カティアの怒り
落ちる沈黙。
カティアの言葉に誰もが固まった。
「ふふ、精霊王の加護を与えられるのって難しいのでしょう、カティア?」
「当たり前よ。私達精霊王が簡単に加護を与える事はないわ。」
頷くカティア。
「だから、本当なら私の加護を得たコクヨウは貴重な子なのよ?普通なら、大事に育てられるはずなだけど、お前達の価値観は普通とは違う様ね。」
コクヨウの両親にカティアが冷ややかな目を向けた。
「ーーっっ、闇の精霊王様の加護をあんな化け物が受けているですと!?」
「嘘ですよね、精霊王様!?」
カティアに涙を滲ませながら縋るコクヨウの両親。
必死である。
だって、自分達がした事は、ニュクスお母様の使者として世界の安念に尽力している精霊王の加護を得た子を迫害してきたのだから。
「あら本当よ?そんなコクヨウを虐げ、見捨てた行為の代償を払う覚悟は出来ているのよね、貴方達は?」
「「っっ、!?」」
みるみる内に青ざめるコクヨウの両親の顔。
2人は恐怖に後ずさる。
「ディアちゃん、私もこの2人の事を許せないの。貴方の復讐の手助けをするわ。」
釣り上がるカティアの目。
「嬉しいわ、カティア。一緒に楽しみましょう?」
カティアと2人で微笑み合う。
前世からコクヨウの魂を気に入ってるカティアとの共闘です。
全く負ける気がしない。
「で、さっきから私の旦那様の事を化け物呼ばわりですけど、謝罪は?お義父様、お義母様?」
「闇の精霊王たる私が加護を与えるくらい気に入っているコクヨウの事を化け物呼ばわりしたんだもの、もちろん、他の皆も謝ってくれるのよね?」
カティアと2人、満面の笑顔を周囲へ向けた。
許すまじ!
「後、他の皆さんもですよ?先ほど、私の大事な夫を、闇の精霊王の加護を得た方を侮辱し、罵りましたから、当然、謝罪はいただきたいんですけど?」
先ほどコクヨウの事を貶した者の顔と声を私達は忘れてなんかいないよ?
全員、私とカティアの敵認定にロックオンされております。
カティアとコクヨウの両親と周囲を攻める。
「当然、土下座でしょう?コクヨウに心かの謝罪をするなら、ね?」
「あら、良いわね!」
「ふふ、ルドボレーク国でも、貴族の皆さんが謝罪の時にしてくれたんだよ?だから、これが誠意ある謝罪として皆さんもしてくれるでしょう?」
簡単な謝罪で許すものか。
じっくりと、その身でコクヨウへの誠意を見せてもらいましょう。
「コクヨウの事を鑑定持ちの方に見ていただいていたら、この結末は変わったはずなんですよ?お義父様、お義母様、そう思いません?」
コクヨウが持つ『闇に愛されし者』の称号を与えられるような存在が精霊王以外にいるだろうか?
あの頃、コクヨウの事を鑑定していたらな、その価値は分かったはずなのだ。
「ただ黒い瞳と言うだけで、貴方方は自分の息子であるコクヨウの事を家の中に隠した。自分達の保身や見栄の為だけに。」
その時のコクヨウの気持ちなど、何も考えもせずに。
全ては自分達の保身の為。
『化け物』を生み出したと言う汚名を聞きたくなかったからでしょう?
「分かる?コクヨウがどんな気持ちだったか?」
期待して、絶望する。
決して自分は愛される事のない日々。
「ーーー・・ねぇ、貴方達も、拠り所を奪われる恐怖を思い知るべきではないかしら?」
うっそりと微笑む。
「っっ、一体、何を・・!?」
「愛し子様、どう言う事でしょう!?」
「分からない?精霊王たる方の加護を受けた者を害した貴方達が信仰の場に相応しくないと言っているのよ。」
「「なっ!?」」
愕然と、コクヨウの両親が目を開く。
「これから先、ニュクスお母様の愛し子としてお前達が一切の信仰の場に立ち入る事を禁ずる!ふふ、もっともお前達に相応しい罰でしょう?」
思い知れ。
自分達が犯した罪の重さを。
「っっ、あぁ、そ、んな、あんまりです、愛し子様!」
「理不尽な!」
コクヨウの両親が、大粒の涙を流して地面に崩れ落ちた。
「理不尽?なら、幼く何も出来ない子供を虐げ、売り払う事は当然の行いと言うのか!」
ふざけるな。
どこまで、自分本位なのか。
「本当、どうしようもない人間ね。今だに自分達が悪いなんて思わないんだから。」
ぶちぎれれば、カティアもキレる。
「私も罰として、加護を与えしコクヨウを非難したお前達にしばらくの間、闇の祝福を与えない。それが私からの罰。」
カティアの手に闇が圧縮されていく。
「今、この瞬間に全ての闇は我が元へ帰った。闇魔法、そして、夜もお前達の元へは来ない。」
冷徹に周囲を見下ろすカティア。
「お前達の罪の大きさを身をもって知れ!」
カティアが吐き捨てた。
後に一切の闇魔法、夜が消えた現象を引き起こした者達に対して民衆が激怒し、貴族と教会の権威が大きく失墜する事になる。
よろしければブクマ、良いねボタン、感想、そして誤字報告お願いします




