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THE DICE IS CAST  作者: 鍛冶屋マグロ
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シャークボーグ計画

 《シャークボーグ》計画プロジェクト。その計画と、それによる産物モンスターはそう呼ばれていた。


 とある軍事企業が、鮫ーー太古からその姿をほとんど変える事がなかった、完璧な姿フォルム捕食者ハンターーーを究極の殺戮マシーンとして利用しようと考えたのが始まりだ。



 まずは数十種類の獰猛な鮫ーーホオジロザメ、アオザメ、シュモクザメ……その他にも様々な鮫の遺伝子を混ぜ合わせた、強い殺戮本能を持つ完全に新しい種の鮫を誕生させた。


 続いて企業の科学者達は、その鮫の脳を金属で出来たより強靭な身体ボディへと移し変えたのだ。その身体には多種多様な兵器と制御装置を組み込み、外装は通常の鮫に見えるように偽装した。


 そうして造り上げたのが、人造のシャークボーグである。



 しかし、この計画は最終的に失敗に終わった。


 ある嵐の夜。デモンストレーションを兼ねた試運転の際に、不法廃棄目的の民間船とシャークボーグが衝突してしまったのだ。


 結果、シャークボーグに組み込まれた制御装置が破損して暴走。民間船を破壊し、乗組員を丸飲みにしたシャークボーグは強い熱反応を追って潜行。そのまま海底火山へと突入し、その反応は消失した。


 この事故による打撃で企業は倒産。この計画は闇へ葬られたのだった。





 ……そう、全ては葬られた筈だった。



『シャッシャッシャッ、少し昔の話をしよう!なぁに、そんなに遠い過去の事じゃぁ無い。ボップコーン片手に聞いてりゃすぐに終わるさ!』



『俺は元々人間だった。つってもまー覚えてるのは日本人だったって事と、マトモとは言えない仕事をやってたって事だけだ』



『……そうさ!この鮫の紛い物に喰われた民間船の乗組員は俺の事だ!』



『シャッシャッシャッ!何で俺がこんな姿になったのかは全く持って分からん。まぁ、この鮫の記憶を辿る限りじゃぁ、コイツに無かった自我ってヤツを俺が埋める形になったんだろうよ』



『そうして俺はこの身体を支配した。シャッシャッシャッ!笑えるだろ?』



『俺はこの鮫の精神と一体化し、殺戮衝動の赴くままに人間を襲いまくった。あれは何個目の船を沈めた時だったかな……俺は船の残骸にしがみつく餓鬼を食おうとしたんだ』



『そしたらまぁ、奴は俺の口の中に緑色の火をぶち込んだんだ!シャッシャッシャッ!それで俺はここが元居た世界じゃ無いことに気がついた』



『それに驚いてるうちに奴には逃げられたが、そんな事はどうでもいい』


 鮫は、シャークボーグはその身を楽しそうに捩らせる。それによって彼の周囲の岩は砕け、魚達は慌てて逃げ出していく。


『こんな面白そうな話は無い。ラッキーな事に俺の身体は陸を歩く事が出来るし、その気になりゃ宙を泳ぐことだって出来る。見た目はまぁ……船のマストでも巻いとけばフードを着た大男に見えるだろう』



『おぉ、そうだ。シャッシャッシャッ、名前がシャークボーグってのは間抜けだな。これからはノーウェイと名乗ろう!』



『いい名前だろ?ノーウェイは英語で有り得ないって意味だ。俺にはピッタリな名前だ』



『とりあえず、ここから西に30キロメートルの場所に港町があった筈だ。シャッシャッシャッ!あそこから陸に上がろうと思うよ!』


 げらげらと笑いながら、グルグルと回転するシャークボーグ改めてノーウェイ。



『あ、そうだ』



 と、彼は笑うのを止めてその無感情な目玉を、自身の話を聞いていた相手へと向けた。


 それは薄緑の髪を海藻のように漂わせ、水色の瞳に涙を溢れさせてガタガタと震える一人の少女。その下半身は薄桃色の鱗に包まれた魚の尾鰭になっている。


 上半身を鎧で包み、手には鋭い三つ叉の矛を握っているものの、目の前のノーウェイに抵抗するには、あまりにも頼りない。


『たしかに好き勝手やって陸と海の関係を拗らせるようなマネしたのは俺が悪い。にしたってさ、いきなり大人数で囲んで殺そうとすんのはヒドくないかね?』

『そこんとこどうよ?人魚ヒメさん?』


 穏やかな口調で語るノーウェイ。だが、彼の口からは犠牲者の、人魚の少女の仲間であった者達の血がユラユラと漏れ出していた。


 そして徐々に赤く、禍々しく光っていく彼の目玉。それが人魚の少女が見た最後のものとなった。

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