「始まったトーナメント」
「始まったトーナメント」
アルデバランが誇る巨大闘技場、アルデバランコロシアム。
国と国の試合の為、アルデバラン国は祭りのような大盛り上がりを見せる。
そして、そこにはアルデバランとプロキオンから、名のある騎士団や、一般人にも開放され、生徒達や、転職を考える冒険者などはこのトーナメントに活躍する事により、騎士団からのオファーをもらえ、就職先に影響する大事なトーナメントだった。
その為、参加者はこの日に向けて修練を積み、この機会に懸けている者もとても多かった。
トーナメントの内容は一対一で戦い、制限時間は60分。
レフェリーが戦闘不能と判断した場合試合終了とし、降参や、場外が認められていた。
そして始まったトーナメント1戦目。
プロキオン国の魔法師で有名の「キース・タジク」が勝ち上がり、1回戦突破を果たす。
4回戦では、アルデバラン模擬戦2位の剣士「エル・アルデバラン」が1回戦突破。
さらに5回戦では守護士「ウェン・アスピディス」が1回戦突破を果たした。
そして、7戦目。
「7戦目!! 冒険者ガダイ・モーガン対、錬金術師キリオ・アルタイル!!」
レフェリーからの合図が目に入る。
「……緊張してきた……部活の試合前みたいだな……」
キリオは覚悟を決め、光芒が差し込む選手登場口へと足を進める。
「……ジムの為に……アンの為に……俺は負けられない」
そして、キリオは登場口を抜けた。
大勢の歓声と罵声が聞こえ、観客席で観戦していた印象との余りの違いにキリオは驚き、緊張が増し、自分の心臓の鼓動が速くなることを感じる。
しかし、その緊張を押し殺してキリオはフィールドへ上がる。
それと同時に向かいからガダイが現れ、二人はレフェリーが待つ中央へと進む。
その時ガダイが、キリオに話しかける。
「クソ錬金術師!! この勝負! 俺がもらう!」
「うん……俺も負ける気はさらさらない!」
『……ガダイは俺のスピードにはついてこれないはず……まずはスピードでフェイントを入れ……て……って……あれ? 予選の時ガダイはなんでアインの速さの剣を受け止められてんだ?』
その時、審判が間に入る。
「二人とも準備はいいか? 制限時間60分、場外、降参あり、戦闘不能と私が判断したら試合終了……よいな?」
二人は頷き、そして距離を取り構える。
ガダイは大剣を肩に担ぎ、腰を低くし、キリオに鋭い眼光を飛ばす。
それに対してキリオは脱力したように手には力を入れず、腰は低くし、いつでも錬成出来る体制を取る。
そして、レフェリーの合図を待ち、沈黙がつづいた。
「……始めっ!!!!」
レフェリーからの合図の瞬間だった。
ガダイはキリオに向かって突進し、大剣を振り上げる。
『っ!? ガダイにしては速い!?』
キリオは反射的に後方へ回避し、ガダイの大剣は空を斬った。
しかし、ガダイはそのまま地面に大剣を力一杯に振り下ろしたと同時に地面が爆発する。
『なに!? 爆発!?』
ただの大剣でこれほどの爆発は起きることはない。
キリオは大剣に何か仕掛けがあることを理解したがしかし、爆発で飛び散った破片が凄まじいスピードで後方へ逃げたキリオを襲う。
『避けられない!? 壁を……いや! 壁を作っても爆発で破壊される!? いや! 違う! 壁でいいんだ!!』
「錬成!!」
瞬時にキリオは破片と自分の間に壁を錬成し、破片を防御する。
「俺に壁はきかねぇよ!! この爆発でぶち壊すからなぁ!!」
ガダイはキリオの錬成した壁に向かってまた大剣を力一杯に振り抜く。
「ざまぁねぇな!! 自分の防御ように作った壁が攻撃に使われるとわよぉ!!」
そして、ガダイは壁を爆発で破壊し、さらに突進しようとした時だった。
「鋏剣錬成!!!!」
キリオが鋏剣を錬成し、待ち構えていた。
「馬鹿がぁ! 剣で受け止めたらお前も爆発するぞぉ!それでもいいなら受け止めてみなぁ!!!」
ガダイはキリオに剣を振り下ろす。
その瞬間、金属と金属が対峙する甲高い音が辺りを染めた。
「爆発しないってわかってるから大丈夫!」
キリオはガダイの剣を鋏剣で受け止めてそう言った。
「へ! バレたか!」
力の押し合いでギリギリと音が鳴り響く中、二人は会話をする。
「どうせ剣の中に火薬か何かの仕掛けなのはすぐにわかった……そして、こんな至近距離で爆発を起こさないこともな!」
「正解だ! これは大きい獲物の首や足を吹き飛ばす時に使う俺の剣だぁ! これでお前の壁は意味をなさない!」
「なら! 速さで撹乱する!!」
キリオはガダイの剣を受け流し、後方へと飛び、着地と同時に凄まじいスピードで移動する。
『ちっ……これが厄介なんだよなぁ……他のだいたいの参加者は武装魔法で身体能力を上げてんのに錬金術師はノーマルでこの速さを出してやがる。なんて奴なんだよ……今更だが本当に錬金術師なのか? だが……手がないわけじゃない』
キリオはフェィントを入れ、さらに壁を錬成し、ガダイを撹乱させ、死角を作る。
『ここだ!!』
隙を見つけ、キリオは力一杯に斬り込む。
しかし、ガダイの死角だったにも関わらず、キリオの剣は受け止められた。
「なに!?」
「野生乃感……」
ガダイはすぐに反撃に出る。
キリオは体勢が整わず、防戦を強いられた。
『くそ!? 死角だぞ!? なぜ止められた!?』
「お前は今! なぜ剣を止められたって思ってるな?」
「……!? くそ!」
キリオは防戦だったのをなんとか整え、また力の鬩ぎ合いへと持ち込んだ。
「俺にはクエストで身についたスキル、「ストリートフィーリング」があるんだよ!」
「ス、スキルだと!?」
キリオは想定していなかった事の連続で驚きを隠せなかった。
ここまで読んでくださいり本当に感謝の気持ちでいっぱいです!
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