はるごころ
ゆきどけのころのことでした。
わたしと青はいつも一緒で、それを疑うこともなかった。
ゆきがびょうびょうふって氷が張って、ことに寒い冬だった。
こたつに入り、わたしたちは折り紙を折って遊んでいた。青が本当にしたいことは別だったかもしれない。でもそれは私にはわからなかった。てっきり、青も折り紙をしたいのだと思っていた。二人でいるとそれだけで温かくて、わたしは満ち足りていた。
毎日、お庭の小さな稲荷のお社に水を汲んでいくのはわたしの仕事だった。
水を取り替えて、拝む。
その繰り返し。
白い狐の神様を、とても綺麗と思っていた。
時々、誰かに見られている気がした。
気のせいだと思った。
お稲荷さまを大切にしなさい。
それは死んだおばあちゃんの言葉だった。
ひょっとしたらお稲荷さまのお嫁さまに選ばれるかもしれない。
お母さんたちは、そう言うおばあちゃんの言葉を笑っていた。
わたしも笑った。
だって青がいたから。わたしは青のお嫁さまになるはずなのだから。
そう、わたしは青が大好きだった。
折り紙をこどものお遊びだと言わないでいてくれる青。
もらっても良いかと真剣な顔で尋ねた青。
唇の熱。
たどられたせなか。
わたしはからだがばらばらになって、また再集積したかんかくだった。
ずっと一緒のはずだった。
青は冬を越せずに病気で死んだ。
〝青〟なのに春を見ることがなかった。
わたしはカッターナイフを手にした。
赤い湖に横たわるわたしを、白い大きな狐が見下ろしていた。ふさ、ふさ、揺れる尻尾。
「わたしが喰ろうてやりたかった」
ぽつり、降った透明な雫。
わたしはほほえんだのだと思う。
そしてそれが最期だった。
ゆきはもうすこしでとけたのに。