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ガタリ ~朝霧と共に散りゆく夢幻~  作者: ReKu
『夢始め』
7/67

七品目『後味の悪い夢』

おや?

旦那、今回はまた遅かったですねぇ。

なにか作業でもしていたんですかい?

ほほぅ、昼迄で寝ていてなかなか寝付けなかったんですかい?

グータラな生活してますねぇ、旦那ぁ…後々支障がでやすよ?

あぁ、もう椅子に座るなり煙草に火を点けて…体に悪いったらありゃしない。

おまけに大きなため息までついて、なにかあったんですかい?

なるほど、姉と姪っ子が帰省してて大変なんですかい、でも旦那だって姪っ子は可愛いんじゃあないんですかい?

へぇ、可愛いけど子守するのは大変で子育ては自分は無理、そう思うんですか?

まぁ、そういう人ほど親馬鹿になる気がしますけどねぇ…、へっへっへ。

でもまぁ、子供連れていたら、自分の思い道理にいきゃぁしやせんし、どこかに道楽しにいってもゆっくり楽しむ事はできませんやねぇ…。

ま、旦那がんばってくだせぇ、へっへっへ。

…さてぇ、今日はどんな夢を話やしょうかねぇ…、そうだ、この夢に致しましやしょう。


今回の夢見人は、小学生ではなくて現と同じで二十代後半くらいですかねぇ?

でね、気がつけばどこかの施設の広い部屋にいたんですよ。

そこはね、とある遺跡の傍にありましてね、まぁ博物館の会議室みたいな所でさぁ、小学生がたくさんいてるんですよ。

その会議室の前のほうにある白板の前に可愛くもない若くもないなんとも微妙なおば…女性がいましてね?

この遺跡は、埋葬方法は、感じの内容を話しているんですよ。

どうも微妙な女性は博物館の係員みたいでしてねぇ、小学生達に遺跡について説明してるんでさぁ。

ここまではまぁ、普通ですさぁね、ところがね旦那。

この係員が突然大きな声でですね、こう言ったんですよ。


「それでは実際に埋葬してみましょう!!」


ですよねぇ、旦那。

そりゃぁ思わず、なにそれって聞き返しちまいますよねぇ…。

うんうん、旦那の言うことももっともなんですけどね、夢ですからねぇ…。

体験して将来の役に立つのか、とか言っちゃぁダメですぜ。

ま、何事も経験とはいいますけどねぇ。

それでまぁ、埋葬しにいくことになったんですけどね。

肝心な遺跡っていうのがですねぇ、博物館の傍に広がっている湖の中心にありましてね?

しかも水底に沈んでいるっていう話なんでさぁ、なんとも浪漫溢れる遺跡ですねぇ。

そこに小学生達を大きなカヌーといいましょうか、ボートといいましょうか…原始的な木製の船に乗せて湖の中心へ向かったなんですよ、もちろん石棺も一緒に乗せてますぜ?

夢見人ですかい?

夢見人は陸地でそれを見守っていますぜ?なんせ小学生の社会見学ですからねぇ。

ところがですね、旦那。

夢見人が湖を進む船を眺めているとね、なんの拍子か石棺がボートから湖に落ちてしまったんですよ。

落ちた拍子に蓋が外れちまいましてねぇ、中に入っていた遺体がプカリと湖に浮いて漂い始めちまってねぇ…、遺体といっても死んですぐの姿じゃぁないですぜ?

カッサカサに干からびたミイラのような状態の遺体でさぁ。

蓋と石棺は僅かな時間だけ浮いていたんですけどもね、すぐに沈んでじまいました…まぁ石ですからねぇ、少しでも浮いたのも驚きですがねぇ沈んで当然でさぁ。

湖を漂っていた遺体はですね、遺跡があるにもかかわらず設置されていた噴水の近くまで流れたかと思うと噴水の水に当たって浮いたり沈んだりを繰り返していたんですよ。

そしたらですねぇ、水を吸ってふやけてきたのか徐々に肉が削げ落ちていきましてね、最後には完全に骨だけになっちまったんでさぁ。

もともと削げ落ちていた部分の骨は黄ばんでいましたがね、噴水で肉が洗い落とされた部分は真っ白なままでしてね。

夢見人はどうするのかと思っていたら骨が一瞬深く沈んだかと思うと次の瞬間元気にクロールしながら夢見人の方へ向かってくるんですよ。

夢見人のいる岸まで泳いできた骨は、陸地に上がるととね夢見人に向かってこう言ったんでさぁ…。


「見て見て!ボク綺麗になった!!」


なんでしょうかねぇこの骨は…どうしてこんなに興奮しているのやらさっぱりわかりゃしませんねぇ。

呆然として見ている夢見人の前に軽やかに後方倒立回転跳び…まぁ俗にいうバック転でさぁ。

綺麗に決めて頭蓋骨だけが夢見人の方を向きましてね。

窪んだ目玉の無い目で夢見人を見つめながら言うんですよ。


「ボク、綺麗でしょ!」


流石にこれには夢見人もどう反応していいかわからなかったみたいでして。


『あっ、はい』


としか答えられかったんでさぁ。

その答えに満足したのかどうかわかりませんがね?

