「どういうこと?」
「ロキさんが言っていた。プロキオン国では錬金術師の虐げは格段になくなって来ていると……」
「どうなんだろう……強制的か、それとも好意的にやっているか……でもどちらにしろキリオの様な戦闘錬金術師では無いだろうね」
「そうだよな……ここに並んでいるのが人間のじゃないだけまだましか……」
「それは間違いないね……でも……ここに無いだけでもしかしたら……」
「あるって言いたいのかよ……」
「奴隷制度がある世界なんだ。あってもおかしくない話ってこと」
「考えたくねぇな……」
「それと、さっきアイツらが言ってた廃棄って戦争に送ったって事なんじゃ……」
「それって……ミラク国の兵士は人間じゃなく……キメラって事か?」
「そうなるね……」
「有象無象の兵士か……」
「行こうキリオ……僕たちの目的は鏡だろ」
「そうだな……」
キリオ、ジムはその部屋を出て捜索を続けた。
ここまで読んで頂き、本当に嬉しく思います!
ささいな感想やレビューでもとてもはげみになります!!
それと、もし良かったら厳しい評価でもかまいません!
今後成長していく為にも必要なので是非よろしくお願いします!
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