精霊王達の怒り
かなり弟くん達へお怒りらしいディオン。
嫌悪感を隠そうともしない。
「ーーもう、良い。」
ウンディーネの静かで冷ややかな制止の声に、その場が静まり返った。
精霊王の皆んなの怒りに、マスクルと母親を除く里の者達が身体を震わせる。
一様に、その顔は青を通り越して真っ白だ。
「思い上がりも甚だしい。」
「何と傲慢な。」
「かように驕るとはな、愚かしいにも程がある。」
「1番その様に子供達を育てた両親に責任があるけど、周囲の者達だって同罪だわ。」
マスクルと、その母親、そして里の全員へ厳しい目を向ける精霊王の皆んな。
お怒りですね、精霊王の皆さん。
「ムググよ、先ほどと言い、其方にこの地を任せている事が間違いの様ですね。己の妻1人も御せないばかりか、其方は息子さえまともに育てられないのだから。」
平伏するディオンの父親をが見下ろすウンデイーネが冷ややかに告げる。
「っっ、ウンディーネ様、お詫び申し上げます!なにとぞ寛大なお心でお許し下さい!」
「ならぬ!」
ディオンの父親からの謝罪を、ぴしゃりと撥ね付けるウンデイーネ。
まぁ、当然ですよねぇ。
誇り高い彼女達が愚弄されたのだから。
「不快だわ。」
「私達がこんなにも愚弄されるとは、気分が悪い。」
「しばらく下界へ来なかったからって、この様な扱いをされるとは思いませんでした。」
「少し私達の加護を与えたからと言って、何を勘違いしているのかしらね。」
ディオン以上に、この里の全員に嫌悪感を隠さな精霊王の皆んな。
「ウンディーネ、私もう限界。」
「私もよ、ウンディーネ。」
「ウンディーネ、私もこの里に住む全員が大っ嫌いだよ?」
ウンディーネに詰め寄り、次々に訴える他の3人の精霊王達。
「私も同意見です。」
同感とばかりにウンディーネが頷く。
「ムググ、私達は愛おしい子のディオンちゃんと最愛のディアちゃんと共にこの地を去りましょう。」
「何ですと!?」
「っっ、なぜですか、精霊王様!?」
言葉を失う他の里の住人。
その中でディオンの父親と弟くんの2人が揃って精霊王の皆んなへ声を上げる。
「精霊王様達は、私に祝福に来て下さったのではないのですか!?」
「黙れ!」
ディオンの弟くんへ一喝し、その口を噤ませるウンディーネ。
「思い上がるな、小僧。」
冷酷に。
また、冷淡に言葉を紡ぐ。
「これ以上、私達にその口を開くな。」
水が。
「ウンディーネの言う通り貴方の言葉は、とても不愉快なのよ。」
炎が。
「私達の事を、もっと怒らせたいかしら?」
風が。
「その身に私達の怒りを受けないと、己の無知さを全く理解しないの?」
土の魔法がディオンの弟くんへと殺到する。
その足元近くに落ちる、精霊王である4人の本気の攻撃魔法。
「ひっぃぃぃ!?」
その場に尻餅をつく、ディオンの弟くん。
ふっ、ざまぁ。
「王が見限ると決めたなら、他の精霊もこの場を去るでしょね。ふっ、他者を見下した事への罰です。」
冷笑を浮かべるディオン。
ディオンも、精霊王の皆んなの怒りは当然の報いと思っているらしい。
「ディア様、これで、お気は済みましたか?」
「えー?」
ディオンへ笑って返事を誤魔化す。
だって、ね?
「・・・っっ、一体、私の可愛いマスクルが何をしたと言うの?」
懲りてないみたい、だし?
今の私には風の精霊の力があるから、貴方の呟きは全て聞こえていますよ?
「あんな出来損ないよりも、私のマスクルは選ばれた子なのにッ!」
弟くんのお母様?
私のターゲットは増えた模様。
「・・ディア様の新しい玩具が増えたのですね。」
熱い眼差しを弟くんのお母様へ向ける私に、ディオンは諦めの溜息を吐いた。
「うふふ、ディオン、仕方ないでしょう?」
彼女は私の逆鱗に触れたのだから。
出来損ない?
「一体、誰の事かしらね?」
知りたいわ。
満面の笑みで微笑んだ。
「ディアちゃんが望むから、少しの間だけ里に止まってあげる。」
「ちゃんとディアちゃんへ感謝するのよ?」
「私達の可愛い子と最愛がいるから、他の精霊達も里から離れないのだから。」
「他の精霊達が離れて、この里がどうなろうとも、今の私達には関係ないもの。」
私とディオンの為に、まだこの里へ止まると言う精霊王の皆んな。
ナイスアシストです。
「さっさと、その不快な存在を私達の前から消しなさい、ムググ。」
ウンデイーネがディオンの弟くんと義母へ冷たい視線を向けた。
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