八品目『追跡』
おぉ、来た来た、来やしたね旦那ぁ、へっへっへ。
ちゃんと毎日飯は三食取っていますかい?
…おや、どうしたんです?今日は今までで一番顔色が悪いじゃあないですかい?
ほほぉ、熱が38度あって腹下しが止まらないんですかい?
人間の体にはあんなにも水分があるものかと驚くほどの下しっぷりなんですかい?
そいつぁ災難でしたねぇ…なに、腹下しも辛いが回数重ねるたびに尻が痛くなるのが辛い?
へっへっへ、はっはっはっは!
あぁ、すみやせん旦那、へっへっへ。
あぁ…久々に笑わせてもらいましたよ、ごちそうさんです、へっへっへ。
しかしまぁ、体調不良が続いてますねぇ、旦那。
どこかでしっかり休みを取らなきゃあいけませんぜ?
それじゃあ、いつものようにお話させていただきますかねぇ…。
今日はそうですねぇ…この話はどうですかねぇ。
この夢見人はね、仕事の同僚と一緒に自転車で移動しているところから夢を見たんでさぁ。
あたりの景色は長閑なもんでしてねぇ、住宅は所々にしか見えなくてね、あとは田圃か雑草の茂った更地が広がるばかりでさぁ。
ただ夢見人達が走っている道路はしっかりと新しい感じの濃い黒のアスファルトが敷かれてましてね、その上には高架、高速道路が走っているですよ。
だもんで、夢見人達の走る道は常に影の中、そしてその高架の影の中を真っ直ぐ進んでいたんですよ。
まだ開発途中といいますか、市外に有り山を越えれば隣県って感じの場所ですかねぇ…。
夢見人たちが進んでいくとやがて工場がちらほら見えてくる。
高速の近くだから荷物の運搬がしやすいように工場が密集してるのかもしれやせんねぇ。
工場に近づいてくると大きな交差点に当たりましてね?
夢見人達はその交差点を高速道路の高架から外れるように左に曲がりやして、しばらくすすむと歩行者用の道路を横断する信号が見えましてね。
えぇ、夢見人の進行方向でいうと右手、そこを渡れば再び高速道路に沿って移動する形になりやすねぇ。
えぇ、もちろん横断しましたよ、夢見人は。
横断した先にまだ細い道が続いてましてね?
右手に高速道路、左手に大きな工場にはさまれていて、高速道路側には工場排水を廃棄するドブが流れているんだなぁ。
その細道に入る頃にはあたりはもう薄暗くなり始めていましてね。
進みながらも工場の方を見れば作業員が片づけをしているところでしてねぇ。
どうも牛乳加工工場らしいんでさぁ…。
この時夢見人は何故か
『本日二回目の牛乳加工工場か…』
そう思ったんですよ、旦那。
どうやらあっしが食らう前に夢の中でどこかの工場にいったんでしょうなぁ。
夢見人と同僚はドンドン細い道をすすんでいく、そうすると行き止まりにぶちあたったんでさぁ。
でもね旦那、そこで道は途切れてはいたんですがね。
いかにも工場にありそうな鉄板の階段ってわかりますかねぇ?
それがありましてね、夢見人らはそいつを登っていったんですよ。
足音を立てないようにしてゆっくりと登っていったんでさぁ。
踊り場を二つ、三つと通過して下を見れば、工場の作業員達が持つ大きな容器の中に真っ白な牛乳がたっぷり入っているんでさぁ。
夢見人は少しその様子を見たあと向きを直して階段を上りあがると建物へ入るための扉がありましてね。ゆっくりと取っ手を回してみると、なんとも無用心なことに鍵がかかっていない。
無用心なもんで、夢見人と同僚が建物の中に入り込んでちまったんだなぁ。
建物の中は外見の冷たいコンクリート作りとは違ってね、温かみのある木造な造りでしてね。
おそらく工場の作業員の社宅や寮にあたるんじゃぁないでしょうかねぇ、まぁ寮にしておきましょうか。
夢見人達は今度は階段を降りていく形になりましてね。
二人は階段を降りながらもう一度状況と目的の確認をしたんでさぁ。
どうやら二人の目的は強姦魔を追い、捕えることでしてね。
寮に忍び込んだが見つかった場合迷い込んだと適当に答えてごまかそうって算段でしてね。
えぇ、確かに雑すぎる算段ですねぇ。
ほほぅ、それにしても強姦魔とはけしからん、それが旦那の意見ですかい?
