間話:〇〇の追憶
優しい人だった。
いつも周囲に対して強い自分を演じ続けた、本当の私に気が付いてくれた人。
初めて自分の弱さを見せられ人だった。
『うん?俺が戦う理由かい?うーん、俺だけが幸せなのは嫌なんだ。だから、皆んなが幸せになれる様に戦いたい。ははっ、ただの傲慢なだけでたいした理由なんかないさ。』
優しさを自分の傲慢だと語る貴方の事を知れば知るほど、好きになっていく。
ーー好きになってはいけない貴方の事を。
この恋は、終わりの始まりだったのかも知れない。
『愛してる、ーーー。』
ねぇ、レオン。
最後な瞬間まで私に愛をくれた貴方の事を攫ってでも連れて逃げれば良かった?
でも、貴方は逃げてはくれなかったでしょう。
泣いて願っても。
どんな理由があったとしても。
『俺だけが幸せなのは嫌なんだ。皆んなが幸せであってくれば、俺は幸せになれる。』
きっと貴方は、誰かを見捨てられない。
誰かの幸せを願う人だから。
不幸になると分かっている人の為に、最後まで戦い続けるだろうと思っていた。
「貴方は、自分だけの幸せの為だけに生きられない人だったもの。」
そんな貴方だから、私は心から愛したの。
私の目から涙が零れ落ちる。
「っっ、それでも、」
貴方に生きていて欲しかった。
抗って。
誰を犠牲にしたとしても、私の元へ帰ってきて欲しかった。
私の事を1番に考えて欲しかった。
でも、無理だと分かっていたの。
『どうしたら、争いは無くなるんだろうか?』
最後まで抗い。
皆んなの幸せを願い続ける人だったから。
『これから生まれてくるこの子の為にも、この世界の未来を変えたい。』
その未来に貴方はいない。
私のお腹を幸せそうに撫でていたのに。
「っっ、なぜ・・?」
ただ幸せな未来を夢見ただけだと言うのに、それすら奪われる。
貴方の最後の言葉が胸に痛い。
張り裂けてしまいそう。
「私も貴方の事を愛しているわ、レオン。」
叶うなら、貴方の元へ行きたい。
でも、私には守らないといけない命があるから。
「・・・っっ、ごほ、」
あぁ、私の命が零れ落ちていく。
口から流れる自分の血。
自分の命の終わりが迫っている事を悟る。
「・・お願い、もう少しだけ持ってちょうだい。」
この術が完成するまでは。
私の腕の中ですやすやと眠る我が子を見つめた。
「ごめんね。」
この決断は貴方を悲しませるだろう。
それでも、どうか。
「私の命を使ってでも貴方の事だけは守るから。どうお願い、貴方は幸せになって。」
例え、その先に私がいなくても構わない。
貴方の幸せだけを祈ってる。
あの人と私の大切な我が子。
「ーーーー。」
最後にそっと我が子の名前を呟く。
「っっ、あぁ、」
この子の成長を見守りたかった。
願ったのは小さな事で。
それさえ、自分には叶わない。
「レオン…。」
ねぇ、貴方も最後の瞬間は、こんな気持だった?
悲しくて。
苦しくて。
愛する人に会いたいと思う。
「…置いていくのも、悲しいものなのね。」
我が子の頬を撫でる。
置いていかれる方が悲しいのだと思った。
でも、違って。
「っっ、この子を1人置いていくのが悲しい。」
ぽたりと、涙が我が子の頬に落ちる。
もっと我が子の側にいたかった。
「…、あなたは、」
どんな風に笑い。
どんな風に怒るのだろう。
見たかった。
いろんな我が子の表情を。
「愛しているわ。」
ずっと、心の底から愛してる。
だからこそ。
「…許さないわ。」
貴方の気持ちを踏み躙った人達の事を。
この命尽きても。
最後まで恨み、憎み続けるだろう。
「……そんな私の事を知ったら、貴方は悲しむかしら?」
憎しみは、新たな争いを呼ぶ。
最後まで、平和を願った貴方の事だから。
「っっ、でも、ごめんね?」
許せないの。
私から貴方を奪った人達を。
許せそうにない。
「…、どうか、お願い。こんな私の事を、」
ーーー嫌いにならないで。
好きなの。
貴方を奪ったこの世界を、壊してしまいたいぐらいに。
「っっ、ごふっ、」
目が霞む。
もっと、見ていたいのに。
だんだんと私の最後が近づいていく。
「…レオン、ーーーー、」
ーーー愛してる。
赤い魔法陣が光り、一つの命が消えた。
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