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リセット〜絶対寵愛者〜【完結】  作者: まやまや
第12章〜獣人編〜
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無能なギルド長

男がそれに気がついたのは翌日の朝だった。

仕事場に出勤してきた男は、自分の机の上に置いてある手紙に眉を寄せる。



「うん?何だ、この手紙は?」



封筒に入れされた、差出人の名前もない不審な手紙。

訝しみながらも、机の上に置かれた差出人不明の手紙を手に取ると椅子に座り中を読んでいく。



「・・は?」



読んでいた手紙の内容に男の目が点になる。



「魔族?その魔族の不正な奴隷だと?」



何とも馬鹿馬鹿しい。

男は鼻で笑う。



「ふん、誰がこんな世迷言を書いたのやら。」



手紙を放る。

ゴミ箱に入る事なく、地面に落ちる紙。



「さて、今日も何か金儲けになりそうな話はあるかな?」



男の意識は金儲けの事へ向かう。

手紙の事など忘れ。



「くくっ、本当にギルド長になって幸せだぜ。」



ある高位の貴族のコネでガルムンド王国のギルド長と言うポストに就いたのは、猫の獣人族の男だった。

能力も無いくせに、ギルド長と言う権力を使い、優遇する人間の罪を揉み消し、本人も犯罪へと手を染めている最低最悪な男である。

周囲からの評価も悪い。

その事を知らないのは本人だけ。



「今度は綺麗な女でも貴族様へ貢ぐか。色々と便宜を図ってもらわないといけないしな。」



まさに下衆の極み。

権力を笠に、到底無理な依頼を回して達成できなかった女の冒険者を借金奴隷に落とすのは当たり前。

自分の女にする事もあった。

そして、貴族への貢物として借金奴隷に落とした女を差し出す事も。



「ーーーーギルド長、少し良いですか?」



顔を見せたのは副ギルド長で、気弱そうな男の兎の獣人族である。



「あ?何か問題でも起きたのかよ?」



不機嫌な表情になったギルド長の男は渋々、自分の椅子から立ち上がる。



「昨日、ギルド長が斡旋した依頼が未達成になりまして。」

「へぇ?」



自分が狙っていた獲物の情報を聞いて、ゆるゆると上がるギルド長の口角。



「くくっ、依頼が未達成なら、罰として違約金を支払ってもらわないとな?」

「っっ、」



副ギルド長の顔が歪むが、知った事ではない。

ここでは、自分が全てなのだから。

男の破滅まで、後少し。




◇◇◇◇



ディオンが冒険者ギルドへ手紙を届けて数日。

冒険者ギルドが動く様子はない。



「あらあら、この街の冒険者ギルド長は弱き民を見捨てるのかしら?」



冷笑が口元に浮かぶ。

事実確認さえしないとは、思いもしなかった。



「リリスさんの配下の報告によると、ギルド長へ届けたディア様からの手紙は、信用ならないと思われているようです。本当、この国の今のギルド長は無能なようですね。」



無表情のコクヨウ。

どうやら、私の情報と警告を無視したギルド長へ怒っているらしい。



「コクヨウ、良いじゃない?後で自分の首を絞める事になるのは、ギルド長自身なのだから。」



私は情報と警告を与えた。

それをろくに調査もせず、信用ならない手紙と放置したのはギルド長自身。



「ふふ、リリスには捨てられた手紙を上手く回収して保管するように頼んであるし、必要になったら、()()()()()()()段取りになってるの。」



もしも大会で何かあった場合、全て彼の責任だ。

後でどうなろうと私は関係ない。



「最終的に困るのは、誰なのかしらね?」



その時に慌てても遅いのだ。



「無能な人間が後でどうなろうと、私は2週間後に開催される武術大会を楽しむだけだわ。」



奴隷の子供達は可哀想。

が、だからと言って私が厄介ごとに関わる気はない。

私の可愛い家族も、危険や厄介ごとに関わる事をあまり心良く思っていないし。



「でも、十中八九、魔族の狙いは武術大会よね。」



この街の大きなイベントだ。

人が多く集まるこのイベントを、魔族が利用しない手はない。

この大会を奇襲する気なのだろう。



「んー、そうなると、ルルーシェルの活躍が見れなくなるのは困るわ。」



どうしようか?



「ディア様、でしたらルルーシェルに問題の魔族を倒させてはいかがです?」



アディライトの提案に目を瞬かせる。



「ルルーシェルに?」

「はい、今のルルーシェルの実力なら、魔族にも引けを取らないでしょう。例え武術大会へ魔族が乱入して何かをしようとも、ルルーシェルなら阻止できるかと。」

「ふむ、」



なるほど、良い提案だ。

ルルーシェルの実力も見れ、その力を周囲にも知らしめられる絶好のチャンスなのでは?



「もしもルルーシェルの身が危うくなれば、光と闇の精霊王様方が側におりますので、安心だと思うのですが。」

「そうね、カティアとライアの2人には武術大会の当日に魔族の奇襲で、ルルーシェルの身が危うくなりそうな時にだけ力を貸してもらえるように頼みましょう。」



アディライトの提案に頷く。

さっそくカティアとライアの2人にお願いに向かう。



「良いわよ、ルルーシェルが本当に危なくなった場合は私達が力を貸すわ。」

「魔族だろうと私達の敵じゃないわよ。」



即答である。

心良く引き受けてくれる2人に感謝を告げ、私は武術大会の当日を楽しみに待った。




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