表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リセット〜絶対寵愛者〜【完結】  作者: まやまや
第3章〜恋愛編〜
76/424

剥がれ落ちるもの

震えているディオンの手。



「ーーー・・ディオン、震えてるの?」



見上げた先。

涙を流すディオンがいた。



「っっ、なっ、どう、したの、ディオン?」



目を見開く。

静かに涙を流して泣くディオンの姿に、慌てふためくしかなかった。

はらはらと静かに涙を流すディオン。



「でぃ、ディオン、!?えっ、え、何で泣いて!?」



あまりの出来事に、あわあわと私は挙動不審に陥るしかなかった。

流れるディオンの涙を拭う。



「ねぇ、ディオン、一体、どうしたの?私が何かしちゃった??」

「ふぅっ、嬉しい、の、です。」

「え?」

「っっ、ディア様は、この手を振り払わない。だから、嬉しいのです、それが、とてもッ。」

「・・・ディオン。」



泣くディオンが、私の肩に顔を埋める。

濡れる、私の肩。

でも、静かに泣くディオンの事を引きはがそうとは思えなかった。



「っっ、私、は、そんな貴方だから、きっと好きになった。同じ、痛みと、悲しみ、孤独を知っているディア様を。」

「・・・同じ、私と。」

「そう、でしょう?ディア様も私と同じ愛情に餓えた方だ。」

「・・・・。」



同じ、か。

いつも私の心はどこか空洞で、餓えと寒さで渇いていた気がする。

それは、愛情を求めていたから?



「誰かに愛されたい、でも、怖い。捨てられる絶望を、ディア様も知っているから。」

「っっ、」



あぁ、剥がされる。

私の纏った、強固な鎧が。



「・・・そう、だよ。もしも、その与えられた愛を受け入れて失ったら?」



怖い。

その愛を失ってしまった時、私は正気のままでいられるの?



「っっ、私は、怖い。だから、ディオン達の気持ちを受け入れられないよッ!」



初めから無ければ、傷付かない。

でも、ディオン達の愛を受け入れてしまったら?

きっと、怯え続けるのだろう。

この愛の終わりの日が、いつ来るのだろうかと。

毎日不安になってしまう。



「きっと、怖くて、誰も信じられなくて、私は最低な事をしてしまうかも知れない。」



束縛して。

理不尽な要求を言ってしまうかも知れない。

そうなってしまう自分が怖かった。



「私は自分が傷付かないか、そんな事ばかり気にしてるっっ、」



私は最低だ。

今も自分の事だけを必死に守ろうとしている。

ディオンの気持ちから目を逸らして。



「・・・っっ、ディオン、私は、そんなに、強く、無いんだよ。」



必至に虚勢を張って大丈夫だと取り繕った。

信じたい。

でも、信じられない自分自身。

目を瞑った先。



『あいつを殺したお前を、俺は絶対に許さない。幸せになんかするもんかッ!』



お父さんが、ざまぁみろと私をあざ笑うかのように口角を上げた。

今も響く、お父さんの声。



『ーーーどうして、お前が生きているんだ?』



私を責め続けている。

なぜ、このままではいけないのだろう?

変化は、嫌い。

今のままが、良いの。



「ーーーっっ、ごめん、なさい。」



恋も愛も分からないと口先だけの言い訳をして、コクヨウの、ディオンの気持ちから目を逸らした。

自分自身を守る為に。



「・・最低、だ、私。」



自分の最低さ加減に反吐が出る。

それでも昨日、コクヨウの行為を拒絶出来なかったのは、しなかったのは私の弱さゆえ。

初めて向けられた愛情を手放せなかったから。



「っっ、ごめん、ね、ディオン。」

「・・・謝らないで、下さい、ディア様。貴方が謝る必要は無いでしょう?」



私の肩から、ディオンが顔を上げる。



「っっ、でも、」

「私も、コクヨウもディア様の中にある闇に気が付いていましたよ?そして、他の皆んなも。」

「あっ、」



昨日コクヨウも言ってたっけ?



『ディア様も僕と同じで、他の誰からも愛されなかった人間なんだと。』



ーーって。



「だから、ですかね?こんなにも、私がディア様に執着するのは。」

「え?」

「愛情に餓えたディア様に愛されたら、きっと私は永遠に離してもらえない。あぁ、それは、なんて幸せな事なんでしょうか。」



ディオンの瞳に熱が孕む。

震えるディオンの指先は、私の頬を撫でた。



「狂おしいほど、私は強く、深く愛されたい。そう、貴方に。」



それを、狂気の愛と人は呼ぶだろう。

狂っている、と。

理解されない、歪な愛情。



「ふふ、私にはお似合いなのかも知れないね?」



でも、そのディオンの狂った愛情を私は心地よく感じてしまった。

ーー・・この、渇いた心が潤っていく。



「・・ディオン、貴方に自分勝手なお願いをしても良い?」

「構いません。何でしょう?」

「あのね?」



もう、良いじゃ無い?

過去に囚われて、立ち止まるのは。



『あいつを殺したお前を、俺は絶対に許さない。幸せになんかするもんかッ!』



お父さん。

私、幸せになって良いよね?



「ーーーディオン、私だけを永遠に愛して?」



泣きながら笑った。

この平穏な日常に立ち止まれないのなら、一緒に闇の中へ落ちれば良い。

そうすれば、お互いしかいなくなる。



「えぇ、喜んで。」



微笑んだディオンからの口付けを受け入れた。

・・ほら、ここは私達だけの愛おしい世界(楽園)

私の目尻から涙が零れ落ちた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