骨は再び湖に飛び込みましてね、また戻ってきたかと骨から水を滴り落としながら興奮状態のままで踊りだしたんでさぁ。


『え、なにこれ…』


と思わず呟いて夢見人もドン引きしていましたよ、へっへっへ。

ところがですね、状況が急にここで変わっちまうんですよ。

実はですね、夢見人以外にも回りに男が二人いましてね。

腹が減ったからカップラーメンでも食べようということになりましてね?

さっそく作る為に夢見人と男二人と骨の四人で博物館の方に歩き出しまして。

な、なんですか旦那?

骨は人として数えるのかって?

一応元々は人だからいいんじゃないですかねぇ、それにほら、人型ですしねぇ。

骨がラーメン食ってもそのままビチャビチャ零れるだけだろって?

本人が満足すりゃぁそれでいいんじゃあないですかねぇ?

骨だけになって綺麗になったって喜んぶようなヤツなんですぜ?

そんなことは置いておいて…カップラーメンにお湯を注ぎ始めた四人なんですがね?

その近くになんとも怪しい調味料が四つありましてね。

一つは真っ赤なもんで唐辛子とかの辛いものってわかるんですが…あとのはちょっと判断しにくい色でして…。

このあたりの光景がぼやけていましてねぇ…たしか白と黒と緑だったような気がしますねぇ。

夢見人は白の調味料を入れましてね、他の三人も各々好みの調味料をぶち込んで落ち着いて食べれる場所に移動したんでさぁ、えぇ、なぜか夢見人の自宅の応接間にね。

この急な場所移動は夢ならですねぇ、へっへっへ。

それでですね、すわり心地のよさそうな椅子に座って夢見人は男二人と向かい合ってラーメンを啜っていたんですよ。

なんとなく味はどうかと聞こうと思って骨の方を見てみるとね、骨が立派に肉付いて夢見人の会社の同僚に代わっちまっててですね。

あれ、いつの間に…と不思議がりながらもラーメンを啜っていたら…ふとね、思い出しちまったんですよ。

なにを思い出したかって?

現で一時期カップヤキソバに異物が混入していた事件ですよ。

しかもよりにもよって…へっへっへ、黒い悪魔の遺体がねぇ、へっへっへ。

それを思い出した瞬間に夢見人の口のなかで ジャリッ とした音と食感がしましてね。

咄嗟に咀嚼を中断したもののね、噛み合った歯に思わず力が入ってしまいまして。

左奥歯の方で再び ジャリッ と音がしたんでさぁ、へっへっへ。

その食感はね?

まるで海老の殻か尻尾を食べたときのような感じでしてねぇ、夢見人はこれは羽かと考えたんですよ。

口の中はスープの絡んだ麺の濃厚な味しかしないんですけどねぇ、思わず立ち上がって走り出しちまいまして。

窓を開けて口の中のものを庭に吐き出したんですよ。

ところが吐き出した行為が拙くてですね、噛み潰したモノの体液が舌に触れちまいましてねぇ、へっへっへ。

その味の苦い事といったらありゃしねぇ。

オロロロと食べたもの全部戻しちまったんでさぁ。

そこで夢見人は目が覚めちまった。

吐き出した行為も拙けりゃ、噛んだモノも拙いモノで、味も不味いたぁたまりませんねぇ。

それにこの夢ですけどね、遺跡に遺体に異物の遺体と言葉遊びみたいで面白いと思いませんかい?

え、思わない?

むしろ気持ちが悪い?

旦那ぁ、そりゃぁいけませんぜ、もうすぐ夜が開けますぜ?

その証拠にほら、旦那の体が透けてきている。

ささっ、旦那。

今日も一日がんばってくだせぇ、朝食はしっかり食べないといけませんぜ?

それでは、いってらっしゃいませ、へっへっへ。


あぁ、そうだ。

朝食はしっかり噛んで食べてくだせぇよぉぉ!!

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