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リセット〜絶対寵愛者〜【完結】  作者: まやまや
第11章〜勇者編〜
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捕縛

私へ恭しく一礼したリリスが影の中に溶け込む。

クレイシュナの元へ向かったのだろう。



「さて、彼らはクレイシュナの差し向ける兵達からどれぐらいの間、逃げ続けられるかしらね?」



精々、みっともなく足掻きながら逃げ惑え。



「ふふ、特等席で見物といきましょう。彼等がとことん落ちぶれていくところを。」



楽しみだとひっそりと笑う。

ショーの始まりだ。



「あっちにいたぞ!捕まえろ!」

「あの者達を絶対に逃がすな!」



私が見守る中、犯罪者となった元クラスメイト数名の捕縛が始まる。

罪なき自分が守るべき民から搾取した元クラスメイト達に激怒し、すぐさま兵を差し向けたクレイシュナ。

その動きの早さに、彼女の怒りの強さが見えた。



「くっ、離せ!」

「ちょ、私達を誰だと思っているの!?」

「そうだ、俺達は勇者一行なんだぞ!?」

「痛い、私に触れないで!」



私の目の前では、滑稽にも兵達に捕縛されながらも暴れる元クラスメイト数名。

・・彼らはバカなのだろうか?

いつまで過去の栄光にしがみ付き、縋ると言うのだろう?

路地裏に潜みながら、呆れるしかなかった。



「俺達は何も悪くない!」

「そうよ、悪いのは全部、あの男、相馬凪じゃないの!」

「どうして俺達がこんな目に合うんだよ!」



彼らは恨む。

自分達をこんな目に合わせた相馬凪を。

悪いのは全部、相馬凪のせい。

自分達は何も悪くないと、自らの罪から目を逸らして。



「今さら言い訳などするな、見苦しい!大人しく罪人として城まで連行されろ!」



そんな彼らに、兵達から怒号が飛ぶ。

弱き民から搾取した犯罪者を、この国を愛する兵達が許すわけがない。

無理矢理、自分達は何も悪くないと暴れる元クラスメイト数名を連行していく兵達。

ご苦労様である。



「ほら、元勇者一行だよ。」

「犯罪行為をしたんだろう?」

「そのせいで、何人か大怪我したって聞くぞ?」



そして、住人達も。

誰もが犯罪者となった元勇者一向へ敵意を向ける。



「あいつらによって大怪我した人達は、聖女様が癒してくれたらしい。」

「お優しい方だ。」

「我々みたいな民にも癒しを施してくださる。」

「まさに聖女の名に相応しい方だ。」



クレイシュナへは感謝する。

優しき聖女は、失墜した皇国の希望となっていった。



「これで、クレイシュナは動きやすくなりそうね。まだまだ、この国を統べるのにクレイシュナは幼いと侮る人達も多いみたいだし。」



ニュクスお母様や精霊王のお墨付きもあると言うのに、愚かな事だ。

そんな人達は粛清されるだろう。

爪を研ぎ、家族をも追い落としたクレイシュナによって。



「後でクレイシュナに兵達を労わるよう言っておこう。兵達も喜ぶだろうし。」



胸の内に書き留めておく。

兵達に連行されて行く元クラスメイト達の姿を見送り、私のはクレイシュナの待つ城へ飛んだ。



「ーーー・・この様な再会を、とても残念でなりません。」



会見の間。

拘束されたままの元クラスメイト数名をクレイシュナが冷ややかな目で見下ろす。



「しかし、元勇者一行様達とは言え、犯罪を犯した者達を許す訳には参りませんわ。ご理解いただけますよね?」

「っっ、そんな!?」

「そんなの、あんまりです!」

「こうなったのも俺達を無理矢理にこの世界へ連れて来たくせに、放逐したお前達が悪いんだろう!?」



罵声がクレイシュナへ向かう。



「あら、可笑しな事をおっしゃいますね?ニュクス様の愛し子であるディア様から、この世界で生きていけるだけの知識を貴方方にしっかり教育したとお聞きしましたが、違うのですか?」

「っっ、そ、れ、は、」

「だが、放逐するなんて酷いだろ!?」

「どうやって私達は生きていけと言うの!?」

「どうやって?」



細まる、クレイシュナの瞳。



「何度も言いますが、その知識はディア様より与えられたでしょう?貴方方は、その与えられた知識を使わず、ただ楽な方へ逃げただけです!」



クレイシュナの叱責が飛ぶ。



「確かにこの国に召喚した事は私達、国の咎です。しかし、自分達の犯した行為を顧みず、他者にばかり責任を押し付けるのは良い加減にお止めなさいまん!」

「なら、あちらの世界へ帰してくれ!」

「っっ、そうよ、私は日本に帰りたい!」

「こんな世界、もう嫌だ!」



わっと、元クラスメイト数名が泣き出す。



「故郷に帰りたいと願う皆様のお気持ち、お察しいたします。ですが、皆様が故郷に帰る手段はないのです。」

「「「ーーーっっ、」」」



彼らの瞳に絶望の光が宿る。



「それに、皆様にはご自分達が犯した罪への罰を受けてもらわねばなりません。」



椅子から立ち上がるクレイシュナ。



「我が聖皇国パルドフェルドの法のもと、貴方方の罪を精査いたしますわ。その日まで、どうか牢の中でお静かにお待ちください。」



一瞥を向けたクレイシュナは背を向け歩き去る。

その場に残るのは、呆然とする元クラスメイト数名達だけ。

すぐに兵達によって連れ出される事になる。



「っっ、ど、して、」



ーーー自分達は、こんな事になったの?

誰かのそんな呟きが、兵達によって連れて行かれた冷たい牢屋の中に響き渡った。



『元勇者一行が、犯罪に手を染めたらしいぞ!』



噂は広がる。

聖皇国パルドフェルドから出た元勇者一行達の末路は・・。



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