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忍冬
くしゃくしゃの髪に
そっと櫛をとおす
飲みかけのショコラも
点滅しつづける留守電も
手つかずのまま
コルセットの紐を
きつく締めなおし
蒼白い素顔に
もう一度 化粧を施す
スイカズラの花の色が
変わるのをあなたは見たの
スイカズラの花が甘いのは
女の唇に似ているからと
言ったのはあなた
庇い続けた傷が
癒える時間も待たずに
季節は過ぎて
陽のささない部屋で
ひとり 紅をさす
背中の羽根は
広げられるだろうか
冬の風を遮る
僅かなちからさえあればいい
スイカズラの花が甘いのは
女の唇に似ているからと
言ったあなたは
帰らない
けなげに広げた葉に
もうじき雪が降る
細く 白く
尾をひくため息
出口はいくつも要らない
ひとつだけあればいいのに




