008話 たまには作者に忠告しよう(その②非テンプレ作品を書いている作者さんへ)
この「小説家になろ◯」に投稿されるエッセイでは、よくこのサイトの現状における「テンプレ作品」について意見が出されたりしている。
そうした意見の中には「テンプレ作品」のせいで「非テンプレ作品」が陽の目を見ない弊害や、「テンプレ作品」でなければ書籍化は難しいなどと言った意見もある。
特にランキングにおいては「テンプレ作品」が主流である事から、それを否定的にとらえたり逆に容認するといった意見があったりする。
まぁ意見は十人十色、人それぞれだろう。
「非テンプレ作品」を書いている作者さんの中にはこうしたエッセイを読んで自分の執筆する方向性について迷ったり悩んだりしているかもしれない。
だが、ちょっと待ってほしい。
必ずしも「小説家になろ◯」の読者は「テンプレ作品」ばかり読んでいるわけでもなく、出版社も「テンプレ作品」ばかりを書籍化しているわけではないという事実があるのだ。
まず「テンプレ作品」とは何かという事になるが、私見で言わせてもらえば、この「小説家になろ◯」の場合はまずは「異世界ハーレムチート」だろう。
主人公の男性、女性が異世界に転生、またはトリップしたり、別人に憑依したりして、新たな人生を踏み出し、前世での知識を駆使したり、神様から大きな力を貰ったりして活躍して地位と名誉と財産を得たり、複数の異性にモテるという作品だ。
中には主人公がゲームの世界に取り込まれたというような作品も多い。
戦国武将に転生や憑依したという話も少なからずある。
他にも最近流行の「悪役令嬢もの」「婚約破棄もの」もある。
王子や名家の御曹司と婚約していた名家の令嬢が、いきなり婚約破棄され不当に貶められるが、汚名を晴らし最後は幸せになるという筋書きで、主人公の令嬢は元は日本で暮らしていたのにいつの間にやら悪役令嬢の出るゲームの世界にトリップしていた等という作品だ。
取り敢えずは主人公が以前の記憶をそのまま持ちながら別人となり別世界で活躍するというストーリーが「小説家になろ◯」では典型的な「テンプレ作品」だと思う。
では、その「テンプレ作品」はどれだけ書籍化されただろうか。
私も全ての作品を知っているわけではないし、書籍化されるとネット上の作品を取り下げるという場合もあるので調べ切れていない部分もあるが、最近の2014年1月から2015年10月までの22ヵ月間に書籍化された「小説家になろ◯」の「テンプレ作品」を数えると28の出版社から102作品が出版されていた。これにはシリーズ物の第2巻とか第3巻みたいな続きの巻数は含んでいない。
では書籍化された「非テンプレ作品」はどれだけあるかというと18社から31作品が出版されている。
「非テンプレ作品」とは「異世界ハーレムチート」や「悪役令嬢もの」以外の作品だ。
「テンプレ作品」に比べれば「非テンプレ作品」の書籍化された数は少ない。3割以下だ。
だが、この22ヵ月間で書籍化された「非テンプレ作品」の31作品という数は、「小説家になろ◯」において、「書籍化されるのはテンプレ作品だけ」とか「テンプレ作品を書かなければ書籍化デビューはできない」と判断するほどの数だろうか? とても私にはそうは思えない。
「テンプレ作品」に比べれば数は少ないとは言え、平均すれば月に1作品以上は「非テンプレ作品」が書籍化されているのだ。
逆に言えば何故、この31作品は「非テンプレ作品」なのに書籍化されたのだろうか?
理由は一つ。
面白いからだろう。
それ以外に理由があるだろうか。
逆に問おう。面白くない作品を出版社が書籍化しようとするだろうか?
