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プロローグ

正直言って読み飛ばしてもらっても構いません。ヒロインは次の話から登場します。


 あらすじにもあったので、最初に言っておくと、この物語の主人公は私立喜桜きおう学園中等部に通う普通の中学2年生、藍海空人だ。


 進学校であるその学校に通う俺は勉強はそこそこ、部活は所属しておらず、学校が終わるとすぐに家に帰る毎日を送っていた。


 そんな俺だが一つ趣味があった。ゲームだ。


 もともと、両親がゲーム好きだったせいで、物心ついた時には生活の中にゲームがあった。小学校に入った時に買ってもらったゲームのプレイ時間は、余裕で1000時間を超えていただろう。


 そのため、友達が少なく一緒に家でゲームするような親友もごくごく限られていた。そんな俺を見てか、母親はチャット機能のあるオンラインゲームを買ってくることがあった。ネットの中でもいいから、誰かとコミュニケーションを取る楽しさを知って欲しかったのだろうと、今考えれば思う。


 それからというものの、俺はそのオンラインゲームにどっぷりハマってしまい、むしろ学校が終わると友達と帰ることなく一目散に家に向かった。オンラインゲームは楽しかった。

 

 俺のことを知らない人と一緒に冒険したり、楽しくお喋りしたり、もちろんネットのマナーが分からない時は他のプレイヤーにボロクソに言われて泣いたこともあったけど、逆に手取り足取り親切に教えてくれる人もいて、正直友達いなくてもいいからここで知らない、だけど確かな友情はあるプレイヤーと一緒にいる方がよっぽどいいとさえ思った。


 そんな毎日を送っていた小5の夏に大手ゲーム企業から新世代のハードが発売された。その名はロッキー。従来のヘッドマウント型の物とは違い、それは全感覚投入フルトランス型、つまり五感すべてをリアルに異世界に連れて行ってくれる夢の機械だった。


 今まで、そういう感覚投入トランス型のハードが出ていなかったと言うとそうでもなく、5年ほど前からハードは出ていたが、どれも視覚だけとか、入力のみで脳への出力はできないといったもので、もちろん出た当時は画期的だったが、やはりプレイヤーを満足させるには及ばなかった。


 そんな時に世に放たれたロッキーは大注目を浴びた。脳からの出力、脳への入力を五感すべてで体験できる、そのあまりの凄さにロッキーは半年で1000万台というゲームハードとしては信じられないほどの売上を記録した。価格が7万ととてもリーズナブルだったというのも理由の一つだろう。


 そんなゲームが出て俺は無視できるわけがなかった。喉から手がでるほど欲しくなり親に何百回と頼んだ。しかし、親は買うのを渋っていた。理由はわからなかったが、俺は今まで貯めてきたお年玉を全部使って買おうとさえ考えた。


 そうして迎えた小5のクリスマス、朝起きると目の前にロッキーの無骨な灰色のボディがあった時は思わず感動して、午前中ずっとはしゃぎっぱなしだったのを今でも覚えている。本当に粋な親だ。


 しかし、問題はまだあった。その当時、ロッキーではオンラインゲームがまだリリースされていなかったのだ。RPGやFPS、アクションはあったが、オンラインゲームは多人数が一斉に同じフィールドにログインするのでソフトを作るのが困難だったらしい。


 しかし、技術の進歩がそれを可能にした。俺が小6になった時、ロッキー初のオンラインゲーム、『インフィニティ・ライフ』略して『IL』がリリースされた。


 俺は今度こそお年玉を使い、15000円というソフトにしては相場より9000円ほど高いそれを発売初日に買った。予約受付がなかったので、学校を休んで開店前から店の前に大人に混じって並んだのは中々に緊張した。


 受験勉強もほどほどにして、俺はインフィニティ・ライフに夢中になった。剣と魔法が当たり前のようにある所で、そして決められた文しか話さないNPCだけじゃない本当の人間、プレイヤーがいて、そこは文字通り紛れも無く異世界で、俺はその世界の人間になれた。


 中学に入ってもその熱が冷めることはなく、家に帰ればすぐにロッキーを起動させ夕飯と風呂以外は基本的に異世界へと赴く毎日だった。さすがにテスト前とかは自粛せざるを得なかったが。


 そして中学校に入学してから1年が経ち1学期期末テストが終わった7月の上旬。


 この物語はそんなゲームをするには少々不向きな夏の平凡な1日から始まる。



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