「呪いの真実」
「呪いの真実」
同日。
キリオはシリスに呼ばれていた為、シリスが1人でいる教員室の扉をノックした。
「入れ」
キリオはシリスの許可をもらい扉を開ける。
「用があるならシリスから来いよな……って……」
キリオは部屋にシリスだけではなかった事に気付く。
「……なんでペテルさんがここにいるんだ?」
そこには上座のソファーに座るシリスと横にあるソファーに座るペテル・ベガがいた。
「先日は吹っ飛ばしてしまいすいませんでしたね……改めてペテル・ベガと申します」
「あ……いえ……」
「キリオ座れ」
そう言葉を口にしたシリスの真剣な表情を見てキリオは察し、黙ってペテルの向かいにあるソファーへと腰掛ける。
準備が整った事を確認してシリスがキリオに口を開いた。
「呪いについて調べてるらしいな」
「……聞けば詳しく教えてくれるのか?」
「なるほど……そう来たか」
「シリスとプロンさんが知らないわけはないと思ってたよ……ただ、物事を理解するのには材料が必要だったからな」
「ジムも動いてるのか?」
「むしろジムが本気だ」
「そうか……」
「俺はその呪いについて詳しくは知らない。教えてくれいったいなんなんだ?」
「それは……」
シリスが口を開いた所でペテルが遮る。
「シリス……それは私から話します」
「……わかった頼む」
ペテルは頷き、そして話始めた。
「 私が治癒師になった前からこの呪いはずっと存在していたのです。先代もその先々代でも……」
ペテルは徐に立ち上がり近くの本棚へと歩きながら話を続ける。
「 話によると当時の初代五大選使達は毎日のように戦争に駆り出されていましたわ。それは今よりも激戦の時代だった……アルデバラン国を勝利に導く為に虐殺などもあったと聞いています」
書物を一つ取りテーブルに広げ地図を見せて説明する。
「 その頃の西の国ミラクでの戦争の時と伺っています。初代治癒師は名のある黒魔術師と闘い、激しい戦闘を繰り広げていましたわ」
「……。」
「 ミラクからしてみれば虐殺をしていたアルデバラン国民が許せなかった。それは怨み、憎しみ、憎悪の闘いだったそうですよ」
「……それで?」
「 その戦いの末に初代治癒師は呪いにかけられた……「悪しき者を行く末まで呪いの死を与えん」……それが黒魔術師の最後の言葉だったと聞いています。その話から呪いの種類は怨念だと考えていました……死を使った死の呪い……」
「は!? ちょっと待てよ! 怨念の呪い!? てことはアンカー・ベガは死ぬのか!?」
「……ええ……その通りですよ」
「でもペテルさんは生きてるじゃないか!」
「 そう……私は生きている。歴代の治癒師がこの呪いを解除しようと研究を続けてきた。その結果、呪いを弟子に移し続ける事で生きていける事が出来る様になったのです」
「……は? そ、それってつまり……今まで師匠の代わりに弟子が死んでいったってことかよ!?」
「ええ……そうですわ」
「……今回はそれがアンカー・ベガだってことかよ」
「その通りですわ」
「……な、なんだよそれ」
真実を聞いてキリオは理不尽から拳を強く握った。、
「そして、怨念は死を代償に終わるはずの物でした……しかし、今までの治癒師が亡くなったにも関わらず、呪いは行く末にも渡って続いていますの」
「……じゃぁ他の解除法は!?」
「……まだ見つかっていませんの」
「プロンさんとシリスが手伝っててもわからないのか……」
「しかしですが……可能性ならありますの」
「その可能性とは?」
「西国にあるアルフェラッツ都市の遺跡に原因があるようなのです」
「ならなんですぐに行かないんだ? シリスもプロンさんもいれば不可能ではないんだろ?」
そこでシリスが割って入ってきた。
「国境を超えると西国と戦争になるからだ。今ですら、何時戦争が起きてもおかしくない状態なんだ」
「……戦争……そういうことか……」
そして、ペテルが話をすすめる。
「それにもし、西国にあるアルフェラッツの遺跡を攻略し、私の呪いが解除されたとしても五大選使の均衡が崩れてしまいますわ」
「それはいったいどういうことだ?」
「あなたは私とぶつかった時、押し負けた事に驚きませんでしたか?」
「うん……驚いた」
「それが呪いの力なのですよ……寿命を代償に呪いを力へと変換しているのです」
「……となると……言いたい事はこうか? もし呪いを解除しにミラクに攻め込んで呪いを解除したとしても戦争になった時、五大選使であるペテルさんが機能することが出来ない。そう言う事か?」
「それもありますね」
「ミラクの兵力とアルデバランの兵力はどうなんだ?」
シリスが答える。
「……優しく見積もって五分かうちが上だな」
「って事はペテルさんが戦力外になった場合は?」
「かなり厳しい状況になりそうだな」
「そう言うことか……」
「あぁ……遺跡ですら確実な物なのか定かじゃない。だから今まで他の方法はないかと探し続けていた」
「……踏み切る事にしたのか?」
「その通りだ。だからこそお前をここへ呼んだ」
「なるほど……で? 俺は何をすればいい?」
「実は今度開催される他学園との大会でトップ10には入ってもらいたい」
「は? 今、大会関係なくね?」
「それが関係あるんだよ! 次の大会で上位成績をおさめた者はそのミラクとの戦争で駆り出される事になった」
「まじかよ」
「だからキリオ、ジム、アンカーは必ず入ってもらわなければならい」
「いいのかよ……勝ちに行っても?」
「構わん……今は私達の仲間が欲しい」
「言ったな? どうなっても知らないぞ?」
「随分強気だな? お前にしては珍しい! だがしかし! 一位を狙う必要はない! 上位10位以内に入れさえすればそれでいい」
「わかった」
「頼むぞ」