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錬金術使いの異世界美容師  作者: 伽藍 瑠為
2章「過去編」
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「負けさせない者」

「負けさせない者」









「両者! 前へ!!」


キリオとウェンは闘技場で向き合うなか、ウェンがキリオに挑発を入れる。



「まさかお前が相手だとはな! 丁度いい機会だ! ここで俺様がお前をボコボコにしてやるよ!」


「……いえ……ご、ご勘弁を……」

『やだ……やりたくない……』




そして、審判員から号令がかかる。



「始めっ!!」



その瞬間に、キリオはウェンとは逆向きに走り始めた。



「逃げるが勝ち!!」


「逃がすかよ! われまもる。しゅたる根源こんげんいたりし拝頂はいちょうし、そして、今ここに我の名を持って戒現かいげんせよ!……監獄プリズン!!」



ウェンが詠唱を唱えた瞬間に正方形の闘技場の側面からライトエフェクトの様な壁が全方位に張り巡らされた。



「な!? なんだこれ?!」



もう少しで場外できる所でキリオは壁にはばまれ場外になることができなくなった。



「俺様が貴様を逃すわけがないだろぉ!?」



ウェンは盾をキリオに向け構え、剣を抜き、走ってきた。



『くそ! 場外できないならどう負けろって言うんだよ!? 後は全部痛い方法のしか残ってないじゃんかよ!』



キリオは左腕を右手に添えた。



『シリスに教えてもらった錬金術……俺のトリガーは右手に創造物のイメージを作り、左手で右手を掴むことによって円を作って体に張り巡らされた錬成陣のプログラムを使い、錬金術を使用する……』




キリオの皮膚に錬成陣が浮かび、右手を地面に叩きつけた。

その瞬間キリオとウェンの間で地面から何枚もの壁が錬成された。



「な、なんだと!?」



ウェンはキリオの所業に驚いた。



「……錬成陣無しに壁を作った!? だがっ!! こんな物! 俺に効くと思ってんのかよ!!」



会場でも錬成陣を使わずに壁を錬成をしたキリオに驚きの声があがる。

そして、盾を構えたままウェンは壁に構わず突っ込み、壁をいと容易たやすく破壊して進む。



「くそ……めちゃめちゃ硬いじゃねぇかよ」

守護士ガーディアンの名だけあるって事か……』



そして、ウェンがキリオを捕らえ、剣を振り上げた。



『取り敢えず! 避ける!!』



見事キリオはウェンの剣を横に避け、更にそのまま後方へと飛んで距離をとる。



「逃げ足だけは速い様だな!! ……ん!?」



その時、キリオを追いかけようとしたウェンは、キリオの作った壁の半壊して残った突起物に足を取られた。

そのまま勢い良く、自分の作ったフィールド側面のプリズンに突っ込み、凄まじい音を奏でて顔面を打ちつける。



「いっててて……」



その瞬間、会場に少しだけ笑いがおき、ウェンは苛立ちから叫ぶ。



「おい! 今笑った奴降りてこい!! 俺がぶっ殺しやる!!」



会場はまた静かに戻る。



「……くそ……おい!! この錬金術師くずがぁ! 良くもこの俺に恥をかかせてくれたなぁ!!」



ウェンは余りの怒りに頭に血が登り、キリオを激声をあげる。




「いや……何もしてないんだけど……」

『勝負に負けようとする事がこんなに難しいなんてな……お前が負けさせてくれれば恥かかずに済んだのに……くそ……どう負ければいいんだよ……』


「これで終わらせてやる!!」



ウェンは力一杯に詠唱をする。



われまもる!! しゅたる根源こんげんいたりし拝頂はいちょうし!! そして、今ここに我!! ウェン・アスピディスの名を持って!! 俺を護れ!……絶対領域プライベート・リジョン!!」



自分を中心に光りが発光し、半径4メートルでバリアを展開てんかいした。



『自分に防壁を張った? 何をする気なんだ?』



そして、ウェンはまたキリオに向かって走り出す。



「お前に逃げ場なんかねぇぞ!! この錬金術師クズがぁ!!」


『そうかぁ! 後ろにはもうバリアがある! そして、更にバリアを張った状態でウェンがこっちに来るってことは押し潰す気かぁ!? どうする!? 上空に……いや! まとになるだけだ! 単純に横に回避して4メートルの幅を避けるしか……』