出版社だって商売だ。売れなきゃ赤字だ。下手すれば会社が潰れる。
人気がある。面白いと思われる。売れると判断されるからこそ書籍化される。
「テンプレ作品」だろうと「非テンプレ作品」だろうとそれが真理だろう。
それに「小説家になろ◯」では出版社と共催で幾つかの小説のコンテストを行っているが、そこで賞をとるのが「テンプレ作品」ばかりではない事は、これまでの結果発表から見て明らかだ。
つまり「非テンプレ作品」でも受賞し書籍化されている事実がある。
面白いからこそ賞を受賞し書籍化されるのだろう。
日間ランキングなどでは確かに「テンプレ作品」が主流を占める。
「非テンプレ作品」はランキングでは少ない。
前述したように書籍化された「テンプレ作品」は「非テンプレ作品」の約3倍以上。これは「テンプレ作品」を好む読者が「小説家になろ◯」には多いという事を示しているのだから当然だろう。
しかし、ランキングに「非テンプレ作品」を全く見掛けないわけではない。数は少なくても「非テンプレ作品」を日間総合ランキングで見掛ける事はよくある。
現に、この文章を書く直前(10月某日)に日間総合ランキングの上位陣をチェックしたらベスト10圏内で2作品は「非テンプレ作品」だった。
それより更に少し前の10月17日には、「小説家になろ◯」にテンプレ作品が多いのは作者よりも読者が原因であるという内容のエッセイが日間総合ランキングで15位にまで浮上していた。
5ヵ月前には、やはりエッセイで現役の編集者が「小説家になろ◯」で受ける作品とそうでない作品を分析するという内容の作品が日間総合ランキングで11位になっていた事もある。
こうした例は内容が良ければエッセイでさえも日間総合ランキングで多くの「テンプレ作品」を抜かし上にいく事が可能だという好例だろう。
そして「テンプレ作品」ばかりが読まれているわけではないという実例だろう。
実に羨ましい。私何ぞの書く作品では遠い世界の出来事で、夢のまた夢だ(苦笑)
前述した書籍化された「非テンプレ作品」31作品のうちの幾つかの名前を以前に日間総合ランキングで見た覚えもある。
つまり、面白ければ「非テンプレ作品」でも日間総合ランキング入りする事は可能だという事だ。
読者に読まれているわけだ。
前述した書籍化された「非テンプレ作品」31作品も多くの読者に読まれている。アクセス数やブックマークの数を見ればそれは明らかだ。
そもそも「テンプレ作品」でさえもその全ての作品がランキング入りするわけではない。
中にはブックマークが一桁や二桁で評価ポイントを入れてもらえないという「テンプレ作品」だって多々ある。
ランキング入りする「テンプレ作品」とランキングに入らないどころかブックマーク一桁の「テンプレ作品」の違いはどこにあるのだろうか。
宣伝の仕方? 投稿の仕方? ポイントを入れてくれる友達の多さ?
