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ガタリ ~朝霧と共に散りゆく夢幻~  作者: ReKu
『夢始め』
6/67

六品目『山と春と小料理屋の問題』

旦那ぁ、いらっしゃい。

現はもう夜なんですねぇ…おんやぁ?

旦那どうしたんですかい、顔色が良くねぇですぜ?

へぇ、最近胃がキリキリ痛い?胃の中にガスが溜まりやすくなって困ってるんですかい。

そいつぁいけねぇですねぇ…胃薬は飲んでるんですかい?

なに、薬には頼らない?

それじゃあいつまでたっても元気になりやせんぜ、旦那。

あと花粉も辛い?

そうですかぁ、現は春なんすねぇ…春と桜、桜いえば花見、まぁ、花より団子、団子より酒の人の方が多そうですがね。

え?旦那は酒より団子で花より団子なんですかい?

ついでに、ストレスは食べることで解消してるんですかい。

…旦那、胃が痛いのは唯の食べすぎじゃあないんですかい…?

ところで今日は早々に夢の話に参りましょうか。

まぁ、桜の話で思い出した夢なんですがね…。


この夢見人はね、親父さんと山に登りに行ったんですよ。

何故山に登ったのか理由はわかりませんがね、もしかしたら山の桜を見に行ったかもしれないですねぇ。

結構坂のキツイ山でしてね。道は土じゃあなくてアスファルトで舗装されていましてね。

いやまぁ、それでも登っていくにつれて道幅が狭くなる。

まだ人が住んでるあたりみたいでポツポツと点在する住宅の中にポツンと公園がありましてね。

小さな小さな公園でブランコがあるだけなんですよ。

夢見人はその公園をなぜか少し気になりましてね、ちょっと立ち止まって見てはいたんですがすぐに歩き出したでさぁ。

歩き出したのはいいんですがね、いよいよ道幅が三人並んで歩くのがやっとの道になってきましてね、アスファルトではなくコンクリートを敷いただけの道になりましてね。

周りは背の高い木々が茂っておりましてね、昼だってのに木陰で肌寒いんですよ。

夢見人と親父さんがさらに上っていくと人垣が見えてきましてね?

苔むしたコンクリートで作られた幅の階段からズラァッっと人が並んでいるでさぁ。

最初はその列に並んだものの全然進まない。

上から人は降りてくるものの列に動きがまったく無くてですねぇ、夢見人も親父さんも諦めて山を降りることにしたんでさぁ。

登ってきた道を降りていくと先ほど立ち止まってみていた小さな公園が見えてくる。

夢見人はやっぱりその公園が気になってるみたいでしてねぇ、また立ち止まって誰もいない公園をじっと眺めてしまいましてね…。

そしたら、白い光がブワッっと広がったかと思えば暖かな日の光の中少女がブランコに乗ってる姿光景が見えたんでさぁ。

公園の過去の記憶といいますかねぇ、まるで映画を見ているような状況になりましてねぇ。

少女がですね、なんていいますかファンシーで柔らかい感じのアニメ調でしてね。

そうですさねぇ…年齢は12歳くらいですかねぇ、アニメっていうのは年齢がわかりづらいからいけねぇ。

まぁ、雰囲気的には恋に恋するお年頃といいますか夢見る少女といえばいいんすかねぇ?、

少女はね、公園の敷地を囲う金網の向こう、立ち入り禁止で池のある隣の空き地で銃を持っている青年を見つめているんですよ。

この銃を持っている青年もアニメ調でしてねぇ…銃といっても本物じゃあないですぜ?

