精霊樹の価値
ロッテマリーとルルーシェルの2人からの詳しい皆んなの報告を受け、その結果、膨大な資金が貯まっている事を知った翌日。
冒険者ギルドで、今回の私達が討伐したモンスターの売却を済ませた私達。
「ーーまた、お金が増えちゃった。」
目眩がする。
かと言って、ずっと空間収納の中で討伐したモンスター達を眠らせて置くのも、ねえ?
ギルドを出て、肩を落とす。
「ディア様、これからお金を使う必要があるのですから、多少は減るのでは?」
「うーん、新しい奴隷の子を買うのにお金を大量に使うとしても、それでも笑えるぐらい余ってるからなぁ。」
アディライトの慰めも、今の私には意味をなさない。
だって、ルドヴィックさんのシーリン商会から私が考案した商品の分の収入も入ってくるんだもん。
「気分を変えましょう、ディア様。」
「うん?」
「新しい奴隷が増えれば、ディア様の気分も晴れるのでは?」
「・・そう、かな?」
コクヨウの提案に首を傾げる。
「ディア様が気にいる奴隷がいるかは分かりませんが、見てみるだけでも気分が晴れるかもしれませんよ?」
「ふむ、」
気晴らしのウィンドウショッピングって事ね。
確かに気分は晴れるかも。
「湖の屋敷にも、人出が必要だもんね?」
奴隷商回りも良いかも。
てな事で、さっそく皆んなで、初めにハビスさんのオーヒィンス商会へ向かう。
「おぉ、ソウル様、本日は当オーヒィンス商会へお越しいただき、ありがとうございます。」
「お久しぶりですね、ハビスさん。」
出迎えてくれたハビスさんと、にこやかに挨拶を交わす。
丁寧にハビスさんに室内に案内された私は、いつも部屋のソファーに座る。
「ソウル様、本日はどの様な御用でしょう?」
「実は新しく奴隷の購入を考えているのですが、ご紹介いただける子はいますか?」
「新しい奴隷がご必要なのですか?」
「えぇ、妖精の里で屋敷を得る機会がありまして、管理する者が必要なんですよ。それで新しく奴隷の購入を検討しています。」
「妖精の里!?」
驚きの声を上げるハビスさん。
「ソウル様は、あの迷いの森を抜けられるのですか!?」
「ディオンが、その里の生まれなのです。ですから、あの迷いの森も抜けられました。」
本当は、自力でも辿り着けるのだけど。
その事は言わなくていいだろう。
「・・なるほど、故郷、という訳ですか。」
腰を浮かしていたハビスさんは、背凭れに背中を預ける。
「何とも羨ましい事ですな。」
「羨ましい?」
「さようです。妖精の里は聖なる空気で満ち溢れている聖域なのですよ。しかし、誰も辿り着けぬ場所。」
「聖域。」
「しかも聖域には精霊樹の木があり、その葉は難病を治す薬、エリクサーの原料にもなるのです。精霊樹は、聖なる場所でしか育たないそうなので、とても貴重なのだとか。精霊樹の木も、魔法使いの魔力を増幅させるロットに使用すれば莫大な威力が得られるので、とても貴重品ですね。」
・・なるほど。
だから、アリアナは、その聖域を穢そうとしていたのか。
「精霊樹の葉や木は滅多に市場に出回らない品なので、高額で取引されるそうですよ。」
「ちなみに、精霊樹の葉は、いくらで取り引きされるんですか?」
「そうですね、私が聞いたところによれば、小さな国1つの国家予算だとか。」
「こっっ、!?」
小さな国1つの国家予算!?
目を見開く。
「はは、エリクサーは貴重な薬ですからね、しかも中々手に入らないとするなら国家予算ほどの取引になるのも当然の事です。そして、精霊樹の木で作られたロット類の武器も、伝説や秘宝級の武器となりますので、同じ様に高額での取引となります。」
「ーーディオン、本当?」
恐々、後ろのディオンへ振り向く。
「精霊樹の葉や木が貴重なのは、本当です。詳しい値段については、分かりかねますが。」
「・・本当、なんだ。」
「ディア様が精霊樹の葉や木が必要だと言うなら、手に入れますが?」
「へ?」
「ユリーファも、ディア様がご所望と知れば、あっさりとくれると思いますよ?」
頬が引き攣る。
小さな国1つの国家予算で取り引きされる貴重な葉や木を、簡単にくれるって。
「もしや、ソウル様は精霊樹の葉や木をお持ちなのですか!?」
食い付くハビスさん。
「どうか、少しで良いので精霊樹の葉や木を私に売ってください!」
奴隷の購入前に、別の取引が始まりそうです。
どうして、こうなった?
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