weekly*11
*sunday
行き先を決めずに
おもいつくまま車を走らせた
リアウィンドゥの
ふたりの一日を後押ししてきた空が
胡桃色に変わるころ
駅に向かって
加速を始める君の横で
私の心はゆっくりと
線を引くように萎みはじめる
交差点の向こう
駅舎の朱い屋根が
レンズなしでも
見えるのが悔しい
揃えた靴のなかの
爪先に力を込める
遅れたって良いんだ
もう一周…
わたしのこと
つれ回してよ
*monday
聞こうとして
聞きそびれて
自分のなかで
曖昧にしていること
軽はずみなひとことより
沈黙という美学
期待した言葉が
返ってこないとき
自分のなかの
違和感と向き合う
小さく傷つく日もあれば
有頂天になる日もある
ふたりきりの時は
あんなに激しく愛されるのに
人前ではよそよそしい
膨れっ面を膝に乗せ
背中を丸める私を
かすめるような
その
唇の質感
*tuesday
金木犀の香りがする道を
深呼吸を数えながら歩く
暗い朝が
ぐずぐずと動き出す
君を笑わせるために
何度も練った話を
ついでのように披露して
ささやかな安堵を
胸に流しこむ
君の前では
笑っていようと決めてから
ひとりのときは
塞いでいることが多くなった
小さな矛盾を
いくつもやり過ごすけれど
笑っちゃうくらい単純に
清算されてしまう
混沌としながら
何かが変わってゆく
また
変わってゆくワタシ
それは
喜びとは違う驚き
*wednesday
街で
あの人と同じ香りが鼻をかすめ
後ろを振り返る
香りの記憶とは
なんて甘美で切ないのだろう・・・
記憶のなかの
はじける笑顔と
塞ぎこむ横顔のあいだで
私はいつも迷っていた
胸のなかの
ちっぽけな勇気を
使い果たしてしまわぬよう小出しにして
期待と失望に
翻弄されながら
この恋に殉じようと
細く長く息を吐く
あの人のはずがない
その香りに
後ろを振り返る
知らない顔が
追い越してゆく
半透明の波のなかで
甘く切ない
記憶のありかを
いつまでも探していた
*thursday
あなたから
引き出したい
言葉があって
いつもより
少しだけ
食い下がってみた
自分の幼さを
少しだけ
恥じながら
いつもより
少しだけ
幸せ
誰といても
笑っていても
あなたのことばかり
考えている
孤独とは
忙しくしているときにも
ふと
落ちていくものなんだ
*friday
恋が
永遠に恋であるために
ちっぽけな偶然に陶酔し
落胆や失望を追いやって
どんな望みを
叶えようというの
屈託のない
あなたの優しさに
むなしさを少しだけ
先送りする
恋が
永遠に恋であるように
*saturday
新雪のなか
先を急ぐ君のあとを追う
大股の足跡めがけて
少し足りない自分の一歩に
弾みをつける
重なる足跡が
笑ったようにズレていた
君が放ってよこした
マフラーの端をつかまえる
手を繋ぐより
ドキドキした…
大好きだった君
*miracleday
深く差し込む夕陽が
リネンのシーツを
黄昏色に染める
気だるい午睡のあと
からだに巻かれた腕を
外そうとして
不意に
抱き直される
あなたの匂いを
胸いっぱいに吸って
からだの冷えた部分に
そっと手をそえる
垂直に流れる涙に
目を洗われながら
淋しい…
今日のわたしを
時の流れはどこへ
連れていくのだろう
and everyday…