遊びやゲームで使うエアガンとか電動ガンってヤツですねぇ。

青年はその銃を持って空き地で射撃の練習をしてるみたいでしてね。

やがて青年も自分を見ている少女に気づいて公園のほうに近づいてくる。

少女に微笑みかけて、公園の敷地の方に歩き出した。

金網に手をかけて少女に話しかける青年はね、茶髪で肩まである長髪で端正な顔立ちでしてね。

あぁ、なるほどなぁ、アニメ調であってもイイ男だとわかる。

こりゃぁ、少女が恋に落ちるのも仕方ないなと納得するほどだ。

青年はね少女に向かって銃を見せてなにやら説明をしている。

銃の名前なんですかねぇ?スカーがどうのこうのとかね、いってるんですよ。

え?いきなりなんです、旦那?

俺は エフエヌスカーとエフエヌファイブセブンが欲しい?

なんですかい、それは…、ほう…銃の名前ですかい。

いやいやいや、旦那ぁ、そんなの買ってどうするんですかい…。

話を戻しやすぜ?

あぁもう…エフエヌシャで銃は揃えたいとかもういいですから、あっしには何のことかわかりゃしませんので…。

まぁ、青年の話してる姿を見ている少女の顔といったら…みてるこっちが恥ずかしくなるような幸せそうで恋してますって言ってるような表情でしてねぇ…。

ここで画面が変わりましてね、セピア色の場面になるんですよ。

どうも少女が数人の男子に苛められている光景でしてね、そこを青年が助けてくれたみたいでさぁ。

その時から少女は青年に恋しちまったんでしょうねぇ。

無理もないさねぇ、まさに白馬の王子様でしたからねぇ…だけどね、旦那。

その青年はね、やっちゃぁいけない事をしていたんですよ。

それがね、覚醒剤をを服用していましてね…、セピア色の場面から変われば池のある空き地で青年が今度は数人の男に囲まれていましてね、男達はヤクザだと思いますがね。

どうやら覚醒剤の件で揉めてるみたいでしてねぇ。

青年は覚醒剤が欲しいが金が無い、ヤクザの物に手を出しちまったんですかねぇ?

ボコボコにされても尚覚醒剤を欲しがる姿は哀れなもんですぜ…。

最後には殺されちまいましてね、空き地の池の底を掘って、青年が埋められちまうんですよ。

まぁ、殺されなかったとしてもですぜ?

目は完全に廃人の目になっちまってたんでさぁ、死んだも同然さぁね。

夢見人が最初にみたブランコに乗ってる少女はね…もうこの世にはいない片思いの青年を恋心を秘めて待ち続ける姿だったんでさぁ…。

そしてね、少女の姿が徐々に透けていきましてねぇ、誰も乗っていないブランコだけが前後に少し揺れているですよ…。


旦那、どうしたんですかい?

なんともいえない悲しいような自業自得な夢だったんだな、ですって?

馬鹿いっちゃいけないよ、旦那!

まだ続くんですぜ?


再び場面が変わりましてね。今度は現と何等代わりの無い光景でしてね。

80年代の日本映画を彷彿とさせるような雰囲気なんですよ、いや実際その映像は映画のものなんですがね?

どうやら夢見人がビデオで見ているらしくてですねぇ、最初は自分好みの作品の雰囲気じゃないもんで、早送りしていたんですよ。

え、どうしてビデオってわかるのかって?

旦那がそう思うのも無理は無いすねぇ、現はいまやDVDだ、やれブルーレイだと新たな媒体が出ていやがりますからねぇ。

理由はですね、早送りしているときに白黒のノイズが入っていたんですよ。

あれはビデオテープ独特のものなんじゃぁないですかね?

