宣言
唐突に現れた彼女達。
身体は人間の女性と変わらないが、その背中には妖精族と同じ羽が生えていた。
私達に優しい眼差しを向ける4人の精霊達。
満面の笑みを私は彼女達へ向ける。
「久しぶりだね、皆んな。うふふ、精霊王の皆んなの事を急に呼んでごめんね?」
「急に呼び出して申し訳ありません、精霊王様。」
「あら、良いのよ?」
「ディオンちゃんとディアちゃんの頼みだもの。」
「2人ならいつでも呼んでくれて良いわ。」
「貴方は私達の特別だから気にしないで。」
謝る私と頭を下げるディオンに、精霊王たる彼女達は朗らかに返す。
「なっ、精霊王様ッ!?」
「精霊王様が御降臨された!」
「奇跡だ!」
突如現れた精霊王の4人に平伏し出すディオンの父親とエルフ族。
感激のあまり涙を流す者もいる。
「で、ディオンちゃん、私達を呼んだのはなぜ?」
「何かあった?」
「困り事かしら?」
「私達が力になるわよ?」
「ありがとうございます、精霊王様。今日は、私の生まれた故郷へ来たのですが。」
精霊王である皆んなへ平伏する自分の父親に冷たい視線を向けるディオン。
「妻であるディア様を一応、私の父親に紹介しようと里帰りしましたが、間違いだった様です。人間である私の妻の事を気に食わないみたいなので。」
「まぁ、ディアちゃんの事を気に食わない?」
「何様なの、ディオンちゃんの父親は。」
「ふふ、私達を怒らせいのかしら?」
「ディアちゃんを貶めるなんて、私達への挑戦ね。」
私達には友愛を。
ディオンの父親やエルフ族に対しては無機質な目で見る彼女達。
そんなやり取りに目を剥くのは、もちろん、ディオンや私を自分達の下に見ていた者達で。
「ディ、ディオン!?」
「・・はぁ、何ですか?」
震える声を上げた父親に、ディオンは面倒だと言わんばかりの表情を向けた。
その目は冷たい。
「せ、精霊王様の事をお前はお呼び出来るのか!?」
「ふふ、それだけではありませんよ?」
ディオンの代わりに口を開く。
父親の事を全て任せてばかりじゃ、ディオンが可哀想だしね。
「先程も精霊王達が言っていたでしょう?ディオンを私達の愛おしい子って。」
「っっ、!?」
ディオンの父親が言葉を無くした。
この世界で会えるはずのない女神を除き、妖精族やエルフ族である彼らにとって精霊が絶対の存在である。
なら、その絶対の存在である精霊がディオンの、私達の味方なら?
「貴方達が崇拝する精霊王である彼女達の愛おしい子であるディオンの事を見下すのは、いかがなものなのでしょうね?」
悪役は相手側となる。
完全に逆転した私達の優位性。
「ねぇ、ディオンのお父様?それでも、貴方はご自分は尊い存在だと思うのですか?」
私のディオンよりも。
毒を流し込む。
お前はディオン以下なのだと。
身の程を知れと嘲笑う。
「っっ、」
途端、目の前の屈辱に染まる顔。
妬み、嫉妬。
どろどろでした醜い感情がディオンの父親の心を蝕んでいく事だろう。
「・・・ムググ、と言ったか?」
「は、はい、精霊王達!」
水の精霊王、ウンディーネの声掛けにディオンの父親が歓喜の表情を浮かべる、が。
「宣言します、私達の愛おしい子であるディオンちゃんの伴侶となるのは、ディアちゃんであると。其方も、そのつもりで。」
「え?」
一気に顔が強張る。
「何です?まさか私達のディアちゃんでは不服だとでも言うのですか?」
「っっ、い、いえ、不服ではなく、なぜ、尊い貴方様達の血を引くディオンの妻に人間の娘をお認めになるのでしょうか?」
「・・ディアちゃんの事を見下すとは。一体、其方は何様のつもりなの?」
怒りに細まる、ウンディーネの瞳。
青い髪が怒りにうねる。
「私達のディアちゃんの事を、其方は無礼者扱いもしたようね?」
「っっ、も、申し訳ありません!」
「何を勘違いしているの?其方が謝るのは私にではありませんよ!」
ぴしゃりと、ディオンの父親からの謝罪を冷たく撥ね付けるウンディーネ。
取り付く暇もない、鮮やかな手並み。
「ーーす、素敵!」
尊敬する。
かっこ良すぎでしょう!
「ディア様の思惑通りになりましたね。」
ウンディーネの対応に感動する私を、ディオンの声が現実に引き戻す。
「ふふ、いいえ、私の思惑以上だわ。」
人間である私達を見下すだろうディオンの父親を見越して、1つ伏線を張る事にした。
そう、ディオンの父親達が信仰する精霊を呼び出すと言う伏線を。
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