冬華
大会の日まで、ギリギリまで刀の改良を続けたルミアとルルキ。
ルミアの疲労の色は濃い。
その横では、弟のルルキも、ぐったりとしている。
「っっ、で、出来ました!!」
歓声を上げるルミア。
そして、ついに完成した武器がこれだ。
刀
レア度:特殊
機能:所有者制限、重力軽減、貫通、氷付与、ステータスダウン
製作者:ルミア
素晴らしい出来である。
この仕上がりに、文句のつけようもない。
「うんうん、良くここまでの作品を完成させたね、ルミア、ルルキ。今日までお疲れ様。」
「頑張りました。」
「へへへ、」
2人とも疲労の色はあるが、誇らしげな顔で笑う。
「・・あの、ディア様?」
「ん?」
「出来れば、この刀に名をディア様からいただけませんか?」
「えっ、ルミア、私が決めて良いの?」
ルミアのお願いに、目を見開く。
てっきり、ルミアが自分で名付けると思ってた。
驚きのお願いだ。
「はい、この刀は、ディア様の為に作り、そして捧げるもの。なれば、この刀はディア様に名付けていただきたいのです。」
縋るような眼差しを向けるルミア。
「・・分かった、この刀に相応しい名前を考えるわ。」
「あ、ありがとうございます、ディア様!」
ルミアが口元を綻ばす。
とは言っても、この刀の名前、かぁ。
しげしげと眺める。
「ーーー・・『トウカ』。」
思い浮かぶ、1つの名。
ポツリと呟く。
「トウカ、ですか?」
「私の生まれた場所で、冬の華という言葉でトウカ。どう?」
「トウカ、冬の華。はい、とても気に入りました。」
ルミアが噛み締めるように呟く。
刀 :冬華
レア度:特殊
機能:所有者制限、重力軽減、貫通、氷付与、ステータスダウン
製作者:ルミア
改めて鑑定してみれば、ちゃんと名も表示されている。
「うん、ちゃんと名前もついたね。」
「はい、ディア様。ありがとうございます。」
嬉しそうに、ルミアが微笑む。
「あぁ、しかも、まさか私が特殊級の武器を作れる様になるなんてっっ、」
感慨もひとしおのようだ。
「これも全て、ディア様のおかげです!」
「ふふ、大げさね。」
「いえ、大げさではありません。ディア様、私の女神ですもの。」
真顔で言い切るルミア。
どうやら、ルミアの私への崇拝度が上がってしまったようだ。
ルルキも同意と言わんばかりに頷いている。
「では、このトウカを今回の大会へ出そうと思います、ディア様!」
「了解。」
このトウカなら、優勝も間違いなし。
大会が楽しみ。
「なら、ルミア、ルルキ。」
「はい?」
「何でしょう?」
「2人とも、しばらく休みなさい。」
隈がすごいからね。
2人の身体の事が私は心配だよ。
「えっ、ですが、」
「ディア様、僕達なら、まだ大丈夫ですよ?」
「ダメ、休みなさい。」
まだまだ働きそうな2人の事を嗜める。
無理は許しません。
「これは、私からの命令です。」
本当は、こんな風に命令なんかしたくなんだけど。
が、仕方ない。
これも、2人の為だ。
「2人とも分かった?ちゃんと休むのよ?」
「・・はい。」
「かしこまりました。」
残念そうな顔だけど、了承する2人。
「ちなみに、2人の監視としてリリスの事をつけるから、そのつもりで。」
「「!!?」」
驚愕に染まる2人の顔。
「・・まさか、こっそりと作業するつもりだったの?」
「「・・・。」」
逸らされる、2人の視線。
・・図星か。
「はぁ、リリス、2人の監視を徹底的にお願い。」
「ディア様、かしこまりました。」
ルミアとルルキの2人に半目になる私の足元の影が蠢き、リリスの了承の声が。
私は、良い笑顔を2人に向ける。
「休むよね、2人とも?」
「「・・はい。」」
ヒクつく、目の前の2人の顔。
これ以上の抵抗は無意味と悟ったのか、2人はすごすごと自分の寝室へと向かって行った。
「まったく、しょうがない子達なんだから。」
そんな2人の背中を見送る。
「大会の日まで、2人ともゆっくりやすませましょうか。」
もちろん、リリスの監視下で。
「うん、見張っていないと、隠れて新しく何かを作りそうだしね。」
案の定、リリスがいなければ隠れて作業しそうな2人の事を叱り、寝室に送り返してを繰り返しながら迎えた大会当日を迎えた。
良く晴れた、大会当日。
私達は余裕を持って、全員で会場へと向かう。
「・・襲撃、有りませんね。」
トウカを手に私の後ろを歩くルミアが硬い表情で小さく呟く。
どうやら、襲撃を警戒しているらしい。
「ルミア、大丈夫よ。」
「大丈夫?」
「あの男の手下の中に、私達に勝てる相手なんていないもの。」
色々と企んではいるようだけどね?
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