拒絶
人は皆、何かを得る為に非道な選択をする。
私も、コクヨウ達も。
選択には、何かしらの犠牲がつきもの。
それでも、人は禁断の果実を求めずにはいられない。
何を犠牲にしても。
「ふふ、王子殿下方、お分かり、いただけまして?」
呆然と私を見つめる3人の王子様達に、ふわりと微笑む。
「お分かりいただけたなら、私への、その気持ちはお忘れ下さいな。」
迷惑なので。
すっぱり忘れる事を、強くお勧めいたします。
「簡単ですわよね?」
首を傾げる。
「私の事など、何1つとして王子殿下方は知りませんもの。」
甘く王子達へと毒を流し込む。
もちろん、私は一目惚れを否定する気は無い。
が、私のこの無駄に良い外見だけで好きになられても困る。
「その気持ちも一瞬の気の迷いでは?」
そうでしょう?
私への王子達の思いを疑うのも致し方ない事。
「私の好みも、趣向さえ知ろうともなさいませんでしたしね?」
それをいまさら、本気だと言う。
笑わせるな。
「「「っっ、」」」
言葉に詰まる、王子様達。
事実である。
パーティーの時に色々と質問してきた王子様達を適当にあしらってきだが、どうしても私が好きなら、何度でも聞き出すはずだ。
「一体、王子殿下方は、その程度の思いしかない私に対して何をお望みなのでしょうか?」
愛玩動物?
意志のいらない、お人形?
「私にも意思があるのです。王子殿下の隣にいるだけで良い妻をお望みなら、他の方をお選びください。」
「っっ、私、は、ただ、ディアレンシア嬢、貴方が、好きで、」
アレン王子が声を振るわせるのを、冷ややかに見据える。
健気な告白に心が動かない自分は、本当に冷たい人間だと思う。
しかし、仕方ないのだ。
「・・それで?アレン王子は、私に何をお望みなのです?」
「ディアレンシア嬢にも、私を好きになってもらい、側にいてくれれば、」
「そんな口先だけの言葉など、私は不要ですわ。」
アラン王子の言葉をぶった切る。
一欠片の誠意の見えない言葉ほど、心に響かないものはないのだから。
「ーーお話は以上でよろしいですよね?」
固まる王子達を見つめる。
あんに、私にこれ以上話す事はないと言う意思表示を示す。
「では、これで私達は帰らせていただきます。王様、ミンティシア様の護衛の件は、お考え下さいませ。」
席から立ち上がる私。
「ーー・・あぁ、最後に、ご自分の中の優先順位をはっきりと付けておかないと、後で痛い目を見ますよ、王子殿下方?」
これは、私からの優しさである。
彼らは王族としてこのまま生きていくのであれば、冷酷になってでも誰かを切り捨てていかねばならないのだから。
「それでは、本日は楽しいお茶会にお呼びくださり、ありがとうございました。これで失礼いたします。」
私は決めたのだ。
今の自分の家族だけを大切にするのだと。
他の何よりも。
「ミンティシア様の護衛についてのお返事、お待ちしておりますわ、王様。」
一礼した私は背を向けて歩き出す。
特に引き止める様な声もなく、お茶会を終わらせた私達は、ようやく、王城から屋敷へと戻ることが出来た。
「・・はぁ、疲れたわ。」
ベッドに倒れ込む。
「お疲れ様でした、ディア様。もう少し休まれてから、お風呂になさいますか?」
「ん、アディライト、そうする。」
問うアディライトに頷く。
しばらくは、もう何もしたくない。
「コクヨウ、ディオン、私とフィリアとフィリオの3人は食事の支度の方を手伝いに行くので、ディア様の事をお願いしますね?」
「もちろんです、アディライト。」
「ディア様の事は、私達に任せて下さい。」
交わされる、過保護な会話。
・・あの、私1人でも平気なんだけど?
私そっちのけで会話を終わらせたアディライトは、フィリアとフィリオの2人を連れて部屋から出て行ってしまう。
「ディア様、少し眠られますか?」
「それとも、何か暖かい飲み物でもご用意した方が良いですかね?」
そうなれば、必然と私の世話を甲斐甲斐しく始めるのはコクヨウとディオンの2人で。
ダメ妻である。
「ごめん、眠らない。でも、紅茶が飲みたい。」
が、2人に甘える私。
「分かりました、用意してきます。」
「ディア様、起きられますか?」
甘える私に、2人は微笑む。
ーーこうやって私が甘える事を、2人が喜ぶと知っているから。
「んー、紅茶、美味しい。」
紅茶で一息。
王城で出されたお茶も美味しかったが、こうして家でのんびり飲む方が良い。
一緒にお茶を飲む相手もコクヨウとディオンの2人だから、リラックスが出来るし、とても落ち着ける。
「王様から王女様の護衛の件に対する返事があるまで、もう王族とこれ以上関わる事は無いでしょうけど、王子達が厄介だわ。」
溜息を吐く。
王子達も、私を諦めると良いのだけど。
どうだろう?
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