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ガタリ ~朝霧と共に散りゆく夢幻~  作者: ReKu
『夢始め』
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五品目『黒い縄の先』

うーん、どうするかねぇ…。

おや、いつのまに来てらっしゃってんですかい?

うん?なにを悩んでいたのか、ですかい?

そうそう、それなんですよ。

旦那にも関係あることでしてね、いや実はね?

あっしが喰った夢の話を旦那にしているじゃぁないですか。

それでいまさらになって思ったんですがね、夢を観ている人の呼び方を決めようかと思いましてね。

ほら、あっしの喰った夢ってやたらと男が出てくるじゃないですか?

あっし自身も時々どの男のこと言ってるかわからなくなる時がありやすもんで…。

あ、なんですか旦那ぁ、その顔は。

どうでもいいって顔してくれっちゃって…あぁ、せっかく用意したタバコを勧めるまえに勝手に吸いますかい、普通?

何?次はハッカのタバコがいい?

まったく旦那は注文が多くて困りやすぜ…。

で、どう思います?

ええ、そうですよ、夢を見てる人の呼び方ですよ。

あぁ、そんな面倒臭そうな顔しないでちったぁ考えてくだせぇよ…。

はぁ、夢見人(ゆめみびと ) …ですかい?

なんつーか、安直っていいますか、もう少し捻りを効かせたりしないんですかい?

…いや、まぁたしかにおっしゃるとおり、非常にわかりやすいですがねぇ。

それじゃあ、今後その呼び方でいきますぜ。

さて、それじゃあ夢を語っていきやしょうかねぇ。


今回の夢を観た男…おっといけねぇ、夢見人はですね、現と同じ年齢で同じ姿で夢を見ていやしてね。

歳はもう30前後だというのに学校の教室の中にいましてね。

学校といっても最近の鉄筋コンクリートでできた校舎じゃないですぜ?

古い木造校舎の教室の中でさぁ。

どうやら掃除の時間みたいでしてね。

椅子をひっくり返して机の上に乗せて、教室の後ろに固めてあるんでさぁ。

教室の大きく開いた前半分を生徒達が箒で掃いたりしている中でね、夢見人は箒を持って廊下に出て行こうとしたんですよ。

『今日の掃除当番は廊下だったなぁ』

とか思いながら教室のドアを通過しようとしましたらね、後ろから誰かに肩を掴まれちまいましてね。

誰かはわからないんですが…先生なんですかねぇ?

『お前の掃除当番はそこじゃないよ』

と夢見人に注意してきた。

夢見人は悪い悪いと謝りながらばつが悪そうに頭を掻きながら掃除当番表を確認しにいったんでさぁ。

ドアの傍の壁にあるコルクボードに張られている緑色の紙にはね、クラスの掃除当番表が書かれていましてね、それぞれ掃除場所が書いてありましてね。

上から教室、階段、廊下、トイレ…ときて夢見人の当番の場所が見えてくる。

そこだけ何故か緑の紙を鉛筆で薄い黒で塗られていましてね。

その上にマジックの濃い黒文字でこうかかれていたんですよ、旦那。


黒縄地獄(こくじょうじごく)


これには夢見人もぶったまげましてねぇ、思わず『ファッ!?』とか珍妙な声を上げちまってね。

とにもかくにも当番だから仕方がない、地獄に向かおうということで階段を降りていったんですよ。

そこで場面が飛んじまいましてね?

真っ黒な闇の中でくっきりと見える閻魔大王と思われる大男がいましてね。

先ほどまでは現と何一つ変わらないような光景だったのに、閻魔様だけがまるでセル画のようなんですわ。

おそらく夢見人が見たことのあるアニメなんでしょうねぇ。

なんですかい?

…なんの木かわからないけど大きな気になる木の天辺(てっぺん )に巨大金魚が佇んでいそう?

旦那はなにいってやがるんですか、それともそんなアニメでもあるんですかい?

それでまぁ、閻魔様の言うことにはね、地獄の掃除は地獄の住民とペアで掃除しなくちゃいけないらしくてね?

人間は目隠ししないと駄目らしんですわ。

夢見人が何故かと閻魔様に問うたらですね?

ニコニコした間抜け顔が急に真剣になりやしてね?

「生身の人間が地獄を見たら気が狂ってしまう」

との事らしくてねぇ。

とにかく目隠しした後、ペアになる住民…相棒と呼びましょうかねぇ。

相棒に手を引かれて夢見人は掃除に向かったんですわ。

真っ暗な中、相棒に雑巾を手渡されて目の前にある壁を拭くように言われましてね。

言われるがままに拭いていたら夢見人の背後でなにやらトラブルが起きたみたいで相棒が騒ぎ出したんでさぁ。

思わず振り返ったときに夢見人は触れてはいけない何かに触ってしまったらしくて気を失ってしまたんですわ。


場面が変わって、夢見人はなにやら坊主がいる寺院のような建物の一室で寝かされていたでさぁ。

そこに見知らぬ男二人と女の鬼がやってきましてね、助かってよかった的な事を言いながら楽しそうに会話をしていたんですがね。

女の鬼はいわゆる色鬼でしてね、急に催してきたみたいでして…寺院の奥にある倉庫に移動して男達を欲を貪りだしちまったんですよ。

おおっと!どうしたんですか、旦那…急に腰を上げて両手でガッツポーズまでしちゃって、へっへっへ。

え?いいからさっさと事細かく詳しく丁寧に話を続けろ?

へっへっへ、わかりましたよ旦那ぁ、続けますぜ?