その時だった。



「シールド展開てんかい!!」



ウェンがそう叫んだ時、ウェンを中心に張られていたバリアは更に広がり、キリオの逃げる隙を無くした。




「くそ!? 逃げ場がなくなった!!」

『そんなのありかよ!?』


「終わりだ! 錬金術師!!」




凄まじいスピードで迫るウェン、そして、逃げ場を失ったキリオ。



『……くそ……もう上空に飛ぶしか………』



しかし、キリオは気づいた。



『いや! ある!!』



キリオは錬金術を力一杯に発動し地面に手をつけた。



「ここだぁ!!!!」



その時、キリオの錬成光が瞬き、ウェンは眩しさでキリオを見失う。



「な!? なに!?」



気づけばキリオは何処にも居ない。

目の前には自身が展開した側面のバリアだけ。

ウェンは止まる事が出来ず、突撃する。

自分がまとうバリアとフィールドに張ったバリアの相対する力の衝突により反応、そして、大爆発をおこした。



「くそ……いててて……は?……なんだよこれ……」



ウェンが気づけばその爆発で自分がフィールドの場外にいた事に気づいた。


「………」


それを見て会場が静まり返る。



「なんか……凄い音したけど……え?……」



キリオは地面に錬金術を使い、簡易的なシェルターを作り、逃げ込んでいた。

そして、爆発音を聞いて外に出てみればウェンが場外に居るのに気づき、唖然とする。



「……しょ、勝者……れ、錬金術師キリオ……」



審判もどうすることも出来ず、キリオの勝利を宣言せざる終えなかった。



「……はぁ!? え!?……やっべ……これ……やっちまった……」



審判の言葉を聞き、キリオは絶望する。



「く……くそがぁ!!!!!」



ウェンは余りの醜態しゅうたいにそのまま会場を背に消えていった。



「俺もずらかろうっと……」



キリオが消えようとした時、審判が止める。



「待ちなさい! 錬金術師ならフィールドを元に戻しなさい! 今、他の錬金術師もここへ………」


「あ! はいはい! 今直します!!」



キリオは今すぐにでもその場から立ち去りたい余りに審判の話をちゃんと聞かず、錬金術を使用し、一人でフィールド全てを一瞬で直してしまった。



「これでいいですよね? では失礼します」


「あ……あぁ……ご、ご苦労……」

『な、なんてことだ……この規模をたったの一人で錬成しただと!? 最低でも五人は必要なこの規模を一人で……コイツはとんでもない魔力量なのではないのか!? い、いや……そんなわけがあるまい……いや……あってはならない……な、何か仕掛けがあるのかもしれん……』




審判員同様、会場でも数人がそれに気づいていた。




「アルナ……今のを見たか?」


「……。」



エル・アルデバランはアルナ・アルデバランに話しかけるが、アルナは何も答えない。

しかし。



「なるほど……お前もそう思うか。あれはとんでもないことだぞ……錬成陣無しに、更にはあの魔力量……」



会話が成立する。



「……。」


「やはり、アルナの目にも止まるか……」


「……。」


「あぁ……おそらくこのままいけば管理者側は俺たちのどちらかを当ててくるだろう。その時は錬金術師やつの力が測れるかもしれん」


「……。」


「なに!? アルナ!? 楽しみだと言うのか!?」


「……。」


「ふふ……そうか、お前が楽しそうな所を俺は久しぶりに見たぞ」


「……。」






そして、キリオはそんな事も知らずにジムの所へと向かった。




「どうしよう〜ジム〜」


「どうしよう〜○ラエモンみたいなノリで来ないでよ。僕は猫型ロボットじゃない」


「なぁ?! どう見ても勝利あれは不可抗力だろぉ!?」


「問題は結果だよ」




その時、ウィルがキリオの所に走ってきた。




「キリオ!?」


「どうした? ウィル? そんなに慌てて」


「凄いよ!? 何したの!? ウェン・アスピディスに勝っちゃうなんて!?」


「あぁ……勝つ予定じゃなかったんだけど……」


「そんなことより色々と何!? 錬金術の法則を色々違うみたいだけど何したの!? それに最後の何!? 何したの!?」


「なにってシェルターのこと?」


「違うよ!! 錬成陣も無しに壁を出したのもそうだし! やばいのは一人でフィールド直した事だよ!!」


「え? 錬金術師ならみんなできるでしょ?」


「出来ないよ!!」




ウィルのその言葉にキリオは固まった。




「……え?……そなの?……」


「錬金術師の地形変形は10人以上必要なんだ! あのフィールドなら最低でも4から5人は必要なんだよ!? それを一人で何でできたの!?」


「どうしよう〜ジム〜」


「しょうがないなぁ〜○びた君は」




ジムは少し考えてウィルに話した。




「ウィル? 実はキリオは魔力量だけなら僕より上なんだ」


「え!? Aクラスの魔力量が無いと慣れない魔法師の上!? でもジム様はSクラスの噂……キリオはその上!?」


「そうなんだ! でもこれは内緒だよ? 魔法国師プロン・デネブの研究対象にもなるから噂が漏れるようにね? もし、噂が漏れたら何されるかわからないからね?」


「う、うん!わ、わかった!」


「そんなことより……ジム……知恵を貸して……」



キリオは次にどう負けるかを一生懸命考えていた。



「相手が僕ならいいんだけどね……他の生徒ならまた壁作ればなんとかなるんじゃないかな?」


「じゃぁもし、エルやアルナだったら?」


「それなら大丈夫! 1回戦でも錬金術師と当たって見逃してたから! あの二人はくだらないことには無関心なんだよ! 逆に大当たりなんじゃないかな?」


「本当!? ならよかったぁ!」


「問題は中途半端に強い奴だね」



その後、数ある試験は続き、ようやくキリオの名前が呼ばれた。






「錬金術師キリオ・アルタイル!! 対するは! アルナ・アルデバラン!!!」




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