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リセット〜絶対寵愛者〜【完結】  作者: まやまや
第12章〜獣人編〜
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閑話:本能と忠誠(中編)

ロウエンside




もう、これで俺は彼女のモノ。

そして、彼女は俺のモノなんだと思った。

なのにーー



「彼がコクヨウで、その隣がディオン。2人は私の大切な家族であり、夫でもあるの。」



アディライトさん、フィリアとフィリオ、そして英雄ルルーシェル。

次々と紹介してくれる彼女は、2人の事を自分の大事な家族であり、夫だと満面の笑顔を浮かべて言う。

愕然とする。

フィリアとフィリオの2人が魔族だった事も驚きだが、彼女から紹介された家族には、夫がいたのだ。



「っっ、なぜ、」



許せない。

他の男のモノになった君の事が、心の底から憎いと思った。



「どうしてーーー」

「ディア様に対して乱暴な事をするな。」



激情に任せ彼女に詰めよ寄ろうとする俺の事を、簡単に床に組み伏せる、コクヨウと紹された夫の1人。

もがくが、外れない。

逆に、俺を抑え込む力が増す。



「ーーーっっ、」



悔しかった。

こうもあっさりと組み伏せられ、何も出来なかった事が。

悔しくて、涙が滲む。



「ふふ、もう放してあげて、コクヨウ。」

「・・はい、ディア様。」



抵抗を止め、項垂れる俺を解放する様にとの彼女の指示に緩まる拘束。

こうして俺が組み伏せられていても、笑顔のままの彼女にとって、自分はどんな存在なんだろうか?

聞くのが怖い。



「ロウエン、大丈夫?」



何も答えられず、俯いたまま。



「一度、このまま今日は帰って、必要な物だけ持って帰って私の元へ来なさい?ロウエン、もう貴方は私のモノになったのだから、良いわね?」



指示する彼女の声を振り切り、宿を飛び出した。



「・・ロウエン!?」



最後に彼女の驚く声を背にして。

俺の何が悪かったのか。

獣人族のオスは、相手への執着心が強い。



「っっ、ディア、」



愛おしい人。

だからこそ彼女の事を独占し、自分だけのモノにしたかった。

どろどろとした感情が俺の中で渦巻く。



「・・、なんで、だよ。」



胸が痛い。

苦しくて、頭がおかしくなりそうだ。

どうすれば良い?

俺が彼女の事を独占するには。



「ーーーっっ、俺があいつらよりも、強くなれば良いんだ。」



あの男達よりも強くなり、彼女を俺だけのモノにする。

決意し、この国の迷宮へ向かった。

迷宮に籠る事、三日。



「・・疲れた。」



疲れ果てていても思うのは、彼女の事。

会いたくて堪らない。

どうしても彼女に会いたくなり、俺の身体は無意識に宿へと向かっていた。



「ーーーお引き取りを。」



最初の日に俺を出迎えた、アディライトと呼ばれた女性が冷ややかに告げる。



「ディア様は、貴方にお会いにはなりません。」



と。

強引に押し入ろうとすれば、足と取られ転ばされてしまう。



「っっ、」

「無礼な行為はおすすめ致しません。貴方も痛いのは嫌でしょう?」



淡々と話すアディライトと呼ばれた女性。

また、負けるのか?

あの男だけじゃなく、このか弱く見える女性にも。



「っ、それでも、っっ、」



彼女に会いたい。

必死に彼女に会う為に部屋の扉へと手を伸ばす。



「懲りたない人ですね。」



落ちる溜息。

次の瞬間、俺は目の前の女性によって壁へ叩きつけられてしまう。



「っっ、う、」



身体中に走る痛みで呻く。



「アディライト、あまり酷くしないであげて。それに、いくら魔法で音を遮断していると言っても、他のお客さまの迷惑になるのは困るわ。」



聞こえた声に、息さえ止まった。

何でだよ?

どうして、俺の事を、そんな冷たい目で見るんだ?



「ーーーで、貴方は今更、此処に何しに来たの?」



見上げる俺を、冷たい視線が射抜く。



「ごめ、」

「謝罪なんて要らない。ねぇ、ロウエン、私の事を優先出来ない存在を、側に置くと思った?」



冷たく突き放され、身が竦む。



「もう、君は要らない。だから、私の元から消えて?」



残酷に君は告げた。

そのまま拒絶され閉じてしまった扉に俺は、みっともなく泣き喚く。

こんなはずではなかったのだと。



「っっ、ひぃ、ごめ、な、さい、ディア、」



泣き喚き、何度も彼女の名前を呼んで許しを乞うても、固く閉ざされた扉は開かない。

絶望感が俺の心を支配する。

もうダメなのか?



「っっ、ディア、嫌だ、」



突っ伏し泣いた。

自分のモノにしたいと思った存在に拒絶される事が、こんなにも苦しいなんて。



「あらあら、ひどい顔ね、ロウエン。」



項垂れる俺を笑う声。

はっと、その声に突っ伏していた顔を上げる。



「ディ、ア?」

「ふふ、そうよ?」



涙でぐじゃぐじゃの俺の頬を撫でる、君の指先。



「先にお風呂に入って顔と身体を綺麗にして来なさい。話はそれからよ。」



促され、浴室に放り込まれてしまう。

のろのろと服を脱ぎ、言われた通り綺麗に身体中を洗った俺は寝室へ通される。



「っっ、」



俺以外の男に抱かれている、彼女がいる部屋へ。

何をしているんだ?

今自分が見ている光景が、全く理解が出来ない。



「んっ、コクヨウ、大好き。」



上がる嬌声。



「ーーーディア・・?」



混乱。

そして、怒り。

入口で固まる俺と目が合った彼女は、毒を孕んだ華のように微笑んだ。

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