「宴会」
「宴会」
「お前ら! よく頑張ってくれた! 見事3人とも10位以内に入れた事を嬉しく思うぞ!!」
大会も終わり、キリオの状態も安定し、街に出て宴会をする事となった。
そして、シリスがグラス一杯のエールビールを片手に言う。
「乾杯!!」
プロンの行きつけの個室で全員が集まり、夕食を頂きながらジムはプロンに聞く。
「今後の動きはどのようにしていくのですか?」
その話に全員が耳を傾ける。
「恐らく7刻度期に動くのではないかしら」
『 7刻度期? 今が日本で言う5月の終わりだから後1ヶ月後、7月か……』
「 やはりもうすぐなのですね」
「もうじき戦略会議が始まるわ。その内容に合わせてこちらの作戦を考える予定ね」
「わかりました」
「それで? あなた達は今は何を頑張っているのかしら?」
「今は連携の訓練をしております」
「成果はいかがなの?」
「それが……」
その時、ジムとプロンが会話する目の前でキリオが叫ぶ。
「おい! アン! それ俺の肉!!」
「私が食べたいって思うまで肉を放置しておくのが悪い」
「いや! お前さっきその肉もう食ってただろぉがよ!? 何個めだ!?」
「5個」
「食い過ぎじゃねぇかよ! 俺一個も食えてねぇぞ!!」
「だからキリオがいけないと言っている」
騒ぐキリオとアンカーを目の前にジムは苦笑いでプロンに言う。
「こんな感じです……」
「あらあら。いいコンビネーションじゃないかしら」
「え? どこがですか?」
「このやり取りが意外と大事なのよ」
「そうなんですか? あ! それよりもキリオを抑え込んだ聖級魔法あれはなんですか?」
「あぁ……檻の事ね?」
「檻?」
「ええ……倒せない敵など、捕獲として初代が開発したものよ」
「どういうことですか?」
「ワープゲートみたいな物ね」
「可能なのですか!?」
「無理よ」
「は!? プロンさんでもわからないと?」
「ええ……そもそも隔絶空間は常にそこに有り続けているわ。しかし、なぜ常にあり続けられるのか、何故消えないのか、何処から魔力を得ているのか、何もわからないのよ」
「確かに言われてみれば……そうですよね?」
「そろそろあなたにも使い方を教えるわ」
「え? 本当ですか!? 是非お願いします!」
「ちなみにシリスのアイアンメイデンも初代の文献じゃなかったかしら?」
プロンはシリスに聞く。
「んぁ? そうだけど?」
口に肉の骨を残し、両手に肉を持つシリスはそう答え、肉の数にキリオが激怒する。
「あ! シリス!! てめぇ! 肉何個めだよ!?」
「うるせぇなぁ! うんなちっちぇこと覚えてるわけねぇだろ! だからキリオは逸物もちっちぇんだよ!」
「俺の逸物なんか知らねぇくせにサラッと下ネタぶっ込んでくんじゃねぇよ!! 今は肉の話してんだぁ!」
ジムはアイアンメイデンを思い出し、疑問に思った。
『アイアンメイデンの造形……この世界のじゃないよな?』
その時、キリオが焦ってジムに言う。
「おい! ジム! 早く食べないとシリスとアンに肉を全部食われるぞ!!」
「それはダメ! 僕も欲しい!!」
そして、食卓はひと段落し、シリスが爪楊枝を咥えながら話をする。
「お前たち今は……連携の特訓してんだっけ?」
その問いにキリオが答える。
「まぁね……でも話で聞いた冬のトライアングルみたいな連携技はまだ無いんだよな」
「なら、私のアイアンメイデン取り敢えず覚えてみるか?」
「え? いいの?」
「そろそろ教えようとは思ってたんだ」
「まじで? やった!」
「恐らく……次の戦争で必要だと思う」
シリスの最後の言葉はどこか真剣だった。
「え? それどういう意味だよ」
「いや……まだ不確定要素が多いからな。明確になったら教えるよ」
「わ、わかった」
その横でペテルもアンカーに言う。
「アンも治癒魔術の方を強化しましょうね。教えておかなければならないことがたくさんありますのよ」
「うん! 教えてほしい!」
その時だった。
「あ! 居た!」
大きい声が聞こえ振り返ればそこにプロキオン国のゼド、フロウ、ロキが居た。
「ゼド!? それにフロウさんにロキさん!? なんでここに!?」
キリオの問いにロキが透き通る声で答える。
