帰る場所
ここに来れて、良かっと思う。
たくさんの思いと愛情を知れたから。
ニュクスお母様に別れを告げ、私達は夢から覚める。
「ディア様!」
「あぁ、良かったです!」
目覚めた私達を全員が涙を浮かべて喜ぶ様は、側から見たら異様としか言えなかった。
「・・・愛されてるって事よね?」
うん、皆んなから愛されてるって事にしておこう。
そう自分を納得させる。
「ディア様、ニュクス神様とのお話は、いかがでしたか?」
不安そうな顔のアディライトに微笑む。
「アディライト、大丈夫よ、とても良い方だったもの。心配知る様な事は何もないわ。」
「それは良かったです。」
表情を緩ませて、ほっと安堵するアディライト。
「でね、ニュクスお母様から新しく称号をもらったの!」
「・・はい?」
アディライトが首を捻る。
「ニュクスお母様?新しい称号?」
「そうだよ?」
頷く私に、アディライトは絶句した。
あの場にいなかった全員が、同じ様に絶句しながら呆然と立ちすくむ。
硬い表情でアディライトが口を開く。
「・・ディア様は、まさかニュクス様をお母様とお呼びする栄誉を得たのですか?」
「あ、うん、そう。ニュクスお母様から、私の娘ってお墨付きも貰ったよ。」
「・・・・そして、新しい称号を得た、と?」
「ニュクスお母様達から『神の愛娘』、『全精霊王に寵愛される者』の2つをもらったよ?」
「っっ、」
ふるふると、アディライトは俯きながら身体を震わす。
「ア、アディライト・・・?」
「ーーーっっ、ディア様が、私達の至高の主人がニュクス様をお母様とお呼びする事を許され、『神の愛娘』、『全精霊王に寵愛される者』と言う2つの称号を得るなんて、なんて素晴らしいのでしょうか!!」
身体を震わせて俯くアディライトへ手を伸ばせば、顔を上げて歓喜に涙を滲ませ始める。
「あぁ、私達のディア様は、本当に女神の愛娘なのですわ!」
うっとりするアディライト。
あまりに熱い眼差しに、私の頬が引き攣った。
あ、あれ?
「アディライト、落ち着いてください。そう興奮しては、ディア様もお困りになりますよ?」
興奮するアディライトの事を、コクヨウが宥める。
「その後にディア様から詳しく詳細を教えてくださいます。ねぇ、ディア様?」
困惑する私の肩にコクヨウの手が置かれた。
「うん、もちろん。色々と驚きな事があったけど、増えた称号とか皆んなに隠す事じゃないから。」
もちろん、他人には隠すけどね。
『神の愛娘』や『全精霊王に寵愛される者』なんて称号を得たことが知られたら、どの様に利用されるかわかったもんじゃないもの。
「あっ、そう、ですわね、申すわけございません、ディア様。直ぐにお疲れなディア様にお茶をご用意いたします!」
慌てて動き出す、アディライト。
「・・いや、私、ただベッドで寝てただけなんだけど?」
疲れる要素がある?
「例えそうだとしても、ディア様のお心は消耗されているはずです。色々と知らされたもですから、今は休息して下さい。」
コクヨウに抱き上げられ、ソファーへ運ばれる私。
もちろん、私が座る定位置はコクヨウの膝の上に、である。
「むぅ、大丈夫なのに。」
尖る私の口。
「ふふ、可愛い妻を甘やかさせてください。」
「・・ちょっとだけ、だよ?」
「はい、私のディア。」
コクヨウが嬉しそうに微笑んだ。
「むむ、コクヨウだけとは、ずるいですよ、ディア?」
「ディア様を呼び捨てなんて羨ましい!」
「私達もディア様の事を呼び捨てにしたいです!」
口々にコクヨウに言い募る、ディオン、オリバー、アレンの3人。
「んー、交代制にする?私は、それでも良いし、私の名前も呼び捨てにして平気だよ?」
ぱっと輝く3人の顔。
上機嫌な4人に甘々に溺愛された私は、居心地の良い腕の中で久しぶりに心から笑えた。
夜の帳が落ちた頃、私は自分の従魔であるリリスを呼び出す。
「リリス、勇者の、相馬凪についての詳しい情報集めをお願い。」
あの男の名前を呼ぶのも不快だ。
だが、しかし、あの男の情報集めは重要なのだ。
「ーーっっ、!?」
大きく見開くリリスの瞳。
「頼めるかしら?」
「・・ディア様、よろしい、の、ですか?」
「うん、必要な事だから。」
こくりと頷く。
「あの男は、私の敵だよ。これ以上に、相馬凪の情報を集める理由がいる?」
敵、なのだ。
例え、この世界でまだ何もされていなくとも、あの男の存在自体が私にとっての害悪。
「なら、早急に排除するべきでしょう?」
私のものに手を出す前に。
「かしこまりました、ディア様のお望みのままに。」
恭しく、リリスが首を垂れた。
「でも、1つだけ約束して?必ず私の元へ帰って来ると。」
「はい、約束いたします、ディア様。」
リリスが私の手を握る。
「私が帰る場所は、ディア様の所だけです。」
「ん、」
必ず、私の元へ帰ってきて。
私のリリス。
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