血筋
準備を進め、ガルムンド王国の情報を集める。
一夫多妻制のガルムンド王国。
強い獣人族の雄が王となって国を統べるらしいとは、ルルーシェルの解説である。
「私達、獣人族は強い存在に惹かれます。惹かれた相手が異性の場合、妻や側室になるのは当たり前なのですよ。」
「そうなの?」
ルルーシェルの説明に目を見開く。
妻は当たり前として、強い異性なら自分は側室でも良いの?
「ルルーシェル達、獣人族は自分の種を残そうとする本能が強く働くのです、ディア様。ですから、本能的に強い異性を求めて家庭を作るんだそうです。」
ロッテマリーがルルーシェルの説明を補う。
「妻や側室の数が獣人族としての強さの証。その証拠に、今のガルムンド王国の国王の後宮には多くの側室がいるそうですよ?」
「なるほど。」
種族も違えば、文化も変わると言う事ね。
確かに、自分達の種を多く残すと言う行為は、誰にでもある本能だろう。
当然、強い子孫を残そうと考える。
その結果、獣人族は強い雄の一夫多妻制が出来上がると言う事らしい。
「んー、そんなに多くの妻や側室がいれば、王家は王位の継承問題があるんじゃない?」
「はい、熾烈な様ですね。時には、殺し合いも起きると父から聞きました。」
「ルルーシェル達、獣人族は強さが全て。強きものが群れを率いるのは必定ですので、武術大会が王位を継ぎたい王子達の登竜門なのだそうですよ?」
「まさか、武術大会で優勝した王子が次代の王候補?」
「そうです。」
少し困ったようにロッテマリーが笑う。
「実はルルーシェルもガルムンド王国の王家の血を引く者の1人なのです、ディア様。」
「はい?」
私のルルーシェルがガルムンド王国の王家の血を引いている?
まさかの事実に唖然とする他ない。
「私が王家の血を引いていると言いましても、先先代の王の末の子が父だっただけなのですが。」
ルルーシェルが頬を掻く。
「当時の王が自分の息子や娘ほどの年齢の女性との間に生ませたのが私の父なのです。」
「まさか、お祖母様は王に寵愛されてた?」
「それはもう、街に暮らす祖母を攫うように王宮へ連れ去るほどに王から寵愛されてたようですね。お祖母様が幸せだっかと聞かれたら、困りますが。」
一国の王が人攫い!?
さきほどから驚きの連続である。
「先代である兄の息子よりも幼い弟と言う立場で、父は苦労したようです。それ故、父は私と母を連れてリュストヘルゼ帝国へと向かったのだと聞きました。」
「王位の継承問題があるものね。ルルーシェルのお父様が当時の王に溺愛されてたのなら、先代王は弟を自分の王位の継承の邪魔に思い、排除しようと動いたはずだもの。」
手っ取り早く、自分の確実な王位継承の為に邪魔なルルーシェルのお父様の暗殺とか?
父王が溺愛する寵妃の為に、ルルーシェルのお父様に王位を明け渡す事も考えられるからね。
「・・まぁ、王宮で暮らしていた小さい頃は、何度か父も身の危険を感じたようですね。毒殺や、暗殺とか。」
「王宮の闇が怖い!」
なんと魔の巣窟での生々しい話だろうか。
恐ろしい。
「・・ルルーシェル、お父様は?」
父親の話を聞かない。
それと、ルルーシェルの母親の話も。
「父は私が10歳の頃に亡くなりました。母は、リュストヘルゼ帝国へ行って数年後に。」
「ご両親を亡くし身寄りのないルルーシェルを、私の父が引き取りました。」
ルルーシェルの肩に手を置くロッテマリー。
「ふふ、大丈夫です、お嬢様。」
気遣わしげなロッテマリーへルルーシェルが微笑む。
「ディア様、ですからロッテマリーお嬢様と父君に私は感謝しているのです。身寄りの無くなった私を受け入れてくれた恩人ですから。」
「そう、だから2人の絆は固いのね。」
「はい。」
誇らしげにルルーシェルは頷く。
「んー、なんか、ルルーシェルをガルムンド王国へ連れて行って大丈夫なのか不安なんだけど。女性も王位の継承が出来るのかしら?」
「女性の王位の継承、ですか?」
ルルーシェルが首を傾げる。
「確か、ガルムンド王国で女王が即位する事はなかったはずです。」
「ルルーシェルが王や王子より強くても?」
心配なのは、そこ。
獣人族は力が全てなんでしょう?
だったら、ルルーシェルが王族に目をつけられる可能性が出てくるのではないだろうか。
主に王位継承の件で。
「いや、逆にルルーシェルを王や王子の側室として強い子供を生ませようと考える?」
しかも、ルルーシェルの中に流れるのは王家の血。
十分、考えられるんだけど。
「王位に遠い王子で野心家なら、ルルーシェルの血筋や力を知って利用しようとするかも!」
陰謀渦巻く王宮。
さて、どうしたものやら。
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