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記憶
もう少し
あそこまで歩いたら引き返そうと
そぞろ歩く 波打ち際
目印は曖昧なまま
いつまでも歩いた 夏の終わり
ふざけて振った
ソーダ水の気泡が
弾けるたびに
意味もなく笑いあった
あなたの足跡のなかに
すっぽりと重なる 私の裸足を
小さいなぁ…って笑った
あの日の
あなたの笑顔が支えだった
曖昧な日付と駅の名前
手を引かれて入った部屋で
初めて抱かれた
おぼろげな 部屋の灯り
結末は心得ていた
どうにもならない恋だった
救われたかった私が
あなたをただ 救いたくて
あなたが望むもの全てを
与えることが
私の生きる力だった
こんなに蒼い空のしたで
別れを決めてしまったら
もう 私は二度と
空を見上げることなんか
できないかもしれない