まぁ、人間だとそうなりますわなぁ…。
いえいえ、気にしないでくだせぇ、へっへっへ。
ともかく二人は階層を一つ、二つと音を立てずに降りていったんですけどね。
すぐに外への出口、寮の玄関口にたどり着いちまった。
外から登った高さと降りた高さどう考えても釣り合いませんでしてね?
ところがそんな事を考えている余裕なんてなくなっちまうんでさぁ。
えぇ、玄関先でバッタリと寮の住民と鉢合わせしちまいましてねぇ、打ち合わせしたように迷い込んだとは説明をしたんですが当然のごとく通用するわけもなく警察を呼ぶと言われましてね。
えぇ、まぁ至極当然ですなぁ。
仕方なく二人は住民に事情を説明しましてね、どうやら二人は警察関係者になっているみたいでしてね。
住民は少し納得いかない様子だったんですけども、既に近くにまで警官が到着していることを伝えて玄関のドアを開けますとね、外の道路にパトカーが待機していたんですよ。
夢見人達の姿を確認すると警官がやってきて住民に説明と、例の強姦魔についての新しく入った情報を二人に連絡してきたんでさぁ。
寮の玄関を出ると、すぐ階段がありましてね?
それを降りて振り返ってみると先ほど感じた昇り降りの高さの違いの理由がなんとなくだかわかったんですわ。
外から見た寮は良く山側にある坂道のキツイ住宅って言えばわかっていただけますかねぇ?
そんな感じなんでさぁ。
工場は平地の崖のすぐ下にあって、寮は工場の真後ろの崖の上にあったんですよ、旦那。
しかも看板らしきものを見ればどこぞの企業の御用聞きといいうんですか?
いわゆるラウンダーの女性寮みたいでしてね、そりゃぁ警察も呼ばれますわなぁ。
夢見人と同僚は警官から手渡された報告書を見ながら駐車場まで移動しましてね。
用意されていた車に乗り込んで座席に座りながら報告書に目を通したんですがね?
なんとも奇妙な報告内容でしてねぇ…追っている強姦魔、その生まれは長い時を遡り奈良時代にまで戻るって言うんだからもう人間ではないですわなぁ。
強姦魔についてはネット上でも結構有名みたいでしてね、あれこれ推測、推理されていましてね?
そうですねぇ、いまだに謎めいたロンドンの切り裂きジャック事件のような熱があるといえばいいでしょうかねぇ。
それでですね、奈良時代からの文献などにはその強姦魔の描かれた姿が載っていましてね。
これがまたおかしな姿の絵がいくつかありましてね?
共通しているのは阿修羅像のように腕が何本もあったり、下半身が蛇だったり姿なんでさぁ。
こいつぁ一体どういうことだろう?
そう夢見人が考えている所で夢が終わるんでさぁ…。
蛇といやぁ性欲の象徴でもありますねぇ、昔からマムシ酒とかぁ精が付くともいわれますしねぇ。
なんですか、旦那?
たとえ人間でなかろうと悪事は許されない?
人間でなかろうと、ですかい…、そもそもこの強姦魔っていうのは元々は人間だったんですかねぇ?
それとも元から人間じゃぁなかったんですかねぇ?
ところで旦那、カマキリの雄は雌の油断を狙って交尾をするといいますぜ、しかも鎌でメスの体を押さえつけながらですぜ。
なぜか、ご存知ですかい?
そうでもして交尾を終えた後すぐに逃げないと…喰われるからでさぁ。
人間と昆虫を一緒にするなって?
しかし旦那、強姦魔が人間で無いとすると人間の常識は法律に当てはめて物事を見るのはいささかおかしくないですかい?
あっしは今の人間っていうのはどこかおかしいところがあると思いやすよ?
おおっと、旦那。
気が付きゃ体がかなり透けていましたねぇ、時間が来たみたいですぜ?
この話は思い出す機会があれば続きでもしやすかい?
まぁ、今日もがんばって下せぇや…。
…そういう考え方ができるのはあっしが人間じゃないからだろう、ですって?
へっへっへっ、へっへっへっへっへっへっへっへ。
おぉ怖い怖い、そんな恐ろしい眼で睨まないでくだせぇよ。
ささぁ、いってっらっしゃいませ、へっへっへっへ。
時間が無くて完全に勢いでなにかいてるか良くわからねぇや
あ、いまさらながらツイッターやってます
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