ロボットに感情を
ロボットの液晶画面から、子ども達の映像が全部消えていた。静寂な研究所の窓からは、綺麗な朝日が差し込んでいる。博士は短いため息を付きながら、床に寝そべっていた。だが博士の口元は、自然な笑みをたたえている。今はとても、清々しい気持ちだった。
こんなに感情を曝け出したのはいつ以来だろうか。ずっと、研究所に籠りっぱなしで、一人だったから。映像ごしからとはいえ、人と関わることが、こうも楽しいものだとはな……、ふっ、俺らしくもない。
博士はゆっくりと起き上がり、倒れているロボット達を見て自嘲気味に笑った。
「はははっ、お前も俺みたいに、怒ったり、泣いたり、笑ったりと、楽しめたらさ、煙を吹いて壊れることなんて無かったのかもな。ははははっ」
倒れているロボット達にそう語り掛けた後、博士はハッとした。
「ロボットが……、俺みたいに? ……、そうだ、そうだよ、そうすれば……、壊れることはないんだ。でもどうやって感情表現を……、はっ⁉ そ、そうだ! 確か日本という国で面白いものがあった。あれを利用すれば!!」
博士は急いで立ち上がり、パソコンに向かった。ハードディスクに保存されているあらゆる知識のなかに、それはあった。
「こ、これだ!! よし、あとは、園児達の感情表現の言葉を真似して、教育ロボットにインプットさせれば!!」
博士が一台のロボットにパソコンの回線をつなぐ。慌ただしいキーボードのタイピング音が研究所に鳴り響いた。
『園児達のための豊かな教育を課題とする』
もう、そんな事知るか。俺の教育ロボット実用化も、もうどうでもいい。あの子達が、あっと驚く様なものを、見せてやる!!
博士の表情はとても嬉しそうな笑顔だった。