エピローグ
魔の森の中心部。
その屋敷は、そこに 聳え立っていた。
「ディアお母様~。」
駆けて来る少女。
「レイシー、そんなに走ってどうしたの?」
「レオンハルトとティアラローズの2人が外交に行くというのは本当ですか?」
「まぁ、聞いたの?本当よ。」
レイシーが唇を尖らせる。
「狡いです、ディアお母様。私だって、まだ外交を任せてもらっていないのに。」
「ふふ、それで拗ねているの?」
「拗ねてません。」
ぶいっと、レイシーが顔を背けた。
「レオンハルトもティアラローズも、まだ幼いのに外交を任せるなんて、どうしてですか?」
「2人に外交を任せたのは、お祖父様がいるからよ。」
「お祖父様って、ルーベルン国にいるの?」
「そうよ、秘密だけどね。」
子供達には秘密。
レオンハルトも、ティアラローズも知らない。
「むぅ、それでも狡いです。」
「あらあら、そんなにレイシーも外交がしたいの?」
「違います!お母様のお役に立ちたいのですわ。」
「まぁ、立派に優し子に育ったわね、レイシー。」
レイシーの事を抱き締める。
「もう、子供扱いしないでください。」
言いながら、逃げない。
可愛いことだ。
「レイシー、貴方は私の後を継ぎたい?」
「んー、分かりません。それに、ディアお母様の血を受け継いだ子供もいますし。」
「あら、貴方の事も私は本当の子供と思っているわよ?」
「…ありがとうございます。」
照れるレイシー。
「なら、俺と結婚して、ディア母様の後を継ぐのも良いんじゃない?」
その声に振り返る。
息子である、レクティファールとルクシオンがいた。
「レクティファール!?」
「あらあら、レイシーに求婚?」
レイシーが驚きの声を上げ、私は楽しげに笑う。
「ディア母様は反対?」
「いいえ?ただ、無理矢理はダメよ?」
「もちろん、レイシーの気持ちを蔑ろにはしないよ、母様。」
微笑むレクティファールは、レイシーの前に、跪く。
「レイシー、好きだ。結婚してくれ。」
「~~っっ、バカ!」
真っ赤になったレイシーが背を向け走り出す。
「逃げられたね、レクティファール。」
「楽しむな、ルクシオン。」
双子の兄である、レクティファール。
双子の弟である、ルクシオン。
仲の良い兄弟だ。
「レクティファール、レイシーを追いかけないの?」
「母様、レイシーが恥ずかしがり屋だって、知っているでしょう?」
「しばらくは、レクティファールに合わない様に逃げ回るでしょうね。」
肩をすくませるレクティファールと、呆れるルクシオン。
「周りを固めますよ。」
「レクティファールは、レイシーを逃す気がないから。」
楽しげに2人は笑い合う。
コクヨウに似た、レクティファール。
ディオンに似た、ルクシオン。
私の最初の子供達。
2人とも私にとって、とても大切な我が子だ。
「あらあら、レクティファール。あまり性急すぎるとレイシーに嫌われるわよ?」
「ですが、うかうかしてレイシーの事を他の誰かに奪われるなんて嫌です。」
「ほどほどになさい。」
レイシーも、レクティファールの事を嫌っていない。
嫌っていたら、はっきり言う子だもの。
「ルクシオは、ユリーファとはどうなの?」
「大切な婚約者と手紙のやり取りを欠かしてませんよ。」
「そう、大切になさいね?」
ルクシオは、ディオンの妹であるユリーファと婚約している。
ルクシオが18になったら結婚する予定だ。
「あと、2年で結婚ね。」
「えぇ、待ち遠しいです。」
ルクシオも、この婚約を喜んでおり、母親としても嬉しい限りだ。
『お兄様、ルクシオをユリーファのお婿さんにくださいませ。』
ルクシオンが生まれた時のユリーファの興奮は凄かったのよね。
何回も2人を合わせ、ルクシオンがユリーファの事を気に入った為に婚約となった。
「2人仲が良くて、お母様は嬉しいわ。」
子供達も大きくなってきている。
親離れは寂しいが、健康に大きくなってくれて嬉しい。
「僕達がいなくても、母様には父上達がいるではないですか。」
「そうですよ、いつまでも仲の良いんですから、子供としては見ていられませんよ。」
「うふふ、お父様達は私の事を大切にしてくれているだけよ。」
薔薇色の頬で微笑む。
「はいはい、いつまでもお幸せに。」
「また妹か弟が増えるんじゃありませんか?」
「あり得るな。」
呆れる2人。
「さて、そろそろ、レイシーを探しますか。」
「頑張れ、レクティファール。」
「では、母様、失礼します。」
「私もユリーファに手紙の返事を返しますので、失礼します。」
「えぇ、レクティファール、レイシーをよろしくね。」
2人を見送る。
「ーー2人も大きくなりましたね、ディア。」
「もう立派な大人ですね。」
その声に振り返る。
「貴方達に似たわ、コクヨウ、ディオン。」
私の側に寄る、コクヨウとディオン。
「お一人ですか?」
「オリバーとアレンは一緒では?」
「オリバーはシルフィオーネの相手をしているわ。アレンはレオンハルトとティアラローズの教育をしてるわね。」
シルフィオーネは、まだ幼いオリバーとの娘。
ぐずるシルフィオーネの相手をオルバーはしている。
そして、レオンハルトとティアラローズはアレンとの子供で兄と妹の兄妹だ。
今回の外交の為、アレンが教育を施している。
「おや、では、我々がディアを独占できますね。」
「そうですね、いつも子供達に貴方を取られますから。」
「ふふ、やきもち?」
楽しげに笑う。
幸せだ。
こんなにも、毎日が。
「コクヨウ、ディオン?」
「はい?」
「何です?」
「愛しているわ、貴方達を心から。」
愛しき人。
この心を、貴方達にあげる。
だから、貴方達も永遠に私の事を愛してね?
私は、そう。
ーー貴方達の寵愛者。
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