「トーナメント表」
「トーナメント表」
朝方にトーナメント表が張り出され、参加者がそれを確認しにトーナメント表の前に群がっていた。
その中で、キリオは自分の名前を確認する。
「えっと……俺の名前は……」
左がAブロック、右がBブロック。
Aブロックの左1番上から1戦目と始まり、キリオは7戦目に自分の名前を見つける。
「あった! 7番目か……対戦相手は……「ガダイ・モーダン」……って人か……いったいどんな人なんだろう?」
その時、キリオは唐突に後ろから肩をどつかれ、転びそうになる。
「邪魔だ……クソ錬金術師」
キリオは謝りながら後ろを振り返った。
「……あ、すいません……って……あんたは予選の」
「また会ったな錬金術師……お前の1回戦目はこの俺だ!」
そこには予選の時の参加者、冒険者のガダイがいた。
「え? あ! それはすいません……」
『やべ……聞かれてたか……』
「予選の時、俺がテメェになんて言ったか覚えてっか?」
「……え? 見事だっただっけ?」
「そこじゃねぇ!! もっと前だよ!!」
「ちゃんと仕事をする奴は必ず評価する!」
「そこでもねぇ!! つか! そこまで覚えてんなら名前覚えてろやぁ!!」
「だはは……申し訳ない」
「俺は次会ったら殺すって言ったよなぁ!?」
「あ! 会ったらじゃなくて見かけたらって言ってたよ!」
「しっかり覚えてんじゃねぇかよ!! ちっ…調子狂うなぁ……」
「でも……俺、負ける気ないから……」
「……あ?」
その言葉と共にガダイはキリオの瞳の奥に本気を感じた。
「フ……お前の力は予選で見せてもらった……錬金術師のくせになかなかの奴ってことは認めてる。だからこそ油断もしねぇ……なら俺が負けることはありえねぇ」
「悔いの無いようお互い頑張ろう」
「たりめぇだ! じゃぁな……クソ錬金術師」
ガダイはそう言ってキリオに背を向ける。
「一回戦目はガダイか……もし勝ったら次の相手は……」
その時、キリオは8戦目の名前を見て口角が上がる。
「……ゼド……」
そこには昨日会ったプロキオン国のゼドの名前が合った。
「運命は残酷な事をするな……」
「そうか? 俺は嬉しいけど?」
突然かけられた言葉にキリオは驚き、振り返ればゼドが立っていた。
「ゼ、ゼド?! いつから?」
「今!」
「びっくりするじゃねぇかよ!」
「キリオは仲良しごっこを求めているのか?」
ゼドのその言葉にキリオは一度、戸惑いながらも、ゼドの表情から対戦する喜びが伝わり、少し笑って答える。
「……違うな……勝負の中での仲良しを求めてる。正直……ゼドと戦えるのは俺も嬉しい」
「そっか! じゃ、なんでいま残酷っていったの?」
「俺、友達の為にも負けられないからさ。お互い負けられない中で戦うと思うとね……」
「それが勝負だろ?」
「そうだな……」
「俺、キリオに容赦はしないから」
「俺も」
2人は顔を合わせて笑い合う。
「一回戦勝って俺んとこまで来いよ!」
「わかった」
「じゃなぁ!」
キリオはゼドの背中を見送り、またトーナメント表に目を通す。
「……3回戦目は……え? ……ぇえ!?」
キリオはもし3回戦目まで上がった場合の参加者の名前を見て驚いた。
そこには模擬戦で戦った守護士のウェン・アスピディスの名前があった。
「よりにもよって……う、ウェンかよ……」
キリオは想像しただけで恐ろしさを感じた。
模擬戦で貴族プライドが高いウェンが底辺の錬金術師に敗北し、そして、今回もトーナメントで当たると言う悲劇。
「………はらわた煮えくり変えるぐらい怒ってんだろうなぁ……怖……」
しかしその時、後ろから声がかかる。
「キリオ!」
「わぁっ!?」
タイミングの悪さにキリオは驚き、振り返ればそこにはジムがいた。
「なに? どしたの?」
「ジムか……まじでこの流れビビったわ……」
「何かあった?」
「これ見て」
キリオはウェン・アスピディスの名前に指を刺す。
「うわ! 3戦目で当たるじゃん!! 対戦相手も聞いたことない人だからウェンは確実に上がってくるよ!?」
「まじかよ……どうしよう……」
「キリオこれは……運が悪過ぎるよ」
「……はぁ……本当に運命は残酷な事をするよな……」
「……いや! 待って! 考えがある!」
「なに!? なになになに!? 教えて!」
ジムはキリオに耳打ちをし、作戦を伝える。
そして、プロキオン国とアルデバラン国のトーナメントが始まろうとしていた。