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終了

タイトルがこんなんですが最終話じゃないです。

 サクヤとダンジョンを踏破した翌日の月曜日。昼休みにお弁当を食べながらメールの確認をしていると、一通メールが来ていた。


 差出人は桜夜だった。昨日のお礼メールかと思い内容を見る。


『こんにちは、桜夜です。突然なのですが、明後日の水曜日の終業式の後、どこか食事にでも行きませんか?前回はお母さんが邪魔しちゃって、結局どこにも行けなかったので』


「なんだ、依頼か?」

「まあ、そんなところだな」


 隣で昼ご飯を食べる誠が尋ねてきたが、適当にあしらった。後々面倒な事になるのは避けたい。


『終業式の後だけど、多分予定ないから俺は大丈夫だよ』

『待ち合わせ場所はどこにしますか?』

『当日に決めていいと思うよ。まだどこのお店に行くかも決まってないし』

『そうですね、当日、楽しみにしてます♪』


「やはり、依頼ではなかったか!」


 気がついたら誠が俺の背後に回り込んで、画面をガン見していた。面倒なことになってしまった。


「お前、人のメール見るのはマナー違反だぞ」

「なら、友人に嘘を吐くのもマナー違反と呼べるだろうな」

「うっ……その、これはどうしても必要な嘘で……」

「まあ、嘘を吐く気持ちもわかるぜ。つい先日、白金先輩とのスキャンダルが発覚したっていうのに、新しい彼女がいるなんてバレたら、いよいよ命の危機だもんな」


 誠がニヤニヤとした笑みを浮かべて、こちらに迫ってくる。


「そうなんだ。俺の運命はこうなった今、誠の言動に全て懸かっているんだ。だから、今のことは誰にも言わないでくれよ……?」

「まあ、友人のクウに免じて黙っておこう」


 真顔で誠が誓うが、正直なところ信用ならない。明後日に登校した時には既に知れ渡っていたりしそうだ。


 でも、水曜日か。何か用事があったような気もするんだが…


 少し頭の中で何かが引っ掛かったが、その何かはわからないまま昼休みは終わった。




 水曜日、終業式。俺達は教室に備えられているテレビで先生の話を聴いていた。


 昔は体育館に集まって三角座りで聞いていたらしいが、椅子に座って聞ける分、絶対こっちの方が楽だ。


 白髪の校長先生の話が手短に終わり、次に生徒指導の禿頭の先生が、配布されたプリントに書いてある事を読み上げていく。


 その後各持ち場に分かれて大掃除が始まり、それが終わるとホームルームで成績表たるものが返された。


 4に少し3が混じる成績を閉じ、鞄のなかに入れると、誠がこちらへやってきた。


「クウは成績どうだった?」

「3寄りの4だよ。そっちは?」

「5寄りの4」


 何食わぬ顔で自慢してきているように思えてイラッとくる。普段やってることはバカなのに、なんで俺より成績がいいんだよ。


 溜め息をついて端末を見ると、メールが一通届いていた。おそらく桜夜からの待ち合わせのメールだろうと思い、開ける。


『2年4組藍海空人君。ホームルームが終わり次第、いつもの会議室まで来なさい』


 マジか。


『俺、放課後用事あるんで手短に済みますか?』

『手短に済むとは思うが、まさか今日話す内容が分かっていないのか?』

『エスパーじゃないんですから、分かるわけないじゃないですか』

『そうか。とりあえず会議室まで来るように』


「例の女の子との待ち合わせか?」

「だと良かったんだけどな。先生からのお呼び出しだ」

「二週間前もこんなことあったな。クウ、お前やっぱり裏でアレな問題でも起こしてるんじゃないのか?」


 ん、二週間前……


「ああ、そうか……!」

「なに一人で納得してるんだよ」


 俺は本当に遅まきながら先生のメールの意味が分かった。こんな大事な事を忘れていた自分自身に俺は驚いてしまった。


 俺はホームルーム終了のチャイムと同時に教室を飛び出して、会議室に向かった。渡り廊下を走って、後館4階まで階段を駆け上がる。


 息を少し切らしてノックをすると、中から返事があった。


「どうぞ」

「失礼します」


 会議室に入るといつものように橋本先生が椅子に腰掛けていた。


「チャイムが鳴ってからまだ30秒しか経ってないぞ。そんなにその用事とやらに行きたいのか?」

「いえ、こんな大事なことを忘れていた自分に腹が立ったという言いますか、せめて先輩よりも早く着こうと思ったんです」

「なるほど、自分で気づけただけ百倍マシだな」


 先生が座るよう促すので、座って先輩の到着を待つ。


「この二週間、白金と過ごしてどうだった」

「そうですね……少なくとも今まで経験したことのない二週間だったと思います」

「当たり前だ。前からこんな生活だったというなら、わざわざこんなミッションなど課さん」


 先生がはぁ、と溜め息を吐いた。


「単刀直入に聞こう。楽しかったか」

「色々ありましたけど、でも楽しかったと思います」


 その時、ノックがあり先生が「どうぞ」と声をかけた。ドアの向こうから俺と同様「失礼します」の声があり、白金先輩が姿を現した。


「あれ、空人くんもう来てたの?」

「まあ、はい」

「白金さんに早く会いたかったんです、と言ってたぞ」


 先生のいらない発言に先輩が少し頬を赤くする。


「先輩、先生の言ってる事は嘘ですからね」

「えっ、じゃあ空人くんは私に会いたくなかったってこと……?」

「そういうわけじゃなくてですね……」

「藍海、素直じゃない男はモテないぞ」

「先生は黙ってください!」


 先輩がクスッと笑いながら席に着いた。それに合わせて先生が黙り、空気が少し張りつめる。


「よし、二人が今日ここに呼ばれた理由は分かっているな」

「はい」「はい……」


 俺達の返事に、先生が背筋を伸ばして通る声で宣言した。


「今日ここにおいて、二週間に渡るミッションの終了を言い渡す。お疲れ様」


 再び会議室が静寂に包まれる。


「と、まあこれで藍海君と白金さんの恋人関係も解消というわけだ。もちろん、ここで藍海君が白金さんに告白してもいいし、それを白金さんがフるのも全然構わない」

「本当に余計なことしか言いませんね……」

「それと、私はもう退出するが、この密室を利用してあんなことやこんなことをするのはダメだからな」

「しませんよ! そんなこと」


 最後まで茶化した先生が荷物を持って席を立ち上がる。俺も用事のため席を立ってドアノブに手をかけた、その時、


「藍海くん!」


 座ったまま俯いている先輩が俺を呼び止めた。


「どうしました?」

「その、い、今から少しいいかな……?」

「今少し急いでるんで、手短な話でしたら大丈夫ですけど」

「あっ……ううん、それなら……。ごめんね、引き止めちゃって」

「こちらこそすいません、じゃあ」


 俺はドアを閉め、メールを確認しながら昇降口へと向かった。


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