暗殺の企て
無事にルドガーの心をへし折る事に成功した私。
そのルドガーと、制圧した兵の中から司令官と思う男を連れて玉座の間へと向かう。
場所はリリスよりの情報で把握済み。
「ーーーこんにちは、皆様。お元気でしょうか?」
悠然と玉座の間に押し入る。
え?
扉を守っていた兵はどうした?
そんなの、私の可愛い子達があっさりと昏倒させたに決まっているじゃないか。
「あらあら、王宮だと言うのに警備が手薄ですね?こんなにも簡単にたどり着けてしまうんですから。」
にこりと一撃。
私達の乱入に、この場に集う者達が眉を顰める。
「王宮の兵だと言うのに、もっと鍛えた方がよろしいのでは?この国の宰相様が見下す、人間の私でも、こうして来れてしまいましたし?」
兵の質の悪さをこき下ろす。
「あぁ、自国の高貴な人の悪事も見過ごす様な王宮ですから、仕方ないのですかね?」
「無礼な!」
叱責の声を上げる女。
「あら、王妃様、ご機嫌麗しゅう。」
私の目的の1人。
ルルーシェルの暗殺を企んだ、この国の王妃である。
「王が在わす玉座の間に押し入るとは、何を考えている!魔族を倒した一行だとは言え、その罪は重いぞ!」
「罪は重い?」
王妃の良い様に首を傾げる。
「なら、暗殺を企てる事は許されるの?」
「っっ、」
強張る、王妃の顔。
「暗殺を企てる?其方、何の事を言っている?」
「陛下、こうして私達がこの場に来たのは、命を狙われたからなのです。」
ねぇ、王妃様?
「そこにいらっしゃる、王妃様の企てによって。」
断罪の時間だよ?
「っっ、其方、何と言う事を!出鱈目を言うでない!」
真っ赤になって、王妃が身体を震わせた。
「・・王妃が?」
「なっ、陛下!あの様な者達の話を鵜呑みになるのですか!?」
怪訝な表情になる王に、王妃が縋り付く。
「私は、あの者が申した様な事は誓ってしていません!命を狙うなど、そんな恐ろしい事を私がすると陛下はお思いで?」
目尻に涙が滲む。
あらあら、王妃様は演技派で。
「っっ、誰か!そこの者達を王族への不敬罪でひっ捕らえなさい!」
感心していれば、王の腕に縋り付いたまま、私の事を睨め付ける王妃。
私達の事を捕らえる様に指示を飛ばす。
「・・?なぜ、誰も来ぬ?」
誰も来ない事に王妃や、この場に集っていた者達がざわつき始めた。
「ふふ、呼んでも誰も来ませんよ?」
だって、邪魔じゃないか。
私が遊ぶのに、外野は必要ないもの。
「この玉座の間以外にいる人は、全員寝てもらいました。今、王宮内で起きているのは、貴方達だけですよ?」
魔法で寝てもらいました。
簡単に無力化です。
「あぁ、王妃様にお土産をお持ちしました。」
「土産?」
「えぇ、きっと王妃様も気に入ってくださると思います。コクヨウ、お土産を王妃様へ見せてあげて?」
コクヨウを促し、王妃へのお土産を投げ出させる。
どさりと地面に落ちる、王妃へのお土産。
「っっ、兄上!?」
ぴくりともしない自分の兄の変わり果てた姿に、王妃が悲鳴を上げた。
慌てて自分の兄へ駆け寄る王妃。
あまりにも変わり果てた宰相の姿に、この場に集う者達は言葉を失っていた。
「あら、人の暗殺なんて企てる王妃様でも、お兄様の事は大事なのですね?」
「ひ、人でなし!お前には、人の心がないのか!?」
「そのお言葉、そっくりお返しいたします。」
お前が言うな?
「たって、王妃様のお兄様がこうなったのも、ご自分の所為なのですから。」
「なに!?」
「実は、王妃様のお兄様も暗殺を企てていたのです。王妃様が企てた暗殺を隠れ蓑にして。」
暗殺に成功すると思っていたのか。
相手は魔族を倒したルルーシェル達なんだよ?
「王妃様は、私の可愛いルルーシェルの暗殺を企ててくださしましたね?そして、王妃様のお兄様である宰相様は私の暗殺を企てた。」
似た者兄妹。
考える事は同じなのかしら?
「っっ、証拠は!?そこまで言うなら、私が暗殺を企てた証拠が有るのでしょうね!?」
「・・証拠、ですか。」
「ふっ、無いのね!?だって、私は暗殺など企てていないもの。」
勝ち誇る王妃。
「えっ、証拠なら有りますけど?」
何言ってるの?
「なっ、バカな!?証拠など有る訳ないわ!」
「ふふ、それは、どうでしょう?」
くすくすと笑う。
私は魔道具、『記憶の髪飾り』に魔力を流し、発動させた。
『良い?必ず、あの邪魔な女、ルルーシェルの事を始末さなさい。』
『はい、王妃様。必ず、始末します。』
流れる王妃と侍女の会話。
『私の息子の王位継承を邪魔する小娘など生かしておかぬ!すぐに息の根を止めてくれようぞ。』
増悪を吐き出す王妃の姿が暗転。
『ほう?ある女の事を殺してくれと言うんだな?』
『えぇ、必ず息の根を止めてちょうだい。良いわね?』
暗殺の依頼をする王妃の侍女の姿に切り替わる。
『良いだろう、その依頼を受けよう。で、殺して欲しい相手の名前は?』
『殺して欲しい者の名はルルーシェル。魔族を倒した、英雄よ。』
王妃の侍女がルルーシェルの名を告げた。
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