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彼は誰時
彼は誰時
山藍摺の霧のなか
追いかけて 見うしなう
朝露に濡れたスカートの裾が
まとわりついて 追いつけなくて
少し理不尽な
あなたの冷たさより
愛しさが優って 心が震える
もうこれ以上
愛されてはいけない
愛してはいけない
もう戻ろう
明日戻ろう
決心をして
翻して
鈍い耳鳴りに囚われて
必死につかんだ袖口の
小さなボタンが弾けとぶ
眩しい朝が
あなたのこめかみに差しはじめる
その前に
もう戻ろう
明日戻ろう
細くうねった道の彼方
二人を守る 彼は誰時
山藍摺の霧のなか