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ガタリ ~朝霧と共に散りゆく夢幻~  作者: ReKu
『夢始め』
3/67

三品目『死走』

あ~、いやいやいや。

旦那ぁ、いいタイミングできやしたね。

いやね、旦那がちょくちょく来るもんだからさぁ、椅子だけじゃちょっと殺風景じゃあないですか?

真っ暗な闇のなかポツンと椅子だけあっても…ねぇ?

せっかくですから少しずつでいいから居心地よくしていこうと思いましてね。

足元をみてくださいよ。

どうです、現でもたまに見るでしょう?

商店街とかの道路とかの円形の石畳ですよ、まぁ、円ひとつ分しか用意しておりませんがね。

ん、なんですかい?

どうしてこんなものが用意できるのか、ですって?

そりゃぁ、あっしもここに長いこといますからねぇ、ちょっとくらいは…ねぇ、へっへっへ。

さて、今日はどんな夢の話をしやしょうかねぇ…。

こないだは黒髪美人がでてくる話でしたかねぇ、女性相手に鼻の下伸ばして仕事疎かにしなかったですかい?

旦那にはわからんでしょうけど、恋愛関係の夢っていうのは旨いんですわ。

恋は盲目っていうでしょう、昔からオイシイ汁を味わったもんでさぁ、へっへっへ。

あぁ、いけねぇいけねぇ。

世間話してたら旦那が目覚めるまでに話終わらないかもしれねぇですからね。

えぇ!?昔の話が気になるっていうんですかい?

旦那ぁ、人の過去を詮索するのはマナー違反ですぜ。

ささ、あっしの事なんて忘れて忘れて、そうだ、今日はこの夢にいたしやしょう。


その男は夢の中でね、薄暗い洞窟のなかにいたんですわ。

いや、洞窟というのは少し違いやすかねぇ、切り立った崖に掘られた横穴でしてね。

中は崩落を防ぐ為ですかね、梁が張ってあるんでさぁ。

どちらかというと防空壕といったほうが適切かもしれませんねぇ。

防空壕の中には男以外に二人の男がいましてね。

そうですねぇ、名前がないのでわかりづらいので…一郎、次郎と仮に呼びましょうかねぇ。

一郎と次郎は旧日本軍兵のような服装をしていましてねぇ、頭には手ぬぐいを巻いていたようなターバンとはちょっと違う…中東の民族が身につけているような布を巻いているんですさぁ。

え?それはクーフィーヤじゃないかって?

へっへっへっ、旦那は物知りですねぇ。

それなのかもしれないですねぇ、まぁそのクーフィーヤというやつにしておきましょう。

まぁ、そんな服装をしていたんですわ。

一郎と次郎の顔には緊張と疲労、あと恐怖が混じった切羽詰った顔をしてるんですねぇ。

そんな二人の目線は防空壕の外へと向けられていましてね。

外の光景ですかい?

外はですねぇ…それが砂漠なんですよ。

砂だけの光景ってわけではないんですよ、これもなんと説明していいんでしょうかねぇ。

米国にあるグランドキャニオンという峡谷がありますよねぇ、あそこと砂漠を足して割ったような光景なんですわ。

一郎と次郎の目線の更に先に開けた場所があってね、そこに古い手動の組み上げ式ポンプがあったんでさぁ。

男もそのポンプを見ているんですがね、特に理由も解らないんですが非常に重要なものということがわかるんですわ。

そのポンプからは水がでるのか、それとも資材としての石油とかなのだろうか?

そう、男は考えていたみたいなんですわ。

え?手動式ポンプで石油がでるものか、って?

旦那ぁ、夢の話ですぜ?

こりずにツッコンできやすねぇ、へっへっへ。

まぁポンプからでるのが水だとしても、砂漠では貴重にあるのは変わりないですからねぇ。

それでですね、沈黙を破って一郎が突然駆け出したんですわ。

防空壕から飛び出してポンプめがけてまっしぐらに走っていきましてね。

ポンプのある開けた場所へ差し掛かって少ししたらですね、突然一郎の頭から血が噴出したんですわ。

ドサリと砂地に一郎は倒れてピクリとも動かない。

男はそれを見て一郎が狙撃されたとわかったでさぁ。

防空壕から外の様子を伺ったんですわ。

どうもポンプのある開けた場所が見渡せる、低めの崖の上に狙撃手がいるらしくてねぇ。

男達には狙撃手をどうにかする手段もないのでどうしようもない。

防空壕にいれば安全なんですがね?

自分の命よりも優先して、なにがなんでもポンプにたどり着かなければならないみたいなんですわ。

兵士っていうのはこんな理不尽な命令であっても従わなきゃならんのですかねぇ。

あっしには理解できませんねぇ。

何もできずに外の様子を伺っていたらですね、次郎が立ち上がり駆け出したんですわ。

狙撃手が待ち伏せてるのがわかっているのにねぇ、死に向かって走っていくわけですわ。

ところが、次郎は一郎の亡骸を超えてポンプにドンドン近づいていく。

狙撃手が油断していて見過ごしたんでしょうかねぇ?

走る速度をさらにあげて次郎は遂に、ポンプへ手をかけた。

それと同時に次郎の頭を弾丸が貫いたんでしょうねぇ、血を撒き散らしながら次郎が倒れたんでさぁ。

狙撃手はわざとポンプに次郎の手をかけさせたんでしょうかねぇ?

希望を与えておいて、叩き落す。

もしそうだとしたら…ずいぶんと残酷な狙撃手ですねぇ、へっへっへ。

さて、残りは男一人になっちまいましたねぇ。

誰もポンプまで走る事を強制もしない、止めもしない。

なのに男はポンプまでたどり着かないといけないと思ってしまっているんですわ。

次は…自分が殺される順番、いやぁ、どちらかというと死ににいくために走らなければならない、ってね。

そこで男は目を覚ましたんでさぁ。

死ぬ順番が自分の番まで廻ってくるのを待ってるだけだなんてなんとも嫌な夢ですねぇ。

え?それに似た有名な夢の話を知っている?

電車の話で乗客が順番に殺されていくって?

ははぁ、たぶんあの夢でしょうかねぇ…だけども今日お話した夢とは少し違う気もしますがねぇ。

おっと、そろそろ夜明けが近くなってきたようですねぇ、旦那の体が透けてきてますわ。

今日も一日お勤めがんばってくだせぇ、あんまり自分を追い詰めたり根つめて仕事しちゃぁダメですぜ?

プライドを捨てて逃げる事も人生必要でさぁ。

では、いってらしゃい。良い一日を祈ってますぜ、旦那。




今回は他人から聞いた夢です。

使用許可ももらっています。

ですが…自分的に出来はいまいち…。

精進いたします。

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