表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リセット〜絶対寵愛者〜【完結】  作者: まやまや
第13章〜帝国編〜
413/424

間話:皇帝の復讐(前編)





ガルドフェインside





弱さは罪だと思っていた。

マリア、お前に出会う日までは。



「あの女の息子はあんなにも優秀なのに、なぜ、お前はこんなにも劣っているの?」



蔑む言葉。

その視線が、顔が言っていた。

出来損ないの皇子だと。



「はぁ、私が生んだ皇子がもっと優秀だったら良かったものを。」



父の側室だった母。

優秀だった私の異母兄。



「分かっているの?正妃腹で生まれなったお前が帝位に即くには、誰よりも優秀でなければならないのよ?」

「・・はい、母上。」



母の期待に応えられない無能の私。

武術も学力も異母兄の方が遥かに私よりも優秀で優れていた。



「第一皇子が皇太子となれば、この国も安泰ですな。」

「はは、確かにそうですね。」

「優秀と誉れ高い第一皇子が皇太子となり、次代の皇帝となれば、我が国もさらに強国となる事でしょう。」



賞賛は期待に。



「それにしても、第二皇子は非凡らしいですな?」

「えぇ、何をさせても兄である第一皇子に敵いません。」

「期待するだけ無駄ですね。」

「まぁ、無用な後継者争いが起こらなくて良いのでは?」

「おぉ、違いありませんな。」



嘲は悪意へ。

私は生まれなかった方が良かったのだろうか?



「ーーお前を私の次の後継とする。よってお前が皇太子となる事を告知するので承知するように。」



その日々も終わる事となる。

異母兄である第一皇子の突然の死によって。



「あの優秀な第一皇子なら、この国をさらに強くできたものを。お前を私の世継ぎとするなど、全く不本意だ。良いか?今まで以上に精進するのだぞ?」



私を見下す、父の瞳。

思い知る、この父に私は必要なかったのだと。

この決定も、父には不本意なものだったのだと思い知らされた。



「っっ、ぁぁぁぁ、アレクセイ、私の息子。なぜ、お前が死なねばならないの!?」



ーーー他に不必要な皇子はいるのに。

悲痛な王妃の嘆き。



「・・第一皇子様、迷宮に行かれて亡くなられたのでしょう?」

「えぇ、皇帝陛下もお亡くなりになって相当落胆された様よ。」

「そりゃ、第一皇子様は優秀な後継だったもの、当然よね。」



逃げ出してしまいたい。

窮屈な王宮。



「ふふ、ようやく私の天下よ。次代の皇帝の母となるんですもの、皇后より上の立場になるわ。」



人の死を喜ぶ母。

その顔は醜悪で、人間の浅ましさを思い知らされた気がした。



「異母兄、なぜ、亡くなられたのですか?」



閉じられた籠の扉。

異母兄が即位すれば、家臣として王宮から出られたのに。

檻の扉は永遠に閉じられた。



「良い事?この母の為に、必ずこの国の王となりなさい?」



ーー・・もう、私は逃げられない。

私に興味がない父。

自分の地位しか興味のない母。



「皇太子冊立、誠におめでとうございます。」

「いやぁ、本当にめでたい事ですな。」

「そう言えば、まだ婚約者はいらっしゃらなかったですよね?」

「おぉ、我が娘はどうでしょう?」

「いやいや、我が娘は器量よしで皇太子様もお気に召すかと。」



媚びへつらう貴族達。

一変した環境。

安息の場所は、私にはなかった。



「・・また今宵も側室の所に向かわれのですか?」



咎める妻となった女を一瞥して歩き出す。

与えられた皇太子妃。

そして、たくさんの側室や愛妾達。



「たくさん子をなせ。今のお前の一番の仕事だ。」



全ては命令と言う名の鎖。

この王宮内で私の心は誰からも無用だった。



「新皇帝陛下、万歳!」

「先代皇帝の喪も明けたのですから、新たな皇帝のお力を周囲の国へ示しませんとな。」

「我が国の力は健在だとしら締めませんといけませんからね。」



皇太子から皇帝へ。



「っっ、お前、この母になんと言う事をするのだ!」



初めにした事は、母の粛清。

兵に捕らえられた母が、私に向かい喚き散らす。



「私は罪人を捕らえさせたまで。」

「罪人?この私が?」

「えぇ、先代皇帝に毒を盛っていたでしょう?」



この女は侮った。

いつまでも、私が自分の傀儡なのだと。



「なっ、何を、」

「私が何も知らなかったと?どこまでも愚かで滑稽な事だ。」



母親だった女を冷たく一瞥する。



「貴方は私には不要です。良かったですね?貴方も無能な私の事を息子だとは思っていなかったのでしょう?」

「っっ、この、恩知らず!生んでもらったこの母に、この様な仕打ちをするなんて!」

「恩?」



何ともおかしい事を言う。



「私に母などいない。そう思わせたのは、貴方ではありませんか。」



情など有りはしない。

ーーーそうさせたのは、自分なのだから。



「先代皇帝を暗殺した女だ。罪人として牢へ連れて行け。」

「い、いやぁぁぁぁぁ!」



絶叫する女に背を向け、歩き出す。

次にする事の為に。



「・・は?全ての国を併呑して、統一する、ですか?」

「そうだ、宰相。その為の軍事力の強化を図る。早急に予算の編成と兵達の訓練に入れ。」

「し、しかし、」

「これは命令だ。お前達の意見など必要としていない。分かるな、宰相?」



宰相の耳元で囁く。



「お前の代わりなら、たくさんいるぞ。それでも反対するか?」

「っっ、承知いたしました、皇帝陛下。」



機は熟した。

走り出す。

統一と言う名の戦の為に。



「皇帝陛下、国の統一など、おやめ下さい!」

「民の負担となります!」

「お考え直しを、皇帝陛下!」



邪魔する者は不要。

否定する声は武力で持って制圧し、飲み込んでいく。

流れるたくさんの血。



「何故、この様な事をなされるのですか!?」



あがる非難の声。



「何を言っている?全て、お前達が望んだ事だろう?」



強い王。

そして国の安寧と、強くする事を。



「先王が、お前達が望んだ王としての姿なのだろう?強く、誰にも負けない王の。」



青ざめ、口元を震わせる者達を切り捨てた。

怨嗟、怒り、不満。

様々な感情が高まる中だった。



「ーーー・・わたくしの名はマリアと申します。」



お前に出会ったのは。

気まぐれに連れ帰ったマリアと言う女を側に置いて数ヶ月。



「・・陛下?何やら体調が悪いようですが、大丈夫ですか?よろしければ、今日の政務はここまでにいたしますが・・。」

「っっ、何でもない、報告を続けよ。」

「はっ、続きましてーーー」



散漫になる思考。

途切れる記憶。



「・・まさか、原因は、」



言い知れぬ感情に私の背中に冷や汗が伝う。

それでも私はマリアの元へと通った。



「陛下、今宵もわたくしの元へ来て下さり、嬉しゅうございます。お会いしとうございました。」



嬉しそうに笑うアリアの瞳が何かを求めていたから。



「・・あぁ、そうか。」



気がついてしまう。

マリアは私と同じなのだ。

本当に欲しいと求めたものが手に入らぬと知っている所が。



「ふふ、もう少しです。後少しで願いが叶う。」



薄れ抜く意識の中。



「・・あぁ、魔王様。お会いしたい。」



その望み、叶えと願う。



よろしければブクマ、良いねボタン、感想、そして誤字報告お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