倉庫の中で色鬼はね、全裸になって長い黒髪と大きな胸を(たわ ) わと振り乱してね、男にまたがって腰を振っている様子を夢見人は倉庫の入り口で見ていましてねぇ、へっへっへ。

そこから寺院の外へでて、次に坊主共がいる詰め所前まで待機してたんでさぁ。

どういうことだって?

へっへっへ、旦那ぁ…なにを期待してたんだか知りませんがね?

夢見人はハブられちまったんですよ、人が来ないか外で見張ってろ、って事ですねぇ。

あぁっ、旦那…なんすかその顔…。

椅子に座りなおして無表情であっしを見つつ遠い目しないでくださいよ、へっへっへ。

いいからさっさと続けろ?

そんなもうどうでもいいわって感じにならんでくだせぇよぅ。

夢見人もね、面倒臭くなったのか帰ろうとしましてね、寺院の敷地から出たんですよ。

すると場面が病院かなにかの娯楽室のような場所に移動しましてね。

夢見人が後ろを振り向くと後ろには寺院がありましてね?

どうやらこの病院のような施設の中庭か裏庭に寺院があるみたいでしてねぇ。

もっとも病院といっても冷たい雰囲気ではなくてですねぇ、リハビリや心療にありそうなアットホームな雰囲気なんでさぁ、一箇所を除いてねぇ…。

夢見人はね、出口に向かって歩き出しましてね、学校に戻ろうとしましたらね。

後ろから手押し車を押す奇妙な雰囲気の小母(おば ) さんがゆっくりと向かってきたんでさぁ。

手押し車って言うのがね木製でしてね、ホテルとか料理を載せて運ぶようなヤツなんですわ。

夢見人はその小母さんをみて大変そうだなと思って『手伝いましょうか』と声をかけましたらね。

小母さんは首をゆっくり動かして夢見人を方向くと、手を挿し伸ばして夢見人に何かを手渡したでさぁ。

夢見人がそれを受け取ると小母さんはニヤリと不気味な笑みを浮かべると、手押し車を押しながら病院のような施設から出て行ったんですわ。

夢見人の手の平には小母さんに渡された二つの剃刀刃が乗ってましてね。

なんじゃこりゃ、と思いながらも夢見人も小母さんの後を追うように出口に向かったんですわ。

そしたらね、急に目の前の光景が歪んだかと思うと病院の冷たくで不気味で暗いある場所に夢見人は立っていたんでさぁ。

寺院から病院に入ったときに目の前にある一室でしてね。

そこだけ本棚があるにもかかわらず一冊も本は無く、埃が薄く積もっていましてねぇ。

照明も取り外され、そこにいるだけで不安感が湧き出るような…そんな場所でしてね…。

慌てて夢見人はその部屋から飛び出して、再び出口に向かったんですわ。

ところがですぜ、あと数歩で出口ってところでまた目の前が歪んだかと思ったらですね、また薄暗い不気味な部屋に突っ立っていましてね?

混乱する夢見人に病院の人が声をかけてきたんでさぁ。

その人の話ですとね?この病院の備品は持ち出し禁止でしてね、備品を持っていると元の場所に無理やり戻されるってわけなんですよ。

まぁ、その人も少し首をかしげながら違和感を感じていたみたいでしてね?

まぁ、夢見人はその話を聞いてすぐに手に軽く握られた剃刀刃を何もない本棚の上において駆け出したんでさぁ、出口に向かってねぇ。

今度こそはという思いは見事に打ち砕かれましてね。

再び夢見人はあの部屋に突っ立っていたんでさぁ、手には置いたはずの剃刀刃を握ったままでねぇ…。

病院の人もずっとその部屋に居ましてね、夢見人の様子を見ていたみたいでしてね?

真っ青な顔で夢見人を見ているでさぁ。

ふと気づくとさっきまで居なかったはずの小父さんが無表情で薄暗い部屋の中をフラフラしていましてね。

その小父さんを見て、病院の人が夢見人が言ったんでさぁ。

「この小父さんは息子さんが事故で人を殺してしまって、その後息子さんも自殺してしまった。その時の手がかりが剃刀刃でそれに触れた人は別の人に剃刀刃を渡さなければここから出ることができない」とね。

どうも、剃刀刃の持ち主が変わったときだけ小父さんが出てくるらしいんでさぁ。

夢見人はその小父さんに掴みかかって文句を言いましたらね、小父さんはゆらりと体が揺れて溶けるように消えていったんでさぁ、無表情のままでねぇ。

夢見人はさて、どううにかしてここから出なければと悩んでいましたらね、目が覚めたんですよ。


ところで旦那、黒縄地獄ってどういう罪を犯した罪人が落ちる地獄か知っていやすかい?

生前に殺生や盗み、嘘や邪見、阿片等の中毒患者、貪欲のために人を殺して飲食物を奪って飢え渇かせた者が落ちる地獄でさぁ。

今回お話した夢は所々当てはまるような部分はありましたかねぇ?

それとも夢見人が現でそういった罪を重ねていたんですかねぇ…。

旦那は大丈夫ですかい?地獄に落ちるような罪を知らず知らず重ねてやいませんかい?

旦那が罪だと思っていなくても、他人から見れば悪行なのかも知れませんぜ?

おっと、旦那ぁ。

体が透けてきましたぜ?そろそろ朝ですねぇ…。

今日も一日、罪を犯さないよう注意してくだせぇ、じゃないと地獄に落ちやすぜ、へっへっへ。

それでは、今日も一日がんばってくだせぇ、いってらっしゃいませ。




エロネタ部分は入れようかどうか迷いましたが…改ざんするのもなんか嫌でしたし…あえて入れました!でも実際自分だけ見張りさせられたら…orz

クヤシイノウ…クヤシイノウ…

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