ルドボレーク国
私の為に宿の手配をしてくれたアイリス達。
嬉しそうに頬を染めるアイリス達だが、冒険者としても超一流の子達なのだ。
私達に続き、次にSランク冒険者になるのもアイリス達だと思われる。
「いいえ、ディア様のお役に立てることこそ、私達の何よりの喜びでございますので。」
私からの労いに瞳を潤ませ、感激する子達。
本当に可愛い子達である。
「何か欲しいものとかある?今回のご褒美にするから、何か希望があるなら遠慮なくいってね?」
「・・ほう、び、ですか?」
「うん、何かある?」
アイリスが口元を手で覆う。
「・・それは、何でも、よろしいのでしょうか?」
「ん?私が与えられるものならね?何か欲しい物でもあるの?」
可能な範囲で叶えますとも。
「っっ、では、誠悦なお願いなのですが、ディア様に抱き締めていただきたいです!」
「「「私(僕・俺)達も同じでお願いします!!」」」
全員からのお強請りに驚く。
「・・え、そんな簡単な事で良いの?」
それ、ご褒美になる?
ただ抱き締めるだけだけなんだけど。
「もちろん、それが私達の何よりのご褒美になります!」
「一生分のご褒美と言っても過言ではありませんね。」
「それだけで、どんなモンスターでも倒せそうです!」
アイリス達が深く頷く。
きらきらと期待に輝く、全員の瞳が私の方へと向く。
「なら、良いよ?」
逆に、そんなので皆んなに悪い気がする。
あとで他のご褒美も考えよう。
「「「「ありがとうございます、ディア様!」」」」
一通り全員の希望通り、ご褒美でハグし終わり、頬を蒸気させたアイリス達がルーベルン国の屋敷へと転移で戻って行くのを見送る。
「あんなので満足するなんて、変わった子達ね。」
しみじみ思う。
皆んな私に対して、盲目的に崇拝しすぎだと思う。
私は普通の一般庶民なのに。
ただ抱き締める事がご褒美になんてならないと思うんだけど。
「ふふ、ディア様、私はそんな事ないと思うますよ?」
「アディライト?」
「こんなにも美しく、慈悲深く、お強い方はこの世界にはいませんもの。」
うっとりとするアディライト。
「このアディライト、ディア様にお仕えでき、とても幸せです。」
「・・あぁ、うん、ありがとう。」
引き攣る私の頬。
・・・ここにも、私信者がいたよ。
「さ、さて、私は明日からのルドボレーク国の散策場所を考えようかな?」
アディライトから目を逸らす。
現実逃避は大事よね!
アイリス達が作成したルドボレーク国の詳しいお店のマップに私は視線を落とす。
「うわ、ルドボレーク国のお店が詳しく書いてある。」
感心する。
リリスからの手伝いがあったとしても、ここまで精密に、なおかつ丁寧にお店までの道順まで書かれているなんて感動した。
作るの大変だったろうな。
「うん、やっぱり他にもアイリス達にご褒美を買っていこう!」
この手作りマップもあるし。
色々なお店を見て回って、アイリス達のご褒美を探そう。
決意して、マップに目を通した。
「あれは何だろう?」
これから開催される海竜祭の為か、街中で出店が多く出ている。
何とも喜ばしい事だ。
アイリス達お手製の詳細なお店の位置のマップを手に、私達はルドボレーク国の街中を歩く。
「あっ、あれも美味しいそう。」
あっちへふらふら。
「なんかあっちから良い匂いがする。」
こっちへふらふらと、気の向くままに出店を堪能する私。
幸せである。
「ディア様、汚れた手をお拭きしますね?」
「ん、ありがとう、アディライト。」
アディライトや他の皆んなに甲斐甲斐しくお世話され、見守られながら出店をはしごする。
どこも食べ物が美味しいので、大満足な私。
太りそうな気分。
「ディア様、そろそろーーー」
「・・アディライト?」
アディライトの声に被さり、呼ばれた名前に全員が振り向く。
私達の後ろにいたのは、1人の青年。
「・・トム?」
驚きに目を見開いたアディライトが、1つの名前を呟いた。
どうやら、目の前の青年の名前らしい。
「・・・やっぱり、アディライト、なんだな。」
「えぇ、そうよ。久しぶりね、トム。」
顔を強張らせた、トムとアディライトに呼ばれた青年が私達の方へと近付いてくる。
当然のように、私の前に立つコクヨウ達。
「ディア様、暫く僕達の後ろへ。」
「あっ、うん。」
コクヨウの言葉に頷き、近付くトムを見つめる。
「・・あれ、あの子。」
コクヨウ達の後ろから顔を出し、私はじっとトムの顔を見ていた私は気が付いてしまった。
「アディライトの事しか見えていない?」
トムの瞳は、アディライトの事だけを見ている。
アディライトの側にいると言うのに、私達の事は眼中外のようだ。
ふむ、これはーーー
「恋、ね。」
知り合いみたいだし、アディライトがトムの初恋相手だったりして?
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