懐かしき再会
私が楽しく遊ぶ為、リュストヘルゼ帝国の全勢力を利用する事に決めた。
後で慌てふためく事だろう。
なぜなら、彼女は知らないから。
この計画が破綻する事を。
「まずは、クーデターの発起人であるリーダーさんに会って話をしないと。リリス、クーデターの中心人物は分かっているのよね?」
「はい、クーデターの中心人物はルイン・カウベリン辺境伯です。」
「っっ、ルインおじ様が!?」
リリスが告げた名に、ロッテマリーが反応する。
「ロッテマリー、知り合い?」
「・・はい、父の旧友で、小さい頃の私の事も可愛がってくださいました。」
陰るロッテマリーの表情。
「なら、ロッテマリーのお父様の弔いの為に立ち上がったのかしらね?」
「ルインおじ様っっ、」
「・・お嬢様。」
啜り泣くロッテマリーの肩を、ルルーシェルが支える。
ふむ、ロッテマリーの父の旧友。
「話し合いの間に、ロッテマリーがいた方が良いと思うんだけど、どうする?ロッテマリーが気が進まないと言うなら、無理強いはしないわ。」
「・・いえ、私もルインおじ様との話し合いに行かせてください、ディア様。」
涙に濡れた目に強い光が宿る。
「私の全ては貴方様のモノ。貴方様のご命令に従い、敵になると言うなら誰であろうと滅ぼすまでです。」
ルインとの話が決裂すれば、私の敵。
自身の手で屠る決意はあると、ロッテマリーは告げる。
「そう、なら私と一緒に来なさい。」
受け入れましょう。
ロッテマリー、貴方の、その強い決意を。
「はい、ディア様。どこまでもディア様にご一緒いたします。」
恭しく、ロッテマリーが頭を下げた。
「リリス、リュストヘルゼ帝国の兵達がガルムンド王国の国境に到達するのはいつかしら?」
「日没前には到達するかと。」
「となると、開戦になるのは明日以降。その前にルイン・カウベリン辺境伯と会いたいわね。」
狙いは、リュストヘルゼ帝国の兵達が休む深夜。
「アディライト、私は今宵ルイン・カウベリン辺境伯に会いに行くわ。私がいない間のフォローを頼めるかしら?」
「お任せください。」
「ありがとう。フィリアとフォリオの2人も、アディライトと残って、私がいない間に何か起こったらフォローをお願い。」
「「はいなの!」」
この城の事は3人に任せ、早速、夜になるのを待って私、コクヨウ、ディオン、ロッテマリー、ルルーシェルの5人はルインがいる場所の近くへと飛ぶ。
立ち並ぶ天幕。
近づき過ぎれば気づかれるので、離れて観察する。
「見回りが多いわね。」
あちこちにリュストヘルゼ帝国の兵達の監視が置かれている。
ガルムンド王国を警戒しているようだ。
「仕方ない、ディオン、邪魔な人達は魔法で全員を眠らせてちょうだい。」
「はい、ディア様。」
頷き、ディオンが魔法を行使する。
崩れ落ちる兵達。
無事に、魔法の眠りに落ちた様だ。
そのまま私達はリリスの案内に従い、ルイン・カウベリン辺境伯野元へと向かう。
「・・誰だね、君達は。」
音も無く天幕内へ足を踏み入れた私達をルイン・カウベリン辺境伯が剣を手に、迎え入れた。
私は被っていたフードを外す。
「初めまして、ルイン・カウベリン辺境伯。私は、Sランク冒険者のディアレンシア・ソウルと申します。」
淑女の礼で名乗った。
「・・Sランク冒険者が何故、こんな夜更けに私の元へ?」
「貴方様と大事な話がしたくて参りました。どうか、この様なご挨拶となった事をお許しくださいませ。」
「私と話?」
「はい、貴方様が企てる、クーデターについて、です。」
「!?」
ルインの剣を持つ手に、力が入る。
「・・一体、何の話でしょう?リュストヘルゼ帝国の皇帝陛下、ガルドフェイン様に忠誠を誓った私がクーデターを企むなど。」
「あら?ガルムンド王国との開戦の混乱に乗じて、リュストヘルゼ帝国へ舞い戻る予定では?」
口元を釣り上げる。
「リュストヘルゼ帝国の皇帝、ガルドフェインを玉座から引きずり落とす為に。」
変わるルインの表情。
それも一瞬。
「で、それを知って君はどうすると?」
鋭い眼差しを向けてくる。
「クーデターを企てる私を捕まえに来たのか?皇帝陛下の命令で?」
「いいえ?言ったはず、私は話し合いに来たのだと。」
「はっ、話し合い?ふざけるな!」
素早い一撃。
鞘から抜かれたルインの剣が私を捉えんと襲い掛かる。
「ふふ、ルイン・カウベリン辺境伯無駄ですよ?貴方の剣先は、私の盾が必ず止めますから、届きません。」
宣言通り、弾かれるルインの剣。
「我が主人への狼藉、いくら貴方でも許しません。ルインおじ様。」
ロッテマリーの剣によって。
「おじ様?君は一体、誰なんだ?」
「お久しぶりです、ルインおじ様。私はカイン・シュトレーゼンが娘、ロッテマリー・シュトレーゼンです。」
被っていたフードをロッテマリーが外す。
「ま、マリー!?」
驚愕に身開かれるルインの瞳。
その手から、するりと剣が滑り落ちていった。
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