まぁビデオを早送りしていたらですね、そこに夢見人の母親の声が入ってきまして。

『その映画は凄く有名でいい映画だから見させて』と言ってくるんですよ。

しかたなく早送りをやめて途中から観だすんですけどもね、なにやら小料理屋の小さな一室に登場人物達がやたら拘る作品でしてねぇ。

主役と思われる母親と息子、それと母親の友人がその部屋にいるんですが…どうも全員の言動が少しおかしいですよ。

母親の友人は奇声を上げて癇癪を起こしていましてね。少年の目には壁の中に和服姿の女の子の姿が見えましてね、その女の子が不気味にニヤリと笑うんですよ、それがまたなんともいえなくてねぇ。

ゾッとしない不気味な笑顔なんですよ、いや、旦那、そうとうしか表現できないんでさぁ。

他にも部屋にある木彫りの猫が動き出したり、虎皮の敷物が突然生き返って生前の姿になったりしましてね。

さすがに虎は恐ろしいんでしょうねぇ。

少年が料理で通されていた高級そうなお肉をですね、自分達から離れた場所に放り投げたんでさぁ。

だけども虎はそちらを見向きもしない。

ゆっくりと少年の方へと歩いて距離を詰めてきやがるんでさぁ。

こりゃぁ、もう絶対絶命のピンチって感じですよねぇ、旦那。

ところがですね?

少年との距離を半分くらい詰めた所でですね、突然虎が後ろを向いて放り投げられた肉に飛び掛ったですよ。

そりゃもう そんな餌に引っかかるトラー! って感じでさぁ。

そりゃぁあっしも驚きましたよ。

まぁ、結局の所その三人も覚醒剤の類を服用していたみたいでしてね。

すべて幻覚だったみたいでさぁ…これのどこが名作なのかあっしにはさっぱりわかりませんねぇ。


そんなこんなでまた場面が変わる、今度は映画を見ているような雰囲気でもなくその場所にちゃんと夢見人も存在してましてね。

大学の共同ゼミかなにかみたいな雰囲気ですかねぇ。

だけどもそこにいる教授らしき人物は中学の社会科の教師でしてね。

その教師がみんなにプリントを配っているんでさぁ。

プリントが夢見人にまで回って来るのを待っているとね、背後から気配がする。

振り向くと先ほどの小料理屋の映画にでてきた少年がいたんでさぁ。

夢見人と少年が目が合えば、少年は教室を走って飛び出していきましてね。

少年を追って夢見人も廊下に飛び出してみたら出てすぐ右側で立って夢見人を見上げているんでさぁ。

ギョッっとして言葉も発せず少年を凝視しているとですね、少年が夢見人に話しかけてきたんですよ。


「僕答え知ってるよ。4 、6 、リン 、発火 、16だよ」


言い終わると少年はね、廊下を走って角を曲がって行ってしまったんでさぁ。

呆然として少年を見ていた夢見人は教室の中から名前を呼ばれて我に返って教室に戻っていったんでさぁ。

最後の一枚のプリントを受け取って問題を見てみるとね。全て虫食い形式の問題でしてねぇ。

ざっと目を通したところ少年が言っていた通りの答えでしてね。

間違っていないもんだからそのまま答えを記入して答え合わせをするのを待っていたんでさぁ。

やがて答え合わせの時間になりましてね、教授順に答えを言ってゆくんですけども…全て正解してましてね。

夢見人はなぜか背筋がゾッとしましてねぇ、あの少年は何者なんだろうと考えていたらそこで目が覚めたんでさぁ。


なんでしょうかねぇ、夢の中で危険な薬に手を出す人物が何人も出てくるっていうのは…。

問題のプリントのリンと発火も気になりますねぇ。

死体等のリンが自然発火したものを昔の人は人魂と思っていた事を踏まえると魂に関係あるんでしょうかねぇ。

それとも唯の科学の問題だったんですかねぇ?


おや、旦那、体が透けてきましたね。

現はそろそろ明け方ですかねぇ、起きたら旦那もクスリを飲んで仕事ですかい?

ほぅ、クスリは飲まず自己管理と自然治癒での回復を目指すんですかい?

まぁそれが一番いいでしょうねぇ…クスリなんて頼るもんじゃぁないですぜ。

ましてや現実逃避になんて…ぉぉ、怖い怖い…。

それでは旦那、体に気をつけて、今日も一日がんばってくだせぇ。

いってらっしゃいまし…。

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