「君が宴をしていると聞き少し挨拶をね」
「お、お越しいただき……あ、ありがとうございます」
『 貴賓に溢れすぎだろぉ……貴族に一目惚れする気持ちってこんなんなんかな? 女子の気持ちが少しわかった気がする……』
「そんなにかしこまらないでおくれよ。ゼドの件で気負いしているかと心配していたんだ」
「その件は……本当にすいませんでした」
その会話にゼドが割って入る。
「ロキさん! その辺にしてくれよ! 俺の友人なんだから!」
「それはすまなかった」
「い、いえ……気にしないでください」
そして、ゼドが改めて言う。
「キリオ! 飲み直そうぜ!」
「おう!」
プロキオン国の3人を混ぜて飲み直しが始まった。
「ロキ坊……どうだ? 今夜、あたしと一夜を過ごすのとか!」
シリスが酔った勢いでロキを誘っていた。
「いえ……私はそういうのは……」
それを目撃したキリオは激怒する。
「おい! シリス! やめろ!! 錬金術師の評判をこれ以上悪くするなぁ!!」
その会話にゼドが入る。
「しかし、キリオの師匠は別嬪さんだよなぁ!」
「マジで言ってる?」
「まじまじ! 俺超タイプ!」
ゼドの褒め言葉にシリスは喜んだ。
「おお! ゼド坊わかってんじゃねぇかぁ! 今日お前があたしの部屋へ来い!」
「いや……ロキさんを差し置いて俺はいけないですよ」
「チッ……真面目だな」
卑猥な話で盛り上がる中、フロウはジムに聞く。
「ジム殿」
「はい?」
「何故試合を棄権されたのですか?」
「あぁ……目的があったからです」
「目的?」
「ええ……トップ10位に入ることです」
「何か訳が?」
「ご存じの通り、10以内に入れば今回の戦争の選抜チームに入れてもらえるからです」
「ジム様は争いを好む方ですか?」
「いえ……好みません」
「では何故?」
「助けたい子かいるんです」
「アルフェラッツにですか?」
「いえ……この国の子です」
「なるほど……守る事は素晴らしいことですな。しかし……」
「しかし?」
「出来る事ならジム殿と手合わせしてみたかったですな」
「それは申し訳ございませんでした」
「ジム殿の1回戦、2回戦共に拝見いたしました」
「どうでしたか?」
「あれほどのウィザードはプロキオンにはいません」
「お褒めの言葉恐縮です」
「是が非で次はお手合わせをお願いできますかな?」
「その機会があれば是非」
沈黙を置いてフロウが何かに気づいた。
「ん?」
「どうかされました?」
「いえ……ちょっとお花を摘みに行って参ります」
「あ、はい……」
『その比喩この世界でもあるんだ……』
フロウは席を立ち部屋を出て行く。
「僕もトイレ行ってこようかな」
ジムもそこそこ膀胱が溜まっていた為にフロウの後を追うような形になってしまう。
ジムは部屋を抜け、トイレの方へと歩こうとした時にフロウがトイレとは逆に行くのが見えた。
「あれ? お花を摘みにって実はトイレじゃないのかな?」
ジムは気になりフロウの後を追うことにした。
「……無音乃脚」
『 これで足音を消し、気付かれずついていける』
ジムは足に風を纏わせ、地面との接地面を無くして尾行を開始した。
フロウはそのまま外へと向かい店と店の間の暗い路地へと入って行く。
『もしかして……この世界のお花摘みは吐くこと?』
ジムは気づかれずにフロウを追い、路地へと向かう。
空き箱やゴミなどとても綺麗とは言えない路地。
その奥でフロウは曲り角を進み、ジムはその手前でフロウの会話が聞こえた為、止まる。
『……誰かと話してる?』
「ええ……はい……わかりました」
『暗くて良く見えないなぁ……誰も居ない気もするけど……でもなんか……この違和感の雰囲気はどっかで記憶があるような……』
そして、突然出たフロウからの言葉にジムは驚いた。
「はい……殺せばいいのですね?」
『は!?』
ここまで読んで頂き、本当に嬉しく思います!
ささいな感想やレビューでもとてもはげみになります!!
それと、もし良かったら厳しい評価でもかまいません!
今後成長していく為にも必要なので是非よろしくお願いします!
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