そういう要素もあるだろうが、最後にものを言うのは作品の「面白さ」だと思う。
例え「テンプレ作品」であっても面白くなければランキングには入らない。
つまり「テンプレ作品」だからランキング入りするわけではない。
「面白い」からこそランキング入りするのだろう。
この文章を読んで下さる方の中には「面白さ」が「決め手」になるという事を認めたくない人もいるかもしれない。
特に作者さんでご自分の作品がランキング外の場合は認めたくないだろう。
何せ、私の主張を受け入れるという事は自分の作品が、多くの読者にとり「面白くない」という事を認める事になる。
そんな事は認めたくないだろう。受け入れたくないだろう。
自分の作品は多くの読者にとって「面白い筈だ」と思いたいだろう。
自分の作品がランキング外なのは他に原因があると思いたいだろう。
「小説家になろ◯」のシステムや、読者や他の作者や不正のせいにしたいだろう。
そうすれば自分の作品に問題があるのではなく他人のせいにできる。
そうすれば気持ち的には楽になれる。
その気持ちはわかる。
私の作品も人気が無くランキング外の作品だからだ。
だが、幾ら他に原因があると自分で思い込みを強くし他人に主張しても真実は変わらない。
「テンプレ作品」でもランキングに入らないブックマークしてもらえない人気の無い作品が多々ある事実。
「非テンプレ作品」、それもエッセイでさえも面白ければ日間総合ランキングで上の方にこれるという事実。
そして少なからぬ「非テンプレ作品」が書籍化されている事実。
この「小説家になろ◯」と提携している出版社の小説の賞で「非テンプレ作品」が受賞している作品がある事実。
それらが証明している。「面白さ」が「決め手」だと。
良い意味で今の読者は貪欲だ。自分の好みの作品、良作を欲してアクティブに行動する。
検索機能を駆使して自分好みの作品を見つけ出す。
「テンプレ作品」が主流ではあっても好みの「非テンプレ作品」を見つけ出し評価する読者は大勢いる。
だから前述したように「テンプレ作品」より少ないとは言え、ある程度の数の「非テンプレ作品」が読者に読まれポイントを入れられ書籍化されているのだろう。
ここで一つ忘れてはいけないのは、自分が「面白い」「良作だ」と思う作品が必ずしも他人にはそうではないという事だ。
「小説家になろ◯」のエッセイでは、よく良作が陽の目を見ないとか多くの作品の中に埋もれてしまっているという意見を目にする。
確かにそういう事はあるだろう。
だが、人の判断は十人十色なのだ。自分が面白い良作だと思っても他の読者が同じ判断を必ず下すというわけではない。
あなたの判断する「面白い」「良作」だという作品は、他の読者にとって「つまらない」作品という事もある。
例えば累計総合ランキングを見てほしい。第1位の作品はこの文章を書いている現在、ブックマーク数は約8万3千だ。しかし、「小説家になろう」の会員さんは約65万人いる。つまりブックマークしているのは約八分の一だ。累計総合ランキング一位の人気作品でさえ8人に1人しかブックマークしていない。大多数の会員さんはブックマークしていない。これが評価者数となるともっと数は減り約1万3千人となる。
面白いと判断するならブックマークをして評価ポイントも入れるだろう。
だが累計総合ランキング第一位の作品でさえ多くの会員さんはブックマークをする事も評価ポイントを入れる事もしていないのだ。
あなたが良作と判断する作品について、その作品があなた自身にとって良作である事は否定しないが、他の会員さんもその作品を同じように必ず良作だと判断するとは考えない方がいい。
そして自分が面白いと思う感性が「小説家になろ◯」の多くの読者さんの感性とズレているかもしれないという事にも留意するべきだ。
特に作者として活動している人は、自分が面白いものを書いていると思っても多くの読者さんがつまらないと判断している可能性も充分ありえる事を留意するべきだろう。
「テンプレ作品」だろうが「非テンプレ作品」だろうが「面白い」作品が評価される。
多くの読者や出版社の人が「面白い」と思った作品が書籍化される。
それが真理だろう。
もし、違うと言うのなら前述した「非テンプレ作品」31作は何故、書籍化されたのか?
そんなわけで、もし「非テンプレ作品」を書いている作者さんで「非テンプレ作品のランキング入りは無理」だとか「非テンプレ作品の書籍化は無理」なんていう考えに苛まれている人がいたならば、そんな考えは捨てて執筆を頑張ってほしい。
現に「非テンプレ作品」でも日間総合ランキングで上位に入ったり書籍化されたりしている作品も少なからずあるのだから。
冬コミ当選す!
これ10月に書いてました。
しかし、冬コミに当選したんで途中でお蔵入り。
だけど現在、冬コミの新刊の執筆に煮詰まり、気分転換にお蔵入りしてたこれを完成させる事に。
そして時間は過ぎてゆき…
ますます自分の首を絞める事に。
いや、まだ大丈夫。冬コミまでまだ時間はある。
そう自分に言い聞かせている今